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2019年03月08日(金)

病気や怪我で死亡したときにとるべき遺族給付の手続き

経営ハッカー編集部
病気や怪我で死亡したときにとるべき遺族給付の手続き

業務を原因とするけがや病気で家族が亡くなった場合、遺族には労災保険から給付が支払われます。家族が亡くなった悲しみに暮れる中、新たな生活を始めるための支えにもなる、遺族給付の支給手続きについて説明します。

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遺族給付の受け取り人の順位

給付金には、「遺族補償年金」と「遺族補償一時金」の2種類があります。遺族年金の受け取り人(受給資格者)は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、および兄弟姉妹です。そのうち、最も優先度が高い人を「受給権者」と呼びます。

「被災した労働者の生前、労働者の収入によって生計がまかなわれていた人」を対象としていますが、これは生活費の一部がまかなわれる「共働き」の場合でも当てはまります。

受給資格者の優先順位は以下の通りです。

  1.  妻または60歳以上か一定の障害の夫
  2. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子、または一定障害の子
  3. 60歳以上、もしくは一定障害の父母
  4. 18歳に達する以後の最初の3月31日までの間にある孫、または一定障害の孫
  5. 60歳以上、もしくは一定障害の祖父母
  6. 18歳に達する以後の最初の3月31日までの間にある兄弟姉妹、または60歳以上か一定障害の兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳未満の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

順位が同じ受給権者が複数いる場合は、等分した金額が支払われます。配偶者の場合、法的な結婚をしていない事実婚であっても、婚姻関係と同様の実態があった場合には受給が認められます。「受給権者」が死亡や再婚、もしくは18歳以上となり受給資格を失った場合は、次の順位の人に受給資格が与えられます。一定の障害とは、障害等級5級以上の障害を指します。

(出典:厚生労働省『遺族(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続』

遺族補償年金の受給権者が受給できる3つの遺族給付

遺族補償年金の受給権者は次の3つの給付金が受給できます。

  • 遺族補償年金
  • 遺族特別支給金
  • 遺族特別年金

※「遺族特別支給金」は、一時金として初年度のみ支給されます。

遺族(補償)年金と遺族特別年金の受取額を計算する根拠となる、「給付基礎日額」と「算定基礎日額」については、それぞれ以下の定義となっています。

<給付基礎日額>
死亡の原因となった仕事中や通勤中の事故(労災)が発生した日、もしくはうつ病など医師の診断によって疾病の発生が確定した日の直近3ヶ月間に支払われた給料の総額を暦日数で割った1日あたりの賃金額。

<算定基礎日額>
死亡の原因となった仕事中や通勤中の事故(労災)が発生した日、もしくはうつ病など医師の診断によって疾病の発生が確定した日以前の1年間に勤務先から受取った特別給与(ボーナス)などの総額を算定基礎日額とし、365で割った金額。つまり、給付基礎日額は基本給、算定基礎日額はボーナスをもとに支給されます。

遺族給付の受給資格者がいない、もしくは資格を失った場合

遺族補償一時金、遺族特別一時金は、以下の場合に支払われます。

  1. 労働者が死亡した当時、遺族補償年金の受給資格者がいない
  2. 遺族補償年金の受給権者が権利を失った場合、他に該当する年金の受給資格者がなく、かつ、すでに支払われた年金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合また、一時金は以下の順で支払われます。
  1. 配偶者
  2. 労働者が死亡した当時にその収入によって生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
  3. その他の子、父母、孫及び祖父母
  4. 兄弟姉妹

2と3については、子、父母、孫、祖父母の順で優先順位が高くなります。

(出典:厚生労働省『遺族(補償)一時金』

実際に遺族給付はいくら受け取れる?

では、実際にどれくらいの給付が受け取れるのか、例を挙げて見ていきましょう。

(例) 年収600万円 (内訳)月収30万円 ボーナス240万円
受給資格者(遺族数)3人  妻1人 子2人(18歳未満)

<遺族(補償)年金>
90万円(直近3ヶ月の給料)÷ 90日(暦日数) = 1万円(給付基礎日額)
1万円(給付基礎日額) × 223日分(受給資格者3人) = 223万円

<遺族特別年金>
240万円(ボーナス) × 365日 = 約6575円(算定基礎日額)
6575円(算定基礎日額) × 223日分(受給資格者3人) = 146万6301円

<遺族特別支給金>
300万円(一時金)
この場合、初年度は300万円の一時金が入るので生前の年収よりも高くなりますが、次年度からは半分近く減ってしまいます。
なお、初年度のみ一時金という形で、給付日額の1000日分を限度とし、1000日分、800日分、600日分、400日分、200日分のいずれかを選んでまとめて支給を受けられます。

(出典:厚生労働省『遺族(補償)給付の請求手続』 )

遺族給付の支給手続き

遺族給付の支給手続きは以下の通りです。

  1. 様式第12号「遺族補償年金支給請求書・遺族特別支給金支給申請書・遺族特別年金支給申請書」に必要事項を記入
  2. 「1」の申請書を所轄の労働基準監督署に提出する。必要に応じて以下の書類を添付する

<添付書類>

  • 死亡労働者の死亡診断書、死体検案書または検視調書の写し。その他、市町村長が証明する死亡届書記載事項証明書やこれらに代わる書類
  • 受給権者及び受給資格者と死亡労働者との身分関係を証明できる戸籍謄本か抄本
  • 受給権者または受給資格者が死亡労働者と内縁関係にあった場合には、その事実を証明できる書類
  • 受給権者および受給資格者が死亡労働者の収入によって生計を維持していたことを証明できる書類
  • 受給権者及び受給資格者のうち、障害の状態にあるために遺族補償年金を受けることとなった者については、その者が労働者の死亡当時から引き続き、障害の状態にあることを証明する医師の診断書その他の資料
  • 受給資格者のうち、受給権者と生計を同じくする者については、その事実を証明できる書類
  • 受給権者が死亡労働者の妻で、障害の状態にある場合は、障害の状態にあることを証明する医師の診断書その他の資料

(出典:厚生労働省『遺族(補償)給付 葬祭料(葬祭給付)の請求手続』

遺族給付だけでない!葬祭給付も請求できる場合

なお、労災で亡くなった労働者のためにお葬式をした場合には、葬祭料も請求できます。
葬祭給付は、31万5,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額になります。支払い対象は葬祭を行った人(遺族)ですが、社葬であれば会社となります。亡くなった日から2年経過すると請求できなくなりますので、注意しましょう。

(出典:厚生労働省『給付の種類』

 

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