公的年金等の源泉徴収についてわかりやすく解説
公的年金等の源泉徴収の仕組みについて
「所得あるところに課税有り」が所得税の原則ですので、公的年金等にも所得税は課税されます。年金に課税される所得税には、給与所得とは違った計算の基準が設けられています。今回は公的年金等の源泉所得税を説明したいと思います。
1)公的年金等とは
本文中に出てくる「公的年金」とは、どんな種類の年金を指すのでしょうか。以下の5つが公的年金にあてはまります。
<li>国民年金の老齢基礎年金</li>
<li>厚生年金の老齢基礎年金</li>
<li>共済組合の老齢共済年金</li>
<li>企業年金</li>
<li>普通恩給</li>
2)年金の扶養親族について
年金受給者も扶養家族を申請する必要があります。年金受給者が扶養家族を申請する場合は「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出します。
様式は通常の扶養控除の申請に用いる「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書」とほとんど同じものですが、多くは最初の年金請求時に記入する「年金請求書」に含まれています。
マイナンバー制度の利用が開始される2016年以降は、書類の様式等が大きく変わっていくと言われております。
3)年金(所得)から控除されるもの
年金も収入(雑所得)ですので、各種控除があります。
1. 社会保険料
国民保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料ですが、厚生労働省で把握している分に関しては自動的に計算されます。記入されている金額のほかに、支出した社会保険料は確定申告で精算します。
2. 公的年金控除
これは給与所得者の「給与所得控除」に当たります。65歳未満で年金額が130万以下の方は70万円の控除、65歳以上で年金の受給額が330万以下の方は120万円の控除がそれぞれあり、どちらも受給額が基準より多い場合は金額に応じて計算式があります。詳しくは国税庁ホームページを参照してください。
3. 基礎控除
基礎控除は、年金受給者であっても適用の対象です。給与所得者は年末調整で生命保険料や損害保険料も控除されますが、年金には年末調整が有りませんので、それらの控除は確定申告で行います。
4)年金から差し引かれる所得税額
年金から差し引かれる所得税額は、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出しているか否かで分かれます。
提出した方
支給された年金から各種の控除を行い、残りの額に5%を掛けた金額が所得税額です。これに復興特別所得税0.105%を加えた金額が年金から差し引かれる所得税(及び復興特別所得税)になります。
提出していない方
年金以外に給与等の所得があり、そちらで扶養控除申告書を出しているために年金の扶養親族等申告書を提出されていないときは年金の支給額から公的年金等控除額を差し引いた額の10%と復興特別所得税0.21%を加えた金額となり、確定申告によって精算します。
5)公的年金等の源泉徴収票に出てくる言葉
公的年金等の源泉徴収票にはわかりにくい言葉が出てきます。具体的には「区分 」という欄の「法203条の3 第1号適用分」などです。ずいぶん仰々しいですが、内容がわかれば難しいことは言っていないことがわかると思うので、簡単に説明させていただきます。
- 「法203条の3 第1号適用分」=「公的年金等の受給者の扶養親族等申請書」を提出した人。
- 「法203条の3 第2号適用分」=「公的年金等の受給者の扶養親族等申請書」を提出した人のうち、65歳以上の人で、老齢基礎年金の受給者。
- 「法203条の3 第3号適用分」=第1号の申告書の提出を要しない人。
扶養親族申告書は1か所にしか出せないので、第1号と第2号は扶養親族申告書を提出した先から受給した年金を受け取っていて、年金の種類・年齢によって区分を分けています。第3号は提出先以外から年金を受給している場合の区分と考えると分かりやすいと思います。
6)年金受給者の確定申告について
65歳未満の方は108万円、65歳以上の方は158万円を超えた場合は所得税が源泉徴収されます。
年金のほかに所得がある方は確定申告をして所得税を精算することになりますが、今は「確定申告不要制度」があり、受給額の合計が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下の方は確定申告をする必要がなくなりました。しかし、還付金が発生する方は確定申告をした方が良いと思います。
まとめ
年金所得も給与所得も基本的な考え方に違いは有りません。年金を貰いながら働いている場合は、源泉徴収がわかりにくくなりますので、控除額の違いを覚えておくと良いでしょう。