個人事業主が知っておきたい相続の基本 ~遺言の作成編~

以前、「個人事業主が知っておきたい相続の基本」として相続の概要や、相続人の負担を減らすための対策をいくつかご紹介しました。
今回は、その中でも「遺言(ゆいごん)」について解説いたします。
◇遺言(ゆいごん、いごん)とは
遺言とは、自分の亡き後に自分の残した財産について、誰に承継させるか、どのような割合で相続させるかなどを指定した法律文書のことです。満15歳以上かつ判断能力がしっかりしていれば、遺言は誰でも作成することができます。
◇遺言作成をするうえでの注意点
遺言を有効に作成するうえでは、 (1)民法という法律で定められた「要式」があること【要式行為】 (2)遺言で定めることができる内容についても法律で限定されていること【遺言事項】 の2点に注意が必要です。
(1) 「要式行為」について
「公正証書遺言」の場合は、法律のプロフェッショナルである「公証人」(公証役場というところが全国の市区町村に複数存在し、そこにいらっしゃいます)に作成してもらいますので、要式について問題になることはほとんどありません。
しかし、「自筆証書遺言」の場合は、自分一人で書く場合がほとんどですから、特に注意を要します。少しでも不安があれば、お近くの弁護士や行政書士に相談するとよいでしょう。
具体的には、 全文・日付・氏名を自署すること。 押印をすること。
が絶対的な要件であり、抵触すれば、無効となります。たとえば、「日付が抜けている」「押印が漏れている」「ワープロで作成している」と無効になります。なお、封印することは要件ではありませんので、封がしてなくても有効ですが、偽造や変造、汚損の恐れがあるため、できるだけ封印して大切に保管することをおすすめします。
(2) 「遺言事項」について
前述の通り、遺言に記載できる事項は法律で決まっています。そのためこれらの遺言事項以外については、法的な効力は生じないことになるため、注意が必要です。遺言事項については、下記リンク先(行政書士法人エベレスト)からご確認下さい。 「遺言」で書けることは少ない?!14個の遺言事項まとめ
有効な遺言書を書くためには、以上の2点をしっかりと抑えることが必要です。
◇自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて
遺言には作成方法の異なるいくつかの種類がありますが、一般的な
- 「自筆証書遺言」 (自分一人で、自署にて書く方法)
- 「公正証書遺言」 (公証人に内容を伝え、証人2名立会のもと、公証人に書いてもらう方法)
という2つの種類の遺言についてご紹介します。
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いについて、下記表にまとめました。専門家としては作成時に少し手間と費用のかかる「公正証書遺言」を推奨しますが、個人事業主の相続は本当に煩雑で相続人の負担が大きいため、作成しないよりは「自筆証書遺言」だけでも作成することを推奨します。
◇まとめ
個人事業主は法人で事業を運営する場合に比べて、全ての事業用資産が個人に帰属するために、相続手続がとても煩雑になります。そのため、残された家族や事業パートナー、さらには取引先が困らないように、できるかぎりの対策(法人化するというのも一つの対策です)をしておくことが社会的責任の一つといえるのではないでしょうか。
なお、多岐にわたる個人事業主の相続手続についてまとめて支援するサービスを提供しておりますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
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