源泉徴収の「納期の特例」とは何か?
源泉徴収した所得税は毎月納付しないといけない?「納期の特例」とは何でしょうか。どういうケースに適用されるのでしょうか。
本来日本では、税金は自分で申告して自分で納める申告納税が基本です。しかし、各種手続きを簡素化するために所得税の源泉徴収と言う仕組みができました。市民税などにもこの制度が有り、特別徴収と言われています。納税する側にも税金を徴収する側にも便利なこの制度の、税金の納め方について見てみましょう。
目次: 1)源泉徴収の仕組みについて 2)納期の特例の利点とは 3)納期の特例を受けるためには? 4)納期の特例が認められたら 5)納期の特例に該当しなくなったら 6)まとめ
1)源泉徴収の仕組みについて
日本は申告納税制度を取っています。しかし、サラリーマンの一人一人が、所得税の計算と確定申告・所得税の納付を行うと、納税側も徴収側も、納付窓口である金融機関も、大変な手間暇を要します。そんな手間暇を簡素化するために源泉徴収と言うシステムが有ります。市民税などにも同様な特別徴収の制度が有りますが、今回は源泉徴収について説明します。
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う側が、予め所得税額を計算して、支払い額から差し引きます。差し引いた所得税は預り金として処理し、納付期日までに最寄りの金融機関や税務署の窓口で納付します。納付期日は、通常給料や報酬などを支払った月の翌月10日までです。
2)納期の特例の利点とは
納期の特例とは、本来毎月10日に納付するべき源泉所得税を、年に2回6か月分ずつを、まとめて納付できる特例制度です。
納付の期日は、
- 1月から6月までに支払った所得から源泉徴収をしたもの・・・7月10日
- 7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をしたもの・・・翌年1月20日
このようになり、納付する側は月々の納付の事務処理が軽減されます。月々の徴収された所得税は預り金になりますので、資金繰りの一部として運用することも可能です。 この便利なシステムは市民税などの住民税については有りません。住民税の特別徴収分は毎月納付することになります。
3)納期の特例を受けるためには?
源泉所得税は通常、給与や報酬から所得税を差し引いた日の翌月10日が納付期限になります。しかし、給与の支給人員が常に10人未満の源泉徴収義務者は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄の税務署に提出すると、所得税の納付を年2回にまとめて納付することが出来ます。具体的には、
- 給与
- 退職所得
- 税理士や社会保険労務士、司法書士等の報酬・料金
について源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税についてです。 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、特に提出期限は有りません。 申請書が国税庁のホームページにありますので、ダウンロードして作成し、管轄の税務署に郵送するか、持参します。
下記ページからダウンロードできます。 https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/1648_14-2801.pdf
4)納期の特例が認められたら
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、所轄の税務署に提出した月の翌月末日までに税務署長から承認または却下の通知がなければ、この申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとされます。申請書を提出した日の翌月に支払う給与等の所得税から適用になります。
例えば6月15日に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して承認されると、7月中に支払った給与等の所得税から特例の対象になりますので、8月納付分からは翌年の1月20日までに納付すればよいことになります。
この際、納付書が≪給与所得者・退職所得等の所得税徴収高計算書(納期特例分)≫に変わり、記入の仕方も変わってきます。納付書は税務署に受け取りに行くか、返信用封筒に切手を貼って依頼すれば、郵送してもらえます。
5)納期の特例に該当しなくなったら
事業が順調に成長して給与の支給人員が常時10人未満でなくなった場合は、納期の特例の要件に該当しなくなります。この時には、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」(なんかそのまんまな名称ですね。)を提出する必要があります。これは特例の要件に該当しなくなった時に、速やかに提出しなくてはなりません。提出先や提出方法は、先の申請書と同様です。
下記ページからダウンロードできます。 https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/pdf2/1648_15-2801.pdf
該当しなくなった場合の源泉所得税は、該当しなくなった届出書を提出した月以前の分までは、その翌月の10日に納付し、その後は毎月分を翌月10日までに納付することになります。
6)まとめ
給与の支払い者数が10人に満たない場合は、源泉所得税の納期の特例を税務署側も奨励してくる場合があります。お互いの事務手続きを簡略化しませんか。と言う考え方と思われます。 納期の特例を受けても、月々の源泉徴収事務や年末調整などのやり方は変わりありません。所得税の納付が年に2回になりますので、カレンダーに印を付けるなどして忘れないようにしましょう。