資金収支計算書についてわかりやすく解説 学校法人会計の基礎知識
学校法人も企業と同様、年度ごとに決算を行う必要があります。しかし学校法人と企業では適用する会計基準が異なるため、作成する決算書のカタチは大きく異なります。今回は、学校法人にとって重要な決算書のひとつである「資金収支計算書」について解説します。
1)学校法人の会計制度
学校法人は、毎会計年度終了後2か月以内に貸借対照表及び収支計算書を作成しなければならず、さらに、私立学校法の規定により財産目録を作成し、据え置く必要があります。
なお、学校法人の会計年度は、毎年3月末の1回となっています。
2)資金収支計算書って何?
1. 企業会計と対比してみる
学校法人が作成する収支計算書には、「損益を表すもの」と、「資金の動きを表すもの」との2つに大きく分けられます。
企業の決算書と対比すると、以下のようなイメージです。
損益を表すもの:(企業)「損益計算書」⇒(学校)「事業活動収支計算書」 資金の動きを表すもの:(企業)「キャッシュ・フロー計算書」⇒(学校)「資金収支計算書」及び「活動区分資金収支計算書」
当年度の学校の諸活動に対応する、すべての収入・支出の内容を明らかにするために作成されるのが、「資金収支計算書」です。
「活動区分資金収支計算書」は、平成27年度から適用される新基準によって追加されました。これは、収入・支出ごとに一覧表示されている「資金収支計算書」を、活動区分(教育活動・施設整備等活動・その他の活動)ごとに組み替えることにより、現金預金の流れをより分かりやすく把握・説明するために作成され、近年の設備投資の高度化・財務活動の多様化に対応すべく、今回の改正で取り入れられました。
企業のキャッシュ・フロー計算書にかなり近い形で表示されるため、一般の方でも読みやすいものとなるのではないでしょうか。
なお、新基準適用後においても、大学を設置していない法人(都道府県知事所轄法人)については、「活動区分資金収支計算書」を作成する必要はありません。大学が無い法人は比較的小規模であり、資金収支計算書のみでも分析が容易であることから、実務処理負担の軽減が図られています。
2.内訳表がある
学校法人の計算書類は、意外とボリュームがあります。それは、本表のみでなく、それぞれの内訳表の作成が求められているからです。「資金収支計算書」には、以下の内訳表があります。
「資金収支内訳表」 「人件費支出内訳表」
法人としてはひとつであっても、大学や高校・中学、小学校や幼稚園・保育園など複数の学校を設置しているケースが多くあります。中には、いくつもの大学を設置している大規模な法人もあります。その場合には、資金収支計算書を分解して内訳表を作成し、学校別の収支状況を表示します。企業が開示する「セグメント情報」に近いものがありますね。
また、学校法人の経費の中でも重要な部分を占める人件費については、教員・職員の別や本務・兼務の別など内容別に細分化して表示します。
3)まとめ
学校法人会計において、最も重要な決算書といわれている「資金収支計算書」。企業会計と対比しながら簡単にご説明させていただきました。
最後に、企業会計との一番の大きな違いは、その位置づけ。企業では貸借対照表⇒損益計算書⇒キャッシュ・フロー計算書の順番に開示しますが、学校法人では資金収支計算書⇒事業活動収支計算書⇒貸借対照表の準に並べることになっています。
経営基盤の安定のため、資金を重視する学校法人基準の基本姿勢が表れているのではないでしょうか?