VCとは?
初めまして、M&ABASE株式会社の廣川航と申します。
M&ABASE株式会社は、XTech株式会社という会社の子会社でITに特化したM&Aの支援事業を手がけています。XTech株式会社は、元サイバーエージェントの役員だった西條晋一が設立したIT企業で、子会社にはエキサイトや株式型クラウドファンディングのイークラウド、食品のマーケットプレイスのクロスマート、VCなどを傘下に持っています。
この度、最近増えてきたベンチャーキャピタルに関する連載を持たせていただきました。ぜひ、私の連載にお付き合いいただけますと幸いです。
0.ベンチャーキャピタルとは?
昨今、国内でも起業したり、ベンチャー企業に転職したりする人が増えてきた気が私はしています。そのベンチャー企業を資金の側面で支えているのが、ベンチャーキャピタル(以下VC)という投資ファンドです。
1.資金調達の方法
資金調達は、右の「負債で調達する」のか、「純資産で調達する」かの2パターンがあります。「負債で調達する」とは、銀行などから借金をして資金を借りることです。もう一つの「純資産で調達する」とは、株式を発行して資本金を増やす形をとりますが、この発行した株式を取得するのがVCです。
たまに、転換社債(CB)で調達する会社もあります。これは、最初は負債で調達しますが、ある条件になると株式に転換できるというものです。
ただ、たいていの会社がVCから調達するときは株式で調達します。
2.投資ファンドの種類
一言で投資ファンドと言っても、3つの形態のファンドがあります。
PE(プライベート・エクイティ)
PEとは、企業の株式の過半数以上を取得し、再生させたり成長させたりする投資ファンドのことです。投資対象はファンドによって変わりますが、倒産してしまった企業もあれば、上場している企業を未上場化させることもありますし、事業継承に悩んでいる企業なども中にはあります。最近よく目にするものであれば、大企業が選択と集中を進めるために非中核事業を売却する会社で、例えば日立製作所の子会社であった日立工機や、楽天の子会社であったオーネットなどがPEに売却されています。
著名なPEの例として、KKRやBain Capital、The Carlyle Group、ユニゾン・キャピタル、アドバンテッジパートナーズ、インテグラルなどがあります。
HF(ヘッジファンド)
HFは、上場株や債券、金融派生商品などで、これらを長短的売買して利益を得る投資ファンドです。
投資対象はファンドによって変わってきますが、株式を買ったり空売りしたりするロング・ショートや、不良債権を買って回収することで利益をだすディストレス、世界中の様々な金融商品を売買するグローバルマクロ、株式を取得して経営陣に助言するアクティビストなど様々な戦略があります。
著名なHFの例として、Bridgewater AssociatesやCitadel、Point72、あすかアセットマネジメント、Oasis Managementなどがあります。
VC(ベンチャーキャピタル)
VCとは、未上場のベンチャー企業に投資するファンドのことです。PEの場合は企業の株式の過半数を取得することがほとんですが、VCの場合は企業の株式の数%から多くて33%までであり、過半数を取ることはあまり多くありません。
投資対象は、成長している未上場企業です。基本的に創業からそんなに時間が経っていないベンチャー企業が多いですが、創業から数十年たった企業にも投資することがあります。
PEの場合は一社に対して基本的に一社で買収することが大半ですが(もちろん例外はあります)、いくつかのVCが一緒に一社に投資することが大半です。
著名なVCの例として、ジャフコやGlobis Capital Partners、三菱UFJキャピタル、伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどがあります。M&ABASEの関連会社にもXTech VenturesというVCがあります。
ただ世界的にみていると、PEがVCを設立したり、ヘッジファンドがVCを設立する事例も増えてきています。例えば、Two SigmaというヘッジファンドがTwo Sigma Venturesを設立したり、KKRというPEがアジアでユニコーン企業に投資するVCを設立したり、境目が曖昧になってきてはいますが、基本的にベンチャー企業に投資するファンドのことをVC(ベンチャーキャピタルといいます。
3.ラウンドという考え方
ベンチャー企業は成長していくにあたって何度か資金調達を行うことがありますが、この資金調達の段階をラウンドといい、大きく4つラウンドがあります。
ラウンド名 | 評価額 | 調達額 | 概要 |
---|---|---|---|
シード | ~1.5億円 | 数千万円~ | 1回目の調達のこと。サービスが無いことも多々。売上はなく、利益も赤字の状態。 |
アーリー | 数億円 | 数千万円~ | 2回目の調達のこと。サービスがあって消費者のニーズにフィットし始めている状態。売上は少し立ち始めているが利益は赤字の状態。 |
ミドル(シリーズA/B/C) | 数十億円 | 数億円 | 3回目以降の調達のこと。消費者のニーズにフィットしていて、マーケティングをかけることで伸ばせる。 売上は立っているが利益は赤字の状態。ただ利益が出せることがわかりつつある状態。 |
レイター | 数十億円~数百億円 | 数十億円 | 上場直前の調達のこと。売上はたっており、利益は黒字のこと もあるが赤字の状態も多い。ただ利益が出せることはわかっている状態。 |
たまに、次のラウンドまでの一時的な資金調達としてプレ〇〇ということもあります。例えば、シリーズAまでのつなぎの調達をプレシリーズAという使い方をします。
4.VCの種類
昨今、様々なVCが立ち上がっていますが、VCにも金融系VCとCVCと独立系VCの3つの種類があります。
金融系VC
金融系VCとは、銀行・証券会社・資産運用会社の子会社で運営されているVCです。三菱UFJフィナンシャルグループの三菱UFJキャピタルやスパークス・グループの未来創生ファンドなどがこれにあたります。VCにもよりますが、独立系VCと比較して支援の内容は金融寄りになる印象があります。
CVC
CVCとは、事業会社の子会社で運営されているVCです。サイバーエージェントの子会社のサイバーエージェントキャピタルやSonyのSony innovation Fundなどがあります。外部資本が入っているVCと親会社だけの資金でやっているCVCがあり、業種もこれまではIT系に多かったものの、JR東日本やスバルなどの非IT企業が設立することも増えてきました。CVCから出資を受けると、親会社とのシナジーが見込むことができます。
独立系VC
独立系VCとは、どこの大企業にも所属していないVCのことです。VCにもよりますが、支援の内容が濃いVCが多いです。例えば、人材の採用の支援や資金調達の支援、戦略策定の支援、営業の支援などがあります。
以下は、主要なVCをファンドのサイズで金融系VCとCVCと独立系VCの種類別にまとめたものです。
国・大学 | 独立系 | 金融系 | CVC(IT) | CVC(非IT) | 外資系 | |
---|---|---|---|---|---|---|
301億円以上 |
クール・ジャパン機構 海外通信・放送・郵便事業支援機構 |
WiL JAFCO Globis Capital Partners |
未来創生ファンド JPインベストメント 日本郵政キャピタル SBIインベストメント |
Alliance Ventures |
Eight Roads DCM |
|
300億円以下 |
大阪大学ベンチャーキャピタル 東京大学協創プラットフォーム開発 京都大学イノベーションキャピタル |
Incubate fund Sunbridge Venture Partners Global Brain DNX |
安田企業投資 |
YJ Capital Docomo Ventures KDDI Open Innovation Fund DG daiwa ventures NTT investment Partners STRIVE |
Toyota Al Ventures 電通イノベーションパートナーズ Sony Innovation Fund Nikon CVC SUBARU CVC INTAGE Open Innovation Fund Panasonic Ventures 31 Ventures 三井化学 CVC |
|
100億円以下 | 東北大学ベンチャーパートナーズ |
IVP ANRI UTEC D4V Spiral Ventures BEENEXT B Dash Ventures 環境エネルギー投資 日本ベンチャーキャピタル みやこキャピタル |
三菱UFJキャピタル SMBCベンチャーキャピタル みずほキャピタル ニッセイキャピタル |
GMO Venture Partners LINE Ventures MIC コロプラネクスト Opt Ventures Rakuten Ventures CTC Innovation Partners キャナルベンチャーズ 富士通 CVC DEEPCORE |
伊藤忠テクノロジーベンチャーズ リアルテックファンド |
|
50億円以下 |
みらい創造機構 QBキャピタル KII |
アコード・ベンチャーズ Beyond Next Ventures Femto Partners Genesia Ventures アーキタイプベンチャーズ SX Capital PNB-INSPIRE Ethical Fund ハックベンチャーズ Drone Fund Now Coral Capital |
三井住友海上キャピタル DBJキャピタル 三生キャピタル 大和企業投資 西武しんきんキャピタル ごうぎんキャピタル ネオステラキャピタル ちばぎんキャピタル 静岡キャピタル セゾンベンチャーズ ソニーフィナンシャルベンチャーズ |
アイ・マーキュリーキャピタル Cyber Agent Capital gumi Ventures KLab Venture Partners ベンチャーユナイテッド NHN CAPITAL ソネット・メディア・ベンチャーズ XTech Ventures |
CQ Ventures テックアクセルベンチャーズ 資生堂ベンチャーパートナーズ Ad Hack Ventures オムロンベンチャーズ タイムズイノベーションキャピタル JR東日本スタートアップ JR西日本イノベーションズ キャピタルメディカベンチャーズ ABC ドリームベンチャーズ TBSイノベーションパートナーズ フジ・スタートアップ・ファンド 朝日メディアラボベンチャーズ 名古屋テレビベンチャーズ 三井金属 CVC ハウス食品グループ CVC そーせいCVC ウィルグループ CVC アシックスベンチャーズ 関電ベンチャーマネジメント ケアネットCVC 近鉄ベンチャーパートナーズ オー・エル・エム・ベンチャーズ |
Global Catalyst Partners Japan TransLink Capital Partners |
10億円以下 |
TLM F Ventures Primal Capital Skyland Ventures Inclusion Japan アプリコットベンチャーズ Full Commit Partners |
大分ベンチャーキャピタル かんしん未来ファンド 大阪信用金庫 CVC ナントCVCファンド |
NECネッツエスアイ CVC |
旺文社ベンチャーズ ファッションイノベーションファンド 穴吹興産 CVC リプロセル CVC 浜松ホトニクス CVC 東京電力フロンティアパートナーズ |
5.最後に
今回は、VC特集の前段として、VCについてご紹介させていただきましたが、比較的VCのお金の話が多かったかと思います。
ですが、VCは単にお金を出すだけではなく、経営者の理解者であり、様々な支援もしてくれます。ですが、それはVCによっても変わってきます。
そこで次回からは、実際に様々なVCについてご紹介していきたいと思います。