雇用保険の対象はどこまで?知っておきたい適用範囲
「雇用保険」は失業中の労働者の生活を扶助する目的で作られた保険です。そのため「失業保険」と呼ばれることも多いのですが、労働者であれば全員が雇用保険に入るのでしょうか。年金を貰いながら働いている人などはどうでしょう。今回は雇用保険の目的に沿って適用範囲を考えていきます。
1)雇用保険の適用事業所とは?
雇用保険は、職を失った人が失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探せるようにするために給付される、失業給付が大きな目的といわれています。
ハローワークで求職相談をしたり、職業紹介を受けるなどの求職活動をしている失業者であれば、生活費の扶助を目的とした基本手当を受けることが出来ます。
そのため、労働者を一人でも雇用する事業は、農林水産業の一部を除き、すべて雇用保険の適用事業になります。雇用保険の適用事業所は労働保険料の納付、雇用保険法の規定による各種の届け出が義務付けられます。
2)適用事業所になる為の手続きには何がある?
雇用保険の適用対象となる労働者を雇い入れた時は、事業所を管轄するハローワークに事業所設置届を提出します。
こうして雇用保険の適用事業所となると、事業所番号が事業所に割り当てられます。この事業所番号は雇用保険の手続きや保険料の納付、労災保険の申請など、様々な書類に記入が求められますので、きちんと分かるようにしておきましょう。
それと同時に雇用保険被保険者資格取得届を提出して、労働者を雇用保険に入れる手続きをします。その後、新たに労働者を雇い入れるたびに雇用保険被保険者資格取得届を出します。
3)従業員は全員雇用保険に入れるの?
通常の労働者は全員雇用保険の適用対象者となります。しかし、パートやアルバイトなど、1週間の労働時間が20時間未満の人は雇用保険に入れません。週に3日働いて、1日の労働時間が6時間でしたら、週の労働時間は18時間ですので、雇用保険の対象者(雇用保険の被保険者と言います。)にならないことになります。
毎日の勤務時間が変則的な人も週の勤務時間を合計して20時間を超えているかどうかで、雇用保険の加入ができるのか判断してください。
4)年金を貰いながら働いている人は適用範囲なのか
65歳になったら年金の受給資格ができます。(現在は経過処置が取られていて、男性が昭和16年4月2日から昭和36年4月1日生まれの人、女性が昭和21年4月2日から昭和41年4月1日生まれの人については、報酬比例部分・定額部分について受け取れる年齢が60歳から64歳になります。)
しかし今は定年や継続雇用の年齢を引き上げる方向で世の中が進んでいますので、年金を貰いながら働いている人もかなりいらっしゃるようです。
同じ会社で働いていて65歳に達した人はそのまま雇用保険の被保険者ですが、65歳に達してから新たに雇用される人は雇用保険の適用から外れます。これは高齢者雇用継続給付や失業給付の制度、年金との兼ね合いからそのようになっています。
一つ注意していただきたいのは、同じ会社で働き続けている人が64歳に達した次の年度から雇用保険料の負担は無くなりますが、その会社を辞めるまでは雇用保険の被保険者で有り続けることです。64歳になったら雇用保険料の負担が無くなることと、被保険者でなくなることの違いを念頭に入れておいて下さい。
5)会社の代表者や役員は雇用保険に入れません。
通常、会社の代表者や役員は雇われる立場ではありませんので、雇用保険の対象外です。
ただし、出向などで親会社との雇用関係が続いたまま子会社の代表取締役になっている場合は、親会社との雇用関係において被保険者となる場合があります。役員も同様で、従業員としての身分であって、給料の支払い状況も労働者性も高い場合は雇用保険の被保険者となります。
まとめ
従業員を一人でも雇うと雇用保険の適用事業所となります。労働保険には雇用保険と労災保険があります。雇用保険は今まで述べてきたように適用除外の人もいますが、労災保険はすべての労働者が該当します。
短時間のアルバイトだけを雇って事業を賄っていても、労災保険は事業主の義務ですので、届け出を忘れないようにしてください。