傷病手当金って何?対象者は?支給条件と金額、支給期間について説明します
突然の怪我や病気。これは誰にでも起こり得ることですよね。仕事中・通勤途中の怪我や病気であれば勤務先からの補償や労災保険の給付が下りますが、これらに該当しない場合は、我々が普段病院などを受診する際に用いる健康保険から給付を受けることになります。
では、怪我や病気で長期間働けなくなってしまった場合に健康保険から所得補償が受けられることはご存知でしょうか?
1)傷病手当金って?
傷病手当金とは、健康保険に加入していれば受けられる給付で、働けなくなった場合に一定の所得補償が受けられるものです。名前だけは聞いたことがあっても、誰が対象でどの位の金額が貰えるのかについては詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。
今回は、この傷病手当金について、支給条件や金額、対象者を詳しく確認してみましょう。
2)対象となるのは?
企業にお勤めで健康保険に加入している方であれば、誰でも対象になります。つまり、支給のための条件を満たしさえすれば、正社員に限らず非正社員やアルバイト、派遣社員であっても支給の対象となるのです。そのため、自分自身や身近な人にもしものことがあった場合に備え、傷病手当金の仕組みは知っておいて損はありません。
3)支給のための条件は?
健康保険に加入しているお勤めの方であれば誰でも対象になることは先にお伝えした通りですが、具体的には以下の3つの条件を満たす場合に、傷病手当金を受けることができます。
1.怪我や病気で療養の必要があること
まず、当たり前のようですが実際に怪我や病気にかかっていることが必要です。逆に言えば、怪我や病気にかかっていればどのような症状であってもこの条件は満たすことになります。
例えば夏休みでプールに遊びに行き、はしゃぎ過ぎてプールサイドで転倒して骨折してしまった場合や、最近増えていると言われるメンタルの問題でうつ状態や適応障害などになってしまった場合であっても療養の必要さえあれば、条件を満たすことになります。
(※犯罪行為やケンカ、泥酔時など一定の場合は傷病手当金に限らず健康保険の給付が一切受けられないことがあります。)
2.仕事ができない状態にあること
怪我や病気のため働けなくなっていることが条件になります。「仕事ができない状態」にあるどうかは個別に判断されることになるため、必ずしも入院中などで一切身動きがとれないような状態にある必要はありません。通院しながら自宅療養をする場合や術後しばらく安静にしていなければならないような場合であっても条件を満たします。
最終的な認定は健康保険の運営元(政府、健康保険組合など)が行いますが、通常のケースであれば主治医が「仕事ができない状態」にあると判断すれば問題なく認定されます。
3.連続3日間の「待期期間」を満たすこと
最後の条件として「待期期間」というものがあり、上記2点を満たしていても最初の3日間は傷病手当金が支給されません。つまり、単に風邪で1〜2日仕事を休んだだけでは傷病手当金は支給されないのです。また、この待期期間は3日間連続している必要があるため、2日欠勤して1日出勤ということを繰り返しているといつまでも待期期間を満たさないことになります。
なお、この3日間は必ずしも欠勤である必要はありません。土日などお休みの日や有給休暇を消化した日であっても3日間にカウントされることになります。
4)支給額と支給期間
上記の条件を満たすことで傷病手当金が支給されますが、この支給額は一律の額ではなく個々の収入額に比例した額となり、具体的には以下の計算式で算出されることになります。
「直近1年間の『標準報酬月額』の平均額の30分の1」×3分の2=1日当たりの傷病手当金
『標準報酬月額』とは健康保険料の額や今回の傷病手当金の額を計算する根拠となるもので、給与額に応じて50段階に区分けされています。この区分けを正確に算出すると複雑になってしまいますが、おおよそ毎月の額面給与額(社会保険料や税金が天引きされる前の額)とイコールになります。
なお、支給期間は1つの怪我や病気に対して最長で1年半が限度とされています。つまり傷病手当金とは怪我や病気になった場合に月給のおおよそ3分の2が最長1年半まで補償される制度なのです。
5)貰える金額の一例
では、ケースごとにどの程度支給されるのか、先ほどの計算式に当てはめて具体的な金額を確認してみましょう。
計算式: 「直近1年間の『標準報酬月額』の平均額の30分の1」×3分の2=1日当たりの傷病手当金
ケース1:月給25万円(1年間の標準報酬月額の平均額)の人が約2ヶ月間(60日)休んだ場合
① 250,000円÷30分の1=約8,300円(1年間の標準報酬月額の平均額の30分の1) ② ①×3分の2=約5,500円(1日当たりの傷病手当金の額) ③ ②×60日(休んだ日数)=約330,000円 この場合、2ヶ月分の所得補償として傷病手当金がおおよそ33万円支給されます。少し家計は苦しくなりますが、短期間であればなんとか生活が可能な金額ではないでしょうか。
ケース2:月給60万円の人が1年間(365日)休んだ場合(ケース1と同様の記載は省略しています)
①600,000円÷30分の1=20,000円 ② ①×3分の2=約13,300円 ③ ②×365日=約4,800,000円 この場合、1年間の所得補償として傷病手当金がおおよそ480万円支給されます。家族構成や家のローンなどの状況にもよりますが、働けなくなっても1ヶ月あたり40万円ほどが補償されるのは安心です。
6)こんな人でも対象に
意外に思われるかもしれませんが、経営者や役員であっても健康保険には加入しているため条件を満たせば傷病手当金を受けることができます。経営者や役員の受け取る報酬は役員報酬という性格上、欠勤等があっても通常その金額が減るということはありませんが、怪我や病気が長引いてしまい報酬が受けられなくなった場合は傷病手当金が支給されます。
また、傷病手当金の支給にあたり必ずしも在職中である必要はありません。在職中に傷病手当金を受けられる状態にあれば、休職期間が長引いて退職することになったとしても、最長1年半までは継続して傷病手当金を受けることができます。
7)まとめ
条件や金額について知っておけば、ある程度怪我や病気を心配することなく仕事を続けることができるのではないでしょうか。また、医療保険などの加入を検討する際にも、自分の場合は傷病手当金がどの程度支給されるのか把握しておくことは重要です。
健康に働き続けることが1番なのは言うまでもありませんが、このようにもしもの時に役立つ制度についてアンテナを張っておくことも忘れないようにしてください。