労働保険料の計算方法をわかりやすく解説
1)労働保険料とは
労働保険料は労災保険料と雇用保険料とで成り立っており、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)とは別のものです。 まず、労災保険について説明していきます。労働保険料のうち、労災保険料は会社が全額負担しており、仕事中や通勤途中にケガをしたときの治療費や休業補償、死亡保障などに使われます。 次に雇用保険料の説明です。雇用保険料は、会社だけでなく従業員も一部負担しています。雇用保険料は、労働者が退職した場合、次の仕事が見つかるまでの失業保険や、教育訓練給付、助成金の原資などに使われます。
2)労働保険料はどのように計算されるか
労働保険料は、会社が従業員に払った給与の総額から計算されます。毎月の給与だけではなく、賞与も保険料計算の対象となります。従業員に支払った給与の税引前・社会保険料控除前の総支給額(いわゆる額面)を合計した金額を毎月集計し、年度ごとに最終的に合計し額を算出します。労働保険料の計算期間は、毎年4月から翌年の3月までと決まっていて、この期間は「保険年度」と言われています。この期間に支払われた給与が保険料を計算するときの基準になります。
3)賃金集計の際の注意点
従業員に払った賃金が労働保険料の計算の基準になるということはわかったと思いますが、いくつか注意点があります。 まず、税金の計算では非課税扱いになることもある交通費ですが、労働保険料の計算では「給与」に含むので、合計額に算入するようにしましょう。また、労働保険は労働者のための保険なので、役員の報酬は保険料の計算の対象にはなりません。また、監査役など経営者サイドの人に払われる報酬も保険料の計算からは除外します。 雇用保険の計算には特例があります。4月1日段階で満64歳以上の従業員は、従業員・会社共に雇用保険料がは支払わないことになっています。労働保険料を計算するときも全従業員の賃金集計から64歳以上の従業員の賃金集計額を控除し、雇用保険料計算の基礎にしましょう。
4)具体的な計算方法
全従業員の年間支払総額を計算し、現在の業種にあった労災保険料率を乗じて労災保険の保険料を算出します。 建設業のような比較的危険度が高い仕事は保険料率が高めに設定されており、一方事務職などのような危険度が低い仕事の場合は保険料率も低めに設定されています。 同じように雇用保険料に関しても、全従業員給与の合計額から高齢者分を控除して雇用保険料率を乗じて算出します。
まとめ
労働保険料は、労災保険と雇用保険の合算となっており、それぞれの金額は年度ごとに計算され、あらかじめ当該年度に保険料を前払いします。翌年の保険料計算の際に再度賃金の集計をして、労働保険料の過不足を計算することになっています(これを「年度更新」といいます)。