社会保険に加入していない会社ってあるの?【未加入の場合の影響とデメリット】
会社として起業した場合、そこで給料を受け取る人がいれば、社会保険の加入が義務付けられています。 社会保険の種類は、大きな括りで以下があります。
- 健康保険(+介護保険)
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
しかしながら、社会保険に加入していない会社があるのも現実です。起業して社会保険に加入していない場合、どのような影響があるのか、保険料が他の保険に比べて高い健康保険と厚生年金保険の未加入について説明します。
1)社会保険の加入義務
加入義務があるといっても、どのようなケースで加入するのか、また、保険料を見込む場合にどれくらいで考えておけばいいかということもあります。この部分について説明します。
①加入する要件
社会保険の加入が義務付けられる要件は、主に次のものがあります。
- 社長に会社から報酬が出ていること(金額を問わない)。
- フルタイム、またはそれに近い勤務の仕方で、給料を受け取る人がいること。
よく「社長は社会保険に加入できない・しなくていい」という話を聞くことがありますが、これは個人事業主の場合です。会社の社長であれば、報酬が出ていれば、常勤と非常勤を問わず、社会保険の加入義務が発生します(雇用保険は加入できません。労災保険は、一般の枠とは別の形での加入ができます)。
②社会保険料は高い?
健康保険と厚生年金の保険料は、大まかに言うと、「(通勤手当も含めた)給料の約28%を給料を受け取る人と会社とで折半負担」します。給料から約14%を天引きして、それに会社が同額を追加して、納める形になります。実際は、給料を保険料額表の等級に当てはめることで保険料が決まります。
法人が社会保険の加入を渋る理由のひとつが、法人も同額の負担をしなければならない点です。その人の人件費を考えた場合、額面の給料だけではなく、会社が負担する社会保険料も考慮しなければなりません。
2)社会保険に加入しないことのデメリット
法律上の義務とはいえ、保険制度なので、生命保険と同じように「備えあれば憂いなし」の側面はもちろんあります。
①メリット:受けられる保険給付
たとえば、プライベートで大怪我や病気をして、しばらく会社に出勤できなくなった場合、健康保険から「傷病手当金」といった所得補償的な給付を受けられる場合があります。同じように、自身が出産するために産休を取得した場合にも「出産手当金」が支給されます。また、自身の扶養に入っている家族が出産した場合にも一時金を受け取ることができます。 厚生年金でいえば、在職中に障害状態になった場合は障害年金、死亡した場合には遺族年金がありますし、一定の年齢になれば老齢年金を受け取ることもできます。また、社会保険料は全額経費になるので、納税の圧縮にもつながります。
②デメリット:仕事が回ってこない?
受注する仕事が、その会社の社会保険の加入・未加入で決まる場合もあります。たとえば、業種によっては、官公庁から仕事を受注する際、元請け会社から下請け会社まで、社会保険に加入していることが条件となるケースがあります。
また、派遣業のように官公庁からの免許・資格によって仕事をする会社の場合、社会保険の未加入状態が継続していると、最悪、その資格を取り消される場合もあります。官公庁に限定されず、取引先の選定で、社会保険に加入していることの証明を求める会社も、最近は増えているようです。「社会保険の加入=社会的信頼」と捉えられる風潮が徐々に広がっているようです。
3)社会保険に未加入のままだとどうなるのか?
最近のニュースでもありましたが、厚生労働省は社会保険の未加入に対する調査を年々、強化しています。これは、そこで勤める従業員の権利を確保するためです。ここでは、年金事務所(日本年金機構)による加入促進について、説明します。
①文書、訪問が繰り返される
年金事務所への来所を促す文書が届いたり、年金事務所(または年金事務所が委託している会社)からの会社訪問が数回、実施されます。そこで、加入義務があるかどうか、また、義務があれば加入するよう指導がありますが、ここで加入に至らなければ、最終的には、「立入検査」が実施されます。
②強制的に加入させられる
立入検査は、もちろん予告はありますが、法律上拒否はできません。数人の担当者が会社に赴き、その会社の帳票書類等で改めて社会保険の加入義務があることを確認した上で、社会保険の加入手続きをします。
この際、その事実が確認できた日に遡っての加入になります(最大2年前まで)。つまり、最大で過去2年間の保険料の納付義務が一瞬にして発生する訳です。そして、極めて悪質なケースと判断されると、法律上の罰則(6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金)の適用もあります。
4)まとめ
社会保険未加入かどうかをどうやって把握しているのかとの疑問も出てきますが、これは、官公庁の横断であったり、(これが一番悲しいことですが)従業員が年金事務所等に相談することで判明したりします。従業員ご自身の将来の年金等の保険給付を考えた上での行動です。
一番悲しいと思うのは、従業員に告発されることではなく、「従業員のことを大事にしていない会社」であるということです。税金は納めた分の恩恵は間接的に受けることが多いですが、社会保険は納めた分が直接、自分に跳ね返ってきます。社会保険の加入は、社会的信頼と社内での信頼を得るための手段のひとつと考えることができるかもしれません。