年末調整|配偶者特別控除申告書の専業主婦厳選6パターン
配偶者が専業主婦である場合の配偶者特別控除申告書の徹底解説
毎年11月頃から、サラリーマンの皆様に配布される年末調整の緑の紙。保険料は証明書類通りに記載すれば問題ありませんが、扶養しているパートナーの所得に関しては、いまいち把握していない人が多いのではないでしょうか?
「黙ってオレに守られていればいいんだよ」という旦那さんをお持ちの専業主婦の方から「あなたの収入には頼らないわ!」という方まで、ありとあらゆる専業主婦のケースを想定しました。「本当にこれで大丈夫?」「計算方法は間違っていない?」これを読めば、あなたの疑問はすべて解消されます!
[目次] ■1)意外と知らない!配偶者特別控除申告書という専用用紙はありません。 ■2)奥様がパートをしている場合 ■3)奥様が自宅でピアノ教室を開いている場合 ■4)奥様が趣味でハンドメイド雑貨を販売している場合 ■5)奥様が株で配当金を得ている場合 ■6)奥様が不動産経営をしている場合 ■7)奥様が競馬で万馬券を当てた場合
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■1)意外と知らない!配偶者特別控除申告書という専用用紙はありません。
配偶者特別控除申告書とは、パートナーの所得を申告するためのものです。パートナーが専業主婦、専業主夫、パートであったとしても、あなたが単身赴任をしていても、「婚姻関係にある配偶者」に収入があれば、記載する必要があります。配偶者特別控除とは、扶養しているパートナーがいれば、税金を安くできるという制度なのです。
それほど重要な申告書であるにも関わらず、専用用紙はありません。配偶者特別控除申告書は、給与所得者の保険料控除申告書と兼用用紙になっているのです。記入するスペースは全体の1/4程度ですが、いざ書くとなると戸惑ってしまったことが、一度はあるのではないでしょうか。
また、給与所得者である本人の合計所得金額が1,000万円(給与所得のみの場合は12,315,790円)を超える場合は、配偶者特別控除の適用外となります。
次の場合には、配偶者特別控除を受けることができません。
・配偶者控除の対象となる場合 この申告書では、収入のある配偶者のみに適用されます。完全に収入がゼロの配偶者は、給与所得者の扶養控除等申告書にて基礎控除の38万円が控除されることになっています。
・青色申告事業専従者として給与支払いを受ける場合 白色事業専従者に該当する場合は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれないと、所得税法で定められているため、申告することができません。
・夫婦が双方にお互いに配偶者特別控除を受けることはできません。 夫婦のパートナーどちらかが申告対象となります。
■2)奥様がパートをしている場合
1.パート収入のみであれば、【給与所得】欄に収入金額を記入します。
2.給与収入に対しては、必要経費が65万円と定められていますので、収入金額から65万円を差し引いた金額を、給与所得の所得金額欄に記入します。マイナスの場合は0を記入します。
3.ここで問題になるのが、「103万円の壁」と「141万円の壁」と呼ばれているものです。収入金額が103万円であれば、年間103万円もパート収入があったにもかかわらず、まったく無職の専業主婦の方と同じ控除額38万円となります。また、141万円を超えてしまうと、配偶者特別控除が適用されず、扶養から外れることになります。
4.奥様と別居中であっても、婚姻関係を継続しているのであれば、配偶者特別控除は適用されます。離婚を前提に別居しているのであれば、本年度中の配偶者特別控除を適用してから離婚されることをオススメします。
■3)奥様が自宅でピアノ教室を開いている場合
1.ピアノ教室のみならず、税理士事務所やデザイン事務所といった個人事業主としても収入があれば、【事業所得】欄に収入金額を記入します。
2.事業収入を得るためにかかった経費(売上原価、減価償却費)を必要経費等に記入します。
3.収入金額から経費を差し引いた金額を、事業所得の所得金額に記入します。
4.青色事業専従者としての給与は必要経費に含めることができないので、注意が必要です。
■4)奥様が趣味でハンドメイド雑貨を販売している場合
1.ネットショップやオークションなどで雑貨や古本を販売した収入は、【雑所得】として取り扱います。
2.国民年金、厚生年金、共済年金などの公的年金も、雑所得として算入します。
3.ネットショップ運営に関するサーバ代、ドメイン取得にかかった経費、販売費としての送料や、ネットショップのみならず実店舗にて販売した際にかかった経費などは、すべてまとめて必要経費等に入力します。
4.収入金額から必要経費を差し引いた額を、雑所得の所得金額に記入します。
■5)奥様が株で配当金を得ている場合
1.奥様に株や出資金による配当金収入がある場合、【配当所得】欄に受け取った配当金全額を記入します。「源泉徴収ありの特定口座」にしている場合には、記入する必要はありません。
2.配当収入は利子所得となるため控除することなく、原則として配当収入=配当所得金額となります。
3.例外として、株式等の取得に生じた負債の利子については、控除できることとされています。
■6)奥様が不動産経営をしている場合
1.奥様の名義で登記されている土地や建物から賃貸借料としての収入があるなど、収益物件を所有している場合、【不動産所得】として申告することになります。
2.登記にかかった費用や、不動産取得税などの租税公課は、必要経費等に算入します。
3.総収入金額から必要経費を差し引いた額を、不動産所得の所得合計金額に記入します。
4.借地権や地役権設定によって生じた権利金は、不動産所得ではなく譲渡所得になるため、申告書内の【1~6以外の所得】欄に記入します。
■7)奥様が競馬で万馬券を当てた場合
1.奥様が競馬で高額な払戻金を受け取った場合、申告書の【1~6以外の所得】欄にその金額を記入します。競馬、競輪の払戻金の一時所得だけでなく、譲渡所得や山林所得、利子所得もこの欄に合計して入力することになります。
2.必要経費として、譲渡所得の場合は、譲渡するのにかかった費用のみが認めらると所得税法で定められており、修繕費や固定資産税などの維持にかかった必要は計上できないので、合算しないようにしましょう。また、競馬や競輪の外れ馬券も経費に算入してもよいと、2014年5月に大阪高裁の控訴審判決が出ています。まだ税法改正や通達が出ているわけではないのですが、この判例の場合は、被告が継続的な営利目的をもって払戻金を受け取っているため、一時所得ではなく雑所得として扱っている前提があります。
・反復と継続を伴う馬券購入:雑所得 ・1度の馬券購入:一時所得
となります。一時所得にかかった必要経費は、当たり馬券しか認められていないと理解しておきましょう。
■まとめ|専業主婦でも、扶養を外れてしまうことは、十分考えられます。
さて、『配偶者が専業主婦である場合の配偶者特別控除申告書の徹底解説』はいかがでしたか?専業主婦とはいえ、趣味が高じて事業に拡大してしまった場合、もはや扶養親族ではなく、個人事業主になってしまうこともあるのです。
平成26年11月現在、配偶者特別控除の廃止に向けた税制改正が進行中となっています。扶養内か扶養外かの二択になるわけですが、段階的に廃止されているであろうというのが大方の見解となっています。これからは、消極的な守りで固めるのではなく、積極的な防御という戦いかたが必要となってくるのかもしれません。