経営者1年目に読む税務と会計|税務の考え方と会計の考え方の違いを学ぶ
税務と会計は決定的に違うもの
個人事業主にしろ事業承継にしろ経営者になると、まず理解しておかなければならないのは会社のお金のことです。会計はそのお金のことを理解するのにもってこいなのですが、同時にこれを理解するのはかなり難しくもあります。ここではそんな経営初心者、会計初心者の人のために、まずは税務と会計の違いを理解するための解説をしていきたいと思います。
[目次] ■1)税務を知ろう 益金 ■2)税務を知ろう 損金 ■3)税務の強みと弱み/会計の強みと弱み ■法人税を攻略するために
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■1)税務を知ろう 益金
税務は基本的に【正確に課税するため】に用いる会計方法です。会計では財務諸表に組み込まれる数字が税務では省かれたり、その逆があったりしますが、それも正確性を重んじた結果です。ここではそのうち利益に関するものを解説しておきます。
それは【益金】です。会計では【収益】と呼ばれます。会計においては収益とは損益計算書にある勘定科目のうち売上科目、すなわち売上高や営業外収益、特別利益が含まれます。これに対して益金は課税対象となるものだけを意味します。法人税法第22条第2項にその内容が具体的に書かれています。
1)資産の販売で生ずる収益 2)有償による資産の譲渡で生ずる収益 3)有償による役務の提供で生ずる収益 4)無償による資産の譲渡で生ずる収益 5)無償による役務の提供で生ずる収益 6)無償による資産の譲受で生ずる収益
1)は商品や製品の売り上げ、2)は株式や土地建物などの在庫以外の資産売却でのもの、3)はサービスによる売り上げで、タダで資産を手に入れた時の経済利益が6)です。ここまでは容易に理解できると思います。
問題は4)と5)でしょう。これは税務にしかない概念で、無償による資産の譲渡、役務の提供をする時に、一度その資産・役務を有償で売却し、その代金を譲渡したと考えるのです。こうすることで、実際に売却し代金を渡した場合との違いをはっきりさせられます。例えば役員に無償で土地を譲渡した場合と、同じ金額を賞与として支給した場合を考えると、前者には所得税がかかり、後者は無税となります。この違いをはっきりさせることによって正確に課税をするのが目的なのです。
■2)税務を知ろう 損金
後編では会計で言う【費用】について解説します。税務ではこれを【損金】と言います。会計では費用として一括りにして計上できる項目も、税務では損金として計上できないものがあります。 法人税法第22条第3項では損金とは「別段の定め」を除いては以下のように定められています。
1)当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 2)当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 3)当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
1)は会計で言う仕入高、2)は販売費および一般管理費、3)は特別損失を指します。3)の「資本等取引」とは増資や減資や利益の配当による費用のことですが、これは企業の経営活動による取引である損益取引に含まれないので費用としては除外されます。
また税務においては損金として計上できる費用は、【期末までに費用に対する債務が成立している】【期末までに債務を理由とした給付の原因になる事実が存在する】【期末までに合理的な金額を算出できる】という3つの条件をみたすものだけであることも理解しておきましょう(減価償却費は除く)。
損金と費用に関してはそれほど大きな違いはありません。しかし交際費など使い道があやふやになりがちな費用に関しては脱税の温床になりかねないので、損金として計上は出来ません。
■3)税務の強みと弱み/会計の強みと弱み
では税務と会計にはどのような特徴があるのでしょうか。税務は【正確に課税するため】の会計だと言いました。それは会計では組み込む数字を組み込まないと言うところからきています。
例えば会計でいう「特別利益」は税務では計上されません。対して損金と費用の内容はそれほど大差ないので、全体として収益が減少します。すると法人税が減少、節税につながるのです。税務の強みは【収益額を低減し、節税できる】と言う点です。しかしこれは同時に【財務諸表を一見した時の数字が小さい】という結果にもつながります。これは株式を公開している場合、株主の心象を悪くしかねません。もし投資をしてもらいたいのであれば税務を選択するべきではないのです。
対して会計は見た目の数字が税務よりも大きいので【投資家の注目を集めやすい】のが強みです。しかしその分収益額は膨らんでいるので【法人税は高くなる】のが弱みです。
■法人税を攻略するために
法人税は日本の税収の10.4%を構成する重要な税金です。言うまでもなくそれを支払っているのは企業です。国にとってはいかに正確に法人税を課税するかが重要ですが、企業側からしてみれば法人税について理解を深め、できるだけ節税することができればそれに越したことはありません。そんな法人税の攻略の第一歩が税務への理解なのです。