経理事務でもう迷わない!所得税の源泉徴収の計算方法とは
「源泉徴収」という言葉はよく知っていても、実はそれがどういうことなのかわからない、でも今さら聞けないという方もいるのではないでしょうか。
今回は、所得税の源泉徴収についてまとめてみました。
源泉徴収ってそもそもなに?
「源泉徴収」とは、給与から所得税を差し引いて会社が代わりに納税することで、「源泉所得税」とは会社が従業員に代わって納付する税金のことです。
法人でも個人でも、給与を支払っている事業者なら源泉徴収は法律で定められている義務です。
所得税がかかるのは、基本給、残業代、手当などの所得に対してで、一定金額までの通勤手当や旅費は非課税扱いです。
会社にとっては手間がかかりますが、納税者と税務署の負担を減らす効果があります。
もし源泉徴収制度がなかったら、確定申告の時期になると税務署に人が殺到して大混乱になってしまうでしょう。
平成31年度の税制改正によって、住宅ローン控除などについての源泉所得税に関するルールがいくつか変更されています。
“平成 31 年度の税制改正により、源泉所得税関係について主に次のような改正が行われましたのでお知らせいたします。”
<引用元>国税庁:源泉所得税の改正のあらまし
従業員10人未満なら納期の特例を適用できる
従業員数が10人未満の会社であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署へ提出し特例の適用を申請します。
税務署から認可を受けることができれば、従業員の所得税納付は半年に1回とすることが可能になります。
所得税の納付期限は、1月から6月の所得税が7月10日、7月から12月の所得税が1月20日と決められています。
特例を適用するためには従業員が常に9人以下であることが条件なので、適用期間中に従業員が10人を超えると、特例の適用条件から外れることになります。
この場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出しなければなりません。
特例の対象となるのは、給与や退職金、弁護士や税理士報酬などで、特例対象外の所得については通常通り毎月納付しなければなりません。
この特例があることで毎月の事務処理の負担が軽減され、納付回数が減ることで納付忘れのリスクも軽減されます。
従業員10人未満なら半年に一度の納税も可能
従業員が10人未満の場合、税務署に申告して「納期の特例」を適用すれば、所得税の納付を半年に1回とすることが可能になります。
納期の特例を申告する際は、「所得税の納期の特例商人に関する申告書」を税務署に提出します。
源泉徴収しなくてはいけない範囲とは
基本給や残業代、手当のすべてに所得税が課税されますが、旅費と通勤手当は一定額まで非課税です。
<参考>国税庁:国内源泉所得の範囲(平成29年分以降
<参考>国税庁:通勤手当の非課税限度額の引上げについて
残業代の計算をして給与を確定する
法定労働時間として定められている1日8時間、1週間で40時間以上の労働させた場合や、法定休日の1週1日もしくは4週4日に労働させた場合、会社は従業員に割増賃金を支払う必要があります。
残業代の割増率と適用される時間
時間外労働(1.25倍):1日8時間、1週40時間を超える労働
深夜労働(1.25倍):22時〜5時までの労働
時間外かつ深夜労働(1.5倍)1日8時間1週40時間を超える労働と、22時〜5時までの労働
法定休日労働(1.35倍):法定休日の労働
法定休日かつ深夜労働(1.66)法定休日における深夜労働
所得税の計算方法
毎月の所得税額は、社会保険料を控除した給与の額と扶養親族の人数に応じて決められます。
給与や賞与の所得税額については、「給与所得の源泉徴収税額表」「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照して計算されます。
給与所得の源泉徴収税額表の「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」のところで、「給与額−(社会保険料)」で算出した金額が該当する部分を探します。
該当する金額の甲欄と乙欄の中から該当する部分を見つけ、クロスしている部分の金額がその月の所得税額ということになります。
“この源泉徴収税額表は、平成31年(2019年)分の給与等について、所得税と復興特別所得税を併せて源泉徴収する際に使用するものです。”
<引用元>国税庁:平成31年(2019年)分 源泉徴収税額表
甲・乙・丙の違いとは
源泉徴収税額表で見かける「甲」「乙」「丙」の意味は以下のとおりです。
甲:「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合に適用される
乙:「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない場合に適用される(2箇所から給与を支給されており、別の会社で給与所得者の扶養控除等申告書を提出ている場合に適用)
丙:日額表のみに記載されている欄で、日雇賃金を受給しており、2ヶ月以上連続雇用されていない従業員に適用される
報酬や料金の所得税
給与や賞与ではなく、報酬や料金として支払われた金額については次のような税率がかかります。
支払額100万円以下:支払額×10.21%
支払額100万円超:(支払額−100万円)×20.42%+102,100円
報酬・料金であっても、司法書士や外交員などは上記の計算方法とは異なります。
“所得税法の第204条1~8では、源泉徴収が必要な報酬の範囲を定めています。以下は、個人に対しての報酬・料金において、源泉徴収が必要なものです。”
<引用元>経営ハッカー:源泉徴収が必要な報酬や料金には、どのようなものがあるのか?
まとめ
源泉徴収制度があることで、納税者の事務的な負担が大幅に軽減されます。
会社にとっては負担がかかる制度ですが、従業員数が少ない会社であれば特例を適用して負担を軽減できるなど、全体的に考えるとバランスが良い制度ともいえるでしょう。