個人事業主の口座開設で気をつけたい3つのポイント

個人事業主として開業したときには経理上、個人のお金の出入りと事業としての入出金を分けることが必要になります。そこで役立つのが事業用の屋号が入った預金口座の開設です。個人事業主が口座開設をするときに注意したい3つのポイントをご紹介します。
1)屋号だけの口座開設は難しい?
はじめて確認しておきたいことは屋号付き口座は事業用であっても法人口座ではなく、事業主個人が開設した個人口座として扱われる点です。また、個人事業主が銀行口座を開設する際は、多くの銀行で「屋号」と「代表者名」の両方が必要になります。
もし、「個人名は伏せたい」などの理由で屋号だけの名義にしたい場合は、法務局での商号登記をするとよいでしょう。ただし、商号登記は費用の面だけでなく、手間も時間もかかるので屋号のみにする必要性をよく考えることをおすすめします。口座開設を希望する銀行がすでに決まっている場合は、商号登記をせずに屋号だけの口座を開設できるかを確認するとよいでしょう。
なお、ゆうちょ銀行の場合、総合口座は「屋号+代表者名」の屋号付き口座になりますが、「振替口座」に限り屋号だけの口座開設が可能なようです。「振替口座」は利子はつきませんが、入出金や振込による送金と受け取りができる口座のことをいいます。
2)個人事業主が口座開設する銀行の選び方
銀行を選ぶ一つの目安は借入の予定があるかという点です。地銀をはじめ、信金や信組などの金融機関は地元の中小企業をターゲットとしていることが多いため、都銀よりも個人事業主に対する融資も前向きな対応が期待できます。もし、口座の利用方法が主に現金や振込の入出金だけの場合は都銀やネットバンクも含めて検討するとよいでしょう。知名度の高い都銀は信頼性も高く、提携ATMも多いなどATMの利用しやすさなどが魅力です。一方、ネットバンクもコンビニエンスストアなどのATMを利用でき、また、ネット上での入金確認もしやすく、自宅や事務所で取引ができるなど高い利便性があります。
注意したいポイントは、すでに個人口座を持っている銀行で屋号付き口座を作ろうとすると断られる場合があるということです。銀行は複数の口座開設を避ける傾向があるので個人口座がある場合は屋号付き口座を開設できない、あるいは追加できるのは一口座のみなどの制限が生じることがあります。
3)屋号付き口座の開設に必要な書類は個人口座と違う?
個人事業主の屋号付き口座の開設手続きに必要な書類を確認しましょう。多くの銀行が個人の口座を開設するときに必要な本人確認の書類と印鑑(個人名)のほかに、開業届出書や屋号を確認できる書類の提出を求めています。屋号で実際に営業していることの確認は手続きの中でも重要なポイントです。たとえば、三菱東京UFJ銀行の場合は国税や地方税の領収書、あるいは公共料金の領収書や事務所の賃貸契約書などから1つを提出します。なお、開業届出書は税務署に提出した際の「控えの原本」が必要になり、コピーは受け付けないなど銀行によって細かい指示があるので注意が必要です。
また、実店舗をもつ銀行では屋号付き口座の手続きは窓口のみで、しかも、三菱東京UFJ銀行のように自宅または勤務先の最寄りの支店に限定しているところもあります。さらに、銀行ごとに書類提出の種類や提出のタイミングなどが異なることも多いため、口座開設を希望している銀行でよく確認することが重要です。
まとめ
個人事業主の口座の場合は開設の条件も、開設に必要な書類等も個人口座とは異なります。また、屋号だけの口座開設に対応している銀行も限られています。借入の予定や預金口座の利用目的に沿って銀行を選び、希望の銀行が求める提出書類をきちんとそろえて手続きがスムーズにできるようにしましょう。