厚生年金保険料の金額、どのように決定されるの?社労士がわかりやすく解説
法人を設立した場合、例え代表者一人でも社会保険は強制適用になり、社会保険の新規手続きを行わなければいけません。ただ、社会保険の1つである厚生年金保険の金額は、給与計算ソフト等で自動的に算出されることが多い所得税の源泉徴収や雇用保険料と違い、給与額に単純に厚生年金保険料率(平成27年9月~平成28年8月迄、17.828%(会社と個人、折半負担))を掛ければ算出されるわけではありません。
厚生年金保険料の金額は、標準報酬月額に基づいて算出されます。この標準報酬月額の決定方法は大きく、「資格取得時決定」「随時改定」「定時決定」の3つに分かれますが、それぞれ詳しく解説して行きます。標準報酬とは、被保険者が事業主から受ける報酬額をいくつかの幅(等級)に区分した仮の報酬月額(標準報酬月額区分表)に当てはめられて、決定されます。
目次 1)社会保険に初めて加入するときの決定「資格取得時決定」 2)毎年決まった時期に行われる「定時決定」 3)昇給や降給により報酬が大幅に変動した時「随時改定」 4)厚生年金保険料の確認方法
1)社会保険に初めて加入するときの決定「資格取得時決定」
入社した時の標準報酬月額の決定方法です。下記の方法で報酬月額を算定します。
- 給与額が月によって定められている時・・会社に入った時に決められた初任給などの額に手当(通勤手当や時間外手当の見込み額も含めます)を加えた額です。最初の月が日割計算であっても月額で決定します。
- 給与額が週によって定められている時・・週給を7で割って30倍した額となります。
- 日、時間等によって定められる場合・・資格取得の日の前に1か月間その事業所で同種同様な仕事をして賃金を受けた人の賃金を平均したものを月額とします。
この「資格取得時決定」によって、1月~5月に決定された標準報酬月額はその年の8月まで、6月~12月に決定された標準報酬月額は翌年8月まで、適用されます。(随時改定等が行われる時を除く)
2)毎年決まった時期に行われる「定時決定」
定時決定とは、既に決められている標準報酬月額と実際に被保険者に支給される報酬が大きくかけ離れないように、毎年1回、報酬月額を届け出ることを言います。その届出を「算定基礎届」といいます。(算定基礎届は毎年7月1日~10日に年金事務所に提出します) 算定基礎届に記入する報酬額は4月、5月、6月の各月に実際支払われた報酬が対象になります。 その平均額を元に報酬月額を算定し標準報酬月額を決定します。決定された標準報酬月額は9月~翌年8月まで使用されます。(途中で随時改定等が行われるときを除く) ※よく言われる4月、5月、6月に残業すると保険料が高くなる・・というのは上記の理由によります。ただし、現在は申立てにより年平均で標準報酬月額を決定することもできます。
3)昇給や降給により報酬が大幅に変動した時「随時改定」
昇給や降給によって、固定的賃金に変動があり引き続く3カ月間の報酬平均額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差が生じたときには「随時改定」といい、標準報酬月額が変更になります。(月額変更届の提出が必要になります) ただし、残業代等非固定的賃金の変動のみでは随時改定は行われません。 新しい標準報酬月額は、改定が1月~6月の場合にはその年の8月迄、7月~12月の場合は翌年の8月まで適用になります。 ※よくあるのが昇給や役員報酬の変更のときかと思います。
4)厚生年金保険料の金額の確認方法
1)2)3)より、標準報酬月額がわかれば、厚生年金保険料の金額は年金機構のページから簡単にわかります。例えば、標準報酬月額が150,000円の人の厚生年金保険料は26,904円となります。 また、厚生年金保険は、会社が半分負担してくれるので実際に従業員が支払うのは折半額です。
5)まとめ
上記以外の時でも産前産後・育児休業終了時に改定が行われる時があります。また、健康保険の標準報酬月額についても上記と同じ方法で決定されます。よく勘違いしがちなことですが、社会保険料を給与から控除するのは翌月となります。例えば、9月に改定が行われた時は10月分の給与より控除となります。 いかがでしたでしょうか?多少複雑に思われるかも知れませんが、上記の標準報酬月額決定の仕組みを理解して給与計算に役立てていきましょう!