給与計算のはじめは、勤務表のチェックから!
勤務表であったり、タイムカードであったり、または勤怠システムであったりと、基本的に企業では従業員の勤怠を管理していることが当たり前かと思います。月給制や時給制など、多くの企業では勤怠状況も考慮したうえで給与が支払われているためです。
ちなみに賃金台帳をはじめとした勤怠に関わる書類は、労働基準法によって、少なくとも3年間は保管するように義務づけられています。勤務状況が分かる書類については、明確な記載はありませんが、後々のトラブルのためにも保管しておくというのが通常です。
このように、勤務表などの勤務状況が分かる書類というのは、給与計算だけでなく、労務管理という面においても重要であるということが分かります。給与計算で使用した後も、しっかりと保管しておきたいものです。
1.給与計算の第一歩は勤務表チェック
さて、話は給与計算に戻ります。一般的な給与において、まず大まかに分けていくと、基本給のほかに、健康保険や厚生年金、源泉徴収、雇用保険の控除、手当に分けられるでしょう。控除関係についてですが、パートの場合でも労働時間によって加入することはありますが、加入している健康保険の改定は基本的に毎月の給与が固定である場合、毎年1回程度です。
源泉徴収や雇用保険は、給与ソフトを導入している会社であれば、ソフトが自動的に計算してくれるかと思います。手当については、会社独自のものであり、住宅手当や資格手当など大きな変化がない限りあまり気にしません。
それでは、給与計算ではどこを重点的にみていくのか。やはり、勤務表やタイムカードでの勤怠状況になってくるのではないでしょうか。控除や手当とは異なり、残業や欠勤といった勤怠状況というのは、毎月必ずしも一致しないためです。そのため、控除や手当以上に個別にしっかりと確認していくという必要があります。ちなみに筆者が勤務していた会社は従業員150人程度の中小企業で、管理部門では給与担当者が決まっていました。しかし、給与計算でミスを出さないため、勤務表が届く期間は給与担当以外のメンバーも勤務表を中心に給与のチェックに携わっていました。
2.気をつけたい残業代の考え方
月給制での残業代の考え方
時間給で残業代をつけるのは時間給をそのまま用いるだけなので比較的容易ですが、月給の場合は別途計算をしなければなりません。こと細かく見れば就業規則などによって若干異なりますが、基本的には、基本給(営業手当や役職手当など仕事に関わる手当を含む)から家族手当などの仕事に直接関わりのない手当を引き、1ヶ月の平均労働時間を割って算出します。
ただ、ここで出した月給制における時給はあくまで計算のベースです。残業が8時間を超える時間外なのか、深夜の残業かによっても金額が変わってきます。
3つの残業代
残業代は、時間外労働、深夜労働、休日労働の3つに大別することができます。労働基準法では、1日8時間、週40時間という労働時間の定めがあるので、時間外労働は、この1日8時間以上の労働時間のことを指します。また、深夜労働は午後10時から午前5時に労働した場合、休日労働は4週4日以上の法定休日に労働した場合ものです。
時間外労働、深夜労働、休日労働にはそれぞれ割増賃金が設定されており、時間外や深夜労働は2割5分増し、休日労働は3割5分増しで支払わなければなりません。さらに時間外と深夜労働が重複する場合は5割増し、休日労働と深夜労働が重複する場合は6割増しで残業代を計算する必要があります。
会社によって若干異なるかと思いますが、基本的には労働基準法の残業代がベースとなっているので、少々複雑ではありますが、給与担当者はしっかりと念頭に入れておきたいものです。会社側が悪質であると判断された場合のケースですが、残業代の未払いや割り増し残業が適用されていないなどが明らかになった場合、最悪、労働基準法違反で刑事罰を受ける可能性もあります。会社の規模によっては、目視チェックだけでなく、ソフトやシステムを使用して計算するというのがより安全かもしれません。
3.月給制の欠勤控除の考え方
労働基準法では、欠勤控除の定めはありませんが、採用している会社は少なくないと思います。欠勤控除とは、会社側が、従業員が多く働いた分を残業代として支給するように、従業員が欠勤した場合、その分を給与から引くよというものです。
多くは月平均給与から月の労働日数を割った金額を、欠勤した日数分引くというものになります。ただし、計算方法は会社によりますので、これから会社を立ち上げる場合は、就業規則などとしてしっかりとした定めを作っておきたいものです。就業規則をしっかり定めていると、後々のトラブルへと発展した場合、しっかりとした根拠があるため、有利に働く場合もあります。
4.まとめ
ここまで、勤務表にまつわる残業代や欠勤控除などの考え方についてご紹介してきましたが、勤務表のチェックというのがいかに大切なのかというのがお分かりいただけたと思います。
給与担当者であれば、チェックに漏れが発生しないための体制を考える、さらに責任のある立場であれば就業規則を今一度見直し、変更や追加を提案するなどの整備を考えていきたいです。
※参考URL:
欠勤控除の計算方法を教えてください(ファーストアイティプロ)
欠勤時の賃金控除の方法は?(会社を守る就業規則)
こんなに怖い未払い残業代のリスク(NEC)
法定休日労働と法定外休日労働は同じ休日出勤でも割増率が違う(市川事務所)
時間外労働・休日労働・深夜労働(Q&A)(大阪労働局)
残業割増賃金の計算方法
月給制の場合はどのように計算するのか?(LSC綜合法律事務所)
正しく計算されていますか?~残業代の計算方法(堀 政哉法律事務所)