フリーランスの人が知っておきたい源泉徴収額の注意点
「源泉徴収」とは、主にフリーランス・個人事業・従業員の方へ報酬を払う際に一部を所得税として会社が天引きし、受取者の代わりに国へ納付するものです。この制度を義務付けることにより、国としては早く確実に税金を徴収することが可能になります。
フリーランスの方は、報酬を受け取る際に徴収されるケースと報酬を支払う際に徴収するケースが考えられます。両者に分けて、計算方法や注意点を見ていきましょう。なお、どんな報酬が対象となるのか、もしくは詳しい計算方法は以下の記事に詳しく記載されています。
〈参考〉個人事業主の源泉徴収をおさらい!対象から計算方法まで丁寧に解説
1)源泉徴収時の具体的計算例
源泉徴収額の計算は請求する側が行います。計算を反映した請求書を持ってお客様にお支払頂くことになります。計算式は以下のようになっています。
(報酬額 - 控除額) × 源泉徴収税率
控除額は通常ゼロですが、司法書士は1件あたり1万円、外交員は月に12万円など、個別に設定されているものもあります。源泉徴収税率は、100万円までは10.21%、100万円を超えた部分は20.42%です。
幾つか計算例を見てみましょう。
例1.請求書記載がデザイン料52万円・交通費2万円(消費税込)だった
この場合の報酬額は54万円、控除額はゼロ、税率は10.21%ですから、
(54万円 - 0円) × 10.21% = 55,134
よって55,134円が源泉徴収額です。交通費という名目ですが、実質はデザイン料と合わせて報酬とみなしますので、全額が源泉徴収対象となります。
例2.請求書記載がデザイン料+交通費で54万円(報酬50万円+消費税4万円)だった
この場合は報酬額は50万円、控除額はゼロ、税率は10.21%ですから、
(50万円 - 0円) × 10.21% = 51,050
よって51,050円が源泉徴収額です。総額は例1と同じ54万円ですが、源泉徴収額が違うことにお気づきかと思います。これは、消費税の扱いの差です。例1のように総額表示であれば税込全額が、消費税を分けて記載すれば税抜金額が源泉徴収対象となります。
例3.請求書記載が司法書士報酬150万円(別途交通費2万円は交通機関へ直接支払済)だった
この場合の報酬額は150万円、控除額は1万円、税率は10.21%と20.42%ですから、
(150万円 - 100万円 - 1万円) × 20.42% = 100,058 (100万円 - 0万円) × 10.21% = 102,100 100,058 + 102,100 = 202,158
よって202,158円が源泉徴収額です。ここでは3つの要素があります。一つ目は100万円を基準に税率が変わることです。上記のように2つに分けて考えます。二つ目は司法書士報酬は1件につき1万円を控除できることです。三つ目は交通費です。例1と2では交通費も源泉徴収対象でした。交通費は報酬の支払者が交通機関へ直接払った場合は、源泉徴収の対象となりません。
2)源泉徴収から納付まで
源泉徴収から納付までを、徴収する側とされる側に分けて見てみましょう。
源泉徴収される側
フリーランスとして仕事をした後、源泉徴収額を計算した請求書を発行し、金銭を受け取れば、所得税を納付したものとみなされます。報酬支払者が税金を滞納してもこちらにペナルティや納税義務はありません。
報酬支払者から「支払調書」を受け取り、記載された源泉徴収額が正しいか確認します。確定申告の際、一年間で源泉徴収された合計額を確定申告書の「源泉徴収税額」に記載して税額から差し引いた残りを納付します。源泉徴収税額が納付すべき金額より多ければ還付されます。
源泉徴収する側
源泉徴収額が記載された請求書を受け取ったら、源泉徴収後の金額を支払います。徴収した所得税は、翌月10日までに税務署に納付します。税務署への申請により、税理士等の一部の報酬は納付の特例(半年ごと納付)が適用可能です。
納付を怠ると2つのペナルティを受けることになります。まずは不納付加算税です。納付額の10%、誤りに気付いて自主的に納付した場合は5%が課されます。不納付加算税が5千円未満の場合や遅延が1か月以内で直前1年間遅延がない場合は免除されます。また、金利分として延滞税が課されます。
このペナルティは納付しても損金や必要経費にできません。
3)源泉徴収時の注意点
源泉徴収時は以下の点に注意をしましょう。
・対象となる報酬か
デザインもWEBデザイン等グレーとされているものや、5万円以下の懸賞金は対象外な ど、源泉徴収の可否を確認しましょう。
・消費税や支給交通費の扱い
先述のとおりです。
・税額が正しいか
控除額や税率を今一度確認しましょう。
・納付忘れ(徴収する側)
ペナルティがありますので注意です。
まとめ
ややこしい制度ですが、早く確実に税収を確保するという意図は合理的です。目先の入金が減ってキャッシュフローに影響しますが、確定申告で精算されますので、長い目で見れば損得はありません。罰則を受けないためにも、正しい計算と手続きを心がけましょう。