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2016年04月18日(月)

「マイナンバー導入で年金未納はバレるのか?」 公認会計士がわかりやすく解説

経営ハッカー編集部
「マイナンバー導入で年金未納はバレるのか?」 公認会計士がわかりやすく解説

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マイナンバー制度で年金未納はバレるのか?

2016年からマイナンバー制度がついに始まりました。

マイナンバー制度、いわゆる「国民総背番号制」とは、すべての国民に個別の管理番号をつけ、それに基づいて社会保障や個人情報の管理など、行政の処理をすべて行うというものです。また法人には法人番号が与えられます。

<参考>今さら聞けないマイナンバー制度(番号制度)とは?重要ポイントまとめ

マイナンバー制度により、社会保険の届出用紙にマイナンバー(個人番号や法人番号)を記載して届け出ねばならなくなり、社会保障制度も変わっていくことが予想されます。

今回は、社会保障問題の中でも特に気になる、「マイナンバー制度で年金未納がバレるのか?」について解説します。

 

企業が年金未納をしてしまう、よくあるパターン

厚生年金を含めた社会保険の加入義務については、法人及び5人以上の従業員がいる個人事業主は、原則として社会保険に加入する義務があります(一部の例外を除く)。

しかし、本来加入しなければいけない法人が、「資金繰りが苦しい」等の理由で手続をせず、未加入になっている場合があります。

中には、加入はしており、社員から保険料を徴収しておきながら、納付をしていないという悪質なケースがあります。どちらも納めるべき保険料を納めていないため、バレた場合に過去の未納分を一度に請求されてしまいます。 ※ちなみに保険料の時効は2年なので、最大2年分の未納保険料を請求される可能性があります。

年金未納がバレる仕組み

そもそも、なぜ「マイナンバーが始まると年金の未納がバレる」と噂されているのでしょう?

年金情報を管理している日本年金機構は、まず自ら管理している社会保険の加入事業所のデータを法人番号で事業所ごとに紐づけします。次に、源泉所得税を管理している国税庁から、同じように法人番号に紐づいた所得税のデータを入手します。

そして、法人番号を基に、“所得税を納めているにもかかわらず、社会保険は未払いの事業所”を抽出し、当該事業所に個別に照会を行う……という手順により、年金未納が発覚します。

以前は入手する情報を一元管理できていなかったため、突き合わせ作業に多くの時間がかかっていたわけですが、マイナンバー制度により簡単に状況をつかめます。

これが「マイナンバーにより年金未納がバレる」噂の正体ですが、正確には、「バレやすくなる」という表現が正しいでしょう。

強制執行の対象は、2015年10月により厳格に見直された

このように、マイナンバー制度により年金未納は“バレやすく”なります。

とはいえ、そもそも社会保険の負担が大きいため、未納になっているわけですから、未納が判明して、時効前のものも含めて請求されたとしても、事業主に納める原資がなければ払うことはできません。

資産の差し押さえを強引に行うならば、企業の継続性が危うくなります。社会保険制度の確保のために、連鎖倒産が起きるようなことになれば、本末転倒です。

冷静に考えてみると、マイナンバー制度が始まったことにより、「年金未納はバレやすくなった」かもしれませんが、それがすぐに「強制執行される」ことになるかどうかは別問題です。

厚生労働省は、一定条件以上の滞納者にまず督促状を送付し、それでも指定期間内に未納ならば、強制徴収(すなわち資産の差し押さえ)を行う、という流れで未納解消に取り組んでいます。

ただ、強制徴収は、2015年10月に対象が見直され、「滞納額5,000万円以上で、未納期間が2年以上」と強化されました。(従来は「1億円以上」が対象)

「マイナンバー制度と年金未納について」-公認会計士の視点

逆に考えると、この要件を満たさない場合は、強制徴収される可能性は低くなるという解釈もできます。(相対的に)

もちろん、原則は納めるべきお金ですから、納めなくていいと言っているわけではなく、早めに未納は解消すべきです。

資金繰りに苦しむ事業者にとって、「マイナンバー制度で年金未納がバレるかどうか」は気になるでしょうが、現状では「バレる可能性は高くなるし、従来経験したことのなかった督促を受ける機会も増えることになる。ただ、強制執行される可能性は現状では相対的に低い」と考えます。 ※あくまで私見です。置かれている状況によって結論は異なりますので、個々の責任で判断をお願いします。

まとめ ~社会保険も税金も、お金の問題という意味では同じ~

社会保険は税金に比べると、納付の意識が低くなりがちです。しかし、もし保険料未納を指摘された場合は、お金の支払い問題であることに変わりはなく、問題の大きさでいえば税金滞納と同列です。

最終的には被害が社員に及んでしまうことを意識して、未納問題の当事者にならぬよう対応していただきたいと思います。

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