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2016年06月24日(金)

NPO法人全体の2%に満たない、「認定NPO法人制度」とは?

経営ハッカー編集部
NPO法人全体の2%に満たない、「認定NPO法人制度」とは?

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認定NPO法人制度は、NPO法人への寄付を促すことによりNPO法人の活動を支援するために税制上の優遇措置として設けられた制度です。寄付をした個人又は法人には、所得税及び住民税、または法人税が一定額戻ってくるため、認定NPO法人になると寄付を集めやすくなります。また、認定を取得することにはそれ以外にも多くのメリットがあり、次のステージに進みたいNPO法人にとって注目すべき制度と言えます。

(参考リンク)認定特定非営利活動法人制度(認定NPO法人制度)の概要 (内閣府)

今回は認定NPO法人制度について詳しく解説します。

1)NPO法人が認定を取得することのメリットとデメリット

NPO法人が認定を取得するには、以下のメリットがあります。

①寄付者(個人及び法人)に税制優遇があることにより、寄付が増える可能性が高まる

認定NPO法人制度の目的は、「NPO法人への寄付を促すことにより、NPO法人の活動を支援すること」にあります。認定NPO法人になれば、そこに寄付した個人又は法人は税制上の優遇措置が受けられるので、認定ではないNPO法人よりも寄付を集めやすい状況になります。

ただし、寄付を集めるにも一筋縄にはいきませんので、あくまで寄付が増える「可能性が高まる」ということは意識しておく必要があります。なお、仮認定(特例認定)NPO法人に寄付した方もこの優遇措置が受けられます。

②認定基準をクリアしようとすることで、社内体制が整備される。また、法人内部の意識が高まる

上場準備をしている株式会社と同じで、上場基準を満たそうとすることで社内体制が整備され、社内のメンバー全員が一丸となって頑張ろうと法人内部の意識も高まります。 NPO法人にも同じ効果が見込まれ、認定を取得しようと決めることで、認定基準を満たすために今までほとんど参加していなかったメンバーが積極的に手伝ってくれたりします。

③対外的な評価が上がる

認定基準をクリアするのはかなり大変です。様々な書類をそろえなければならないこともそうですが、当然その書類に記載した内容に実態が伴っていなければなりません。認定基準の詳細は以下でご説明しますが、認定基準をクリアした、ということで対外的な評価は上がります。

また、NPO法人は、平成28年4月末現在で認証が50,902法人、認定は950法人となっており、NPO法人全体に占める認定NPO法人の割合は2%に満たない状況です。この数字を見ていただければお分かりのとおり、「認定NPO法人」というだけで、一目置かれる存在になります。

(参考リンク)特定非営利活動法人の認定数の推移 (内閣府)

さらに、認定を取得すると情報公開する書類が増えます。情報公開する書類が増えると聞くと、「作業量が増えるのではないか」とデメリットに感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、情報公開はその団体の透明性を高めますので、対外的な評価が上がるという意味で私は大きなメリットだと思っています。

④法人の存在意義を改めて考えるきっかけになる

認定基準を理事長1人でクリアするのは非常に難しいので、いざ認定を取得しようと思ったら法人全体として取り組む必要があります。 その際に、 「なぜ自分達の団体は認定を取るのか」 「認定取得は目的達成のために必要か、回り道になってないか」 「寄付で集めたお金で何がしたいのか」 等々を話し合うことになり、法人の向かうべき方向を全体で改めて議論する良いきっかけになります。

⑤その他の税制優遇

個人又は法人による寄付によって税額が一定額戻ってくる以外にも、相続人が認定NPO法人に寄付をすることで、寄付をした財産は相続税の計算に含めないことができます。また、認定NPO法人自身にも優遇措置があり、収益事業から特定非営利活動に係る事業のために支出した金額は収益事業からの寄付金とみなして法人税の計算をすることができます。

つまり、寄付金とみなされた金額には税金がかからず、特定非営利活動のために使うことができるのです。

一方で、認定の取得には以下のデメリットもあると言われることがあります。

  1. 認定取得後の情報公開書類が増えるため、事務負担が増加する
  2. 認定を維持していくことが大変(毎年認定基準をクリアしているかチェックをしておく必要がある)
  3. 寄付者について、セキュリティ面も考慮しての管理作業が増加する(管理表、領収書発行作業等)

確かに事務負担は増加しますが、私はこれらはデメリットではないと思っています。①は前述したとおり、むしろメリットになります。②も社内体制が整備され、それが維持されると考えるとメリットでしかありません。③は当然の話ですよね。これらをデメリットと感じるのであれば、そもそも認定取得そのものを考え直す必要があるかもしれません。

2)認定を取得するために各NPO法人の代表がすべきこと

NPO法人の代表は、認定取得によるメリットや事務負担の増加を十分に認識し理解した上で、社内に共有し、認定取得するかどうかについて検討します。(全社的に取り組まないと以下8つの基準は乗り越えられません)

そして、認定取得すると決めたら、以下8つの基準をクリアするために準備を進めることになります。

(1)パブリックサポートテスト(通称PST)に関する基準

広く市民からの支援を受けているかどうかを判断するための基準であり、以下のいずれか一つを満たせばクリアとなります。

  1. 相対値基準:経常収入金額のうち寄付金等収入金額の割合が20%以上であること
  2. 絶対値基準:年3,000円以上の寄付者の数が年平均100人以上であること
  3. (注)絶対値基準でカウントできる寄付者は、氏名、住所が明らかな寄付者で役員及び役員と生計を一にする三親等以内の親族は除きます。
  4. 条例個別指定基準:都道府県又は市区町村から条例による個別指定を受けていること

なお、仮認定(特例認定)の取得に際しては、このPSTは求められません。仮認定(特例認定)の期間中にPSTをクリアできるように認定取得に向けて寄付を集める必要があります。

(2)活動の対象に関する基準(共益性の判定)

自らの会員、役員など特定の者だけが便益を得られる活動を共益的活動と言います。この共益的活動の割合を、事業費等を使用して算出することで公益性を判定するための基準です。共益的活動の割合が50%未満であることが求められます。

(3)運営組織及び経理に関する基準

特定の法人や親族グループによってNPO法人の運営が支配されていないかどうか、NPO法人の根幹であるディスクロージャーについて十分になされているかを判定するための基準です。

(4)事業活動に関する基準

事業活動が適正に行われているかどうかを確認するための基準です。具体的には、以下の活動について確認が行われます。

  1. 宗教活動を行っていないこと
  2. 政治活動を行っていないこと
  3. 特定の政党の支持活動を行っていないこと
  4. 役員等に特別の利益を与えていないこと
  5. 特定非営利活動に係る事業に事業費を充てているかどうか
(5)情報公開に関する基準

認定(仮認定(特例認定))NPO法人にはさらに寄付が集まること等を考慮すると、より透明性の高い情報公開が求められるため、閲覧書類の範囲を広げています。

(6)事業報告書等の提出に関する基準

同様に、より透明性の高い情報公開が求められるため、提出書類の提出状況を確認しています。

(7)不正行為等に関する基準

公益に資することが求められるNPO法人において、不正行為等により公益に反する事実がないかどうか確認します。実務的に一番多いと思われるのが、「税法で求められていることを知らずに、結果として法令違反を犯していた」です。見落としがないか、専門家に確認しておく必要があります。

(8)設立後の経過期間に関する基準

実績判定期間を満たすように、設立後2事業年度を経過しているかを確認します。実績判定期間とは、初回の認定申請及び仮認定の申請は直前の2事業年度、認定の更新は直前の5事業年度のことを言います。

3)認定(仮認定(特例認定))を受けるためのフロー

一般的なフローは以下の通りです。

①所轄庁に提出するための以下の書類を作成
  1. 認定(特例認定)を受けるための申請書
  2. 寄付者名簿
  3. 認定基準等に適合する旨を説明する書類
  4. 欠格事由に該当しない旨を説明する書類
  5. 寄付金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類
②上記書類を持って事前に所轄庁に相談

間違いがあると書類が差し戻されてしまい認定されるまでの期間が延びてしまうので、事前に相談してチェックを受けてから提出することをお勧めします。

③申請
④審査(法人事務所への実地調査があり、ここで、記載内容の確認や帳簿のチェックも行われる)
⑤認定(不認定)の通知

4)認定を受けている&受けていないことの差や対外評価の差

対外的な評価が上がることは、前述した通りです。現在、NPO法人の数は約50,000法人にも上るため、その中で対外的な評価はこれまで以上に重視されてきます。現在認定を取得しているNPO法人は全体の2%に満たないため、認定を取得しているか否かは対外的な評価の重要な指標となります。

これからは、認定NPO法人になるかどうかで、その団体の今後の活動の成否を左右すると言っても過言ではないかもしれません。

5)まとめ

認定NPO法人には税制上の優遇措置が設けられています。そのため、 「個人又は法人が寄付をする」 「相続人が相続財産を寄付する」 「認定NPO法人自身が収益事業で稼いだお金を特定非営利活動に回す」 といったことを行うと、本来は所得税、住民税、法人税、相続税などの税金として支払うはずだったお金を、自分が応援したいNPO法人や、自団体の特定非営利活動に投入することができるのです。つまり、税金の使い道を自分で決めることができるのです。

活動に参加したくても、忙しくてなかなか行動できない支援者の方はたくさんいらっしゃいます。その方々が「寄付」という形で支援しやすくするために、認定NPO法人を目指すことを検討されてみてはいかがでしょうか。

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