健康保険の種類とその大まかな違いについて解説
皆さんは、何らかの健康保険に加入して、その健康保険証をお持ちだと思います。保険料を払い、病院で治療をうけたら、医療費の3割を支払い、残りの7割は健康保険が負担するという仕組みは、どの健康保険でも原則同じなのですが、加入している健康保険による違いはあります。
これから、大きく3つに分けて(会社で加入する健康保険、国民健康保険、その他)について説明していきたいと思います。
会社で加入する健康保険
会社で加入する健康保険には、「全国健康保険協会(いわゆる「協会けんぽ」 主に中小企業)」と「健康保険組合(主に大企業)」があります。ここでは、協会けんぽを中心に説明していきます。
①加入要件
原則、勤務時間と日数が基準となり、常勤または常勤者のおおむね3/4以上の日数・時間の勤務であれば、加入する必要があります。このとき、同時に厚生年金にも加入する必要があります。また、加入する本人(被保険者)に扶養する家族がいれば、収入等の要件をクリアすることで、その家族も被扶養者として加入することになりますが、保険料は被保険者分のみになります。つまり、同じ給料であれば、独身者も家族のいる者も保険料は同じです。
②保険料負担
保険料は、通勤手当を含めた総支給額により決まります。保険料率は、健康保険組合により、また、協会けんぽにおいても各都道府県により異なりますが、具体的には総支給額を等級表に当てはめて、その等級に該当する保険料を、本人と会社で折半負担します。そして、本人負担分は、毎月の給料から天引きすることになります。
③保険給付
保険給付の種類は様々ですが、代表的なものは、病院に行って治療を受けた時の医療費の7割部分(療養の給付)や、医療費が著しく高くなった時の高額療養費、出産育児一時金などがあります。また、所得補償的な意味合いとして、傷病手当金や出産手当金もあります。
なお、業務が原因のケガや病気については、労災保険の対象になるため、健康保険は業務災害以外を対象としています。
④その他
その他として、次のような特徴があります。
・健康保険組合の中には、協会けんぽには無い(法定外の)給付を定めている場合がある ・2ヵ月以上加入していた者が退職した場合、20日以内に申し出れば、「任意継続被保険者」に2年間なることができます。この時の保険料は会社負担は無く、全額本人負担となる(上限あり)
国民健康保険
先ほど説明しました健康保険に加入していない方は、原則、この国民健康保険に加入することになります。国民健康保険は、市町村が行っている場合と、同種の事業による国民健康保険組合(理美容、弁護士、税理士等)があります。
①「被扶養者」がいない
国民健康保険が、先述の健康保険と大きく違うところは、「被扶養者」という概念がないこと、つまり、同じ所得であれば、独身者と家族がいる者では、保険料に差がつくことです。
②保険料負担
国民健康保険の保険料は、所得で決定されますが、市町村によっては、減免・猶予を実施しているところもあります。保険料は自ら支払うことになりますが、年金受給者の場合は、年金から天引きされるのが一般的です。
③保険給付
代表的な給付は、先述の健康保険とほぼ同じですが、大きく違うのは、所得補償的な意味合いを持つ「傷病手当金」「出産手当金」の実施が任意となっている(つまり実施している市町村、国民健康保険組合は少ない)ことです。
その他の健康保険
①後期高齢者医療保険制度
75歳以上になれば、等しくこの制度に加入することになり、保険料を支払う先は市町村になります(年金から天引き)。大きな特徴として、病院に治療に行った時に支払うのは原則、医療費の3割ではなく、1割になることが挙げられます。
②船員保険
船員を対象とした保険で、健康保険に相当する給付があります。大きな特徴は、健康保険より給付が比較的手厚く、また、業務災害により労災保険による給付があった場合でも、それに上乗せして給付される点です。
まとめ
日本では、誰もが必ず何らかの健康保険に加入している「国民皆保険(こくみんかいほけん)」の仕組みになっています。健康保険に加入していない法人などは処罰の対象になることもありますので、要件を確認し、従業員を健康保険に加入させるようにしましょう。