マイナンバー制度導入で平成28年分の源泉徴収票が新様式に ~変更箇所を完全解説~
マイナンバー制度に伴い、平成28年分から源泉徴収の様式が変更されました。どの部分がどのように変更されたのか、またどのような点に注意すれば良いのかを解説します。
1.そもそも「源泉徴収票」とは?
個人事業主は別として、会社員であれば源泉徴収票というものが毎年1回、もしくは退職時に発行されます。この「源泉徴収」という言葉を聞いてピンとくる方もいるかもしれませんが、給与明細に記載されている「源泉徴収」の天引きを集計したものが源泉徴収票です。源泉徴収票では、支払った源泉徴収税額他、給与・賞与の合計額などを確認することができます。
それでは、源泉徴収票は何に対して必要な書類なのでしょうか。源泉徴収票は、自営業でいうところの所得証明書にあたり、公的年金または退職手当など所得を証明する書類として活用することができます。ただの書類と思わずに、然るべきときのためにしっかり保管しておきましょう。
2.マイナンバーで様式変更!新様式はいつから?
既にマイナンバー制度が社会で運用されているということはご存知かと思いますが、実はその余波は源泉徴収票にも及んでいます。マイナンバー制度が平成28年(2016年)1月から導入されたことにより、源泉徴収票も変更へ。マイナンバー制度導入と同様に、平成28年から新様式を使用するように変更されました。そのため、平成28年に退職者のあった企業はすでにマイナンバー適用の新様式の源泉徴収票を使用されていることでしょう。
3.新様式の源泉徴収票で何が変わった?
新様式と旧様式ではいくつか変更点があります。中でも大きな変更点をピックアップしました。
■用紙サイズが変更した
これまで、源泉徴収票のサイズはA6サイズで、はがきよりも少しだけ横長でした。しかし、「給与所得の源泉徴収票」の新様式はA5サイズへ変更。記載箇所が増えたこともあり、以前よりも倍の大きさに変更されています。それ以外の退職や公的年金に関わる源泉徴収票のサイズは変更されていません。
■国税庁より平成28年以後の様式が発表
新様式についてですが、すでに国税庁より「給与所得の源泉徴収票」、「退職所得の源泉徴収票」、「公的年金等の源泉徴収票」が開示されています。様式については、それぞれ公式ページにてPDFでのダウンロードが可能です。
■マイナンバー・法人ナンバーの記載が必要
大きな変化といえば、マイナンバーの記載です。新様式では、マイナンバーを記載する欄はもちろん、会社の法人番号等を記載する項目が増えました。番号の記載は、個人情報ということもあり税務署提出用(市町村提出用)のみですが、事前に従業員のマイナンバーを把握しておく必要があります。
■その他追加された事項
「退職所得の源泉徴収票」については、マイナンバー以外特に記載する部分は増えていませんが、「給与所得の源泉徴収票」と「公的年金等の源泉徴収票」では新たに記載欄が増えました。まず共通するのが、控除対象配偶者、控除対象扶養親族、16歳未満の扶養親族の欄です。控除対象配偶者と控除対象扶養親族については、家族のマイナンバーも記載しなければならないようになっています。さらに、「給与所得の源泉徴収票」においては「住宅借入金等特別控除額の内訳」等も記載するようになりました。
■マイナンバー記載が最大の変更点
新様式においての大きな変更点は、税務署に提出する用のマイナンバーの記載だと言えるでしょう。その他若干の変更はありましたが、基本的には年末調整のデータを詳細に記載するようになったということで、ベース自体には特段の変化はありません。
4. 平成28年分の扶養控除等申告書に記載する情報
源泉徴収票新様式の部分でも触れましたが、給与所得の源泉徴収票と公的年金等の源泉徴収票では、記載する場所が拡大されました。これに伴い、平成28年分の扶養控除申告書の記載も平成27年から変更が加えられています。源泉徴収票作成の元になるものですので、実際どのようなことを記載するのが、順に確認してみましょう。
- 給与支払者の名称
- (●)給与支払者の法人(個人)番号
- 給与支払者の所在地(住所)
- 本人の氏名
- 本人の生年月日
- 世帯主の氏名
- (●)本人の個人番号
- 本人の住所又は居所
- 配偶者の有無
- (●)控除対象配偶者の氏名及び個人番号
- 控除対象配偶者の生年月日
- 控除対象配偶者の住所又は居所
- 控除対象配偶者の所得の見積額
- (●)控除対象扶養親族の氏名及び個人番号
- 控除対象扶養親族の生年月日
- 控除対象扶養親族の住所又は居所
- 控除対象扶養親族の所得の見積額
- 障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生
- 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
- 16歳未満の扶養親族の氏名
- (●)16歳未満の扶養親族の個人番号
- 16歳未満の扶養親族の住所又は居所
- 16歳未満の扶養親族の所得の見積額
黒丸(●)で表記した箇所が平成28年度からの変更点です。記載者本人、本人の控除対象者の内、配偶者・扶養親族において個人番号の記載が必要となりました。マイナンバーの記載は本人分だけでないということに注意したいですね。ちなみに給与支払者、つまり企業の法人(個人)番号については、会社側で記載することになっています。
5.源泉徴収票の細かな変更点について
■①個人番号の追加場所
給与所得の源泉徴収票においては、氏名・役職欄の上に、退職者と公的年金における源泉徴収票では、住所又は居所の欄の上に追加されました。
■②控除対象配偶者の有無等
配偶者控除を行った場合、または老人控除配偶者である場合に丸で記載する場所です。控除対象者かどうか、一目で判断しやすくなりました。
■③非居住者である親族の数
控除対象配偶者、控除対象扶養親族、16歳未満の扶養親族のうち、非居住者にカウントされる親族のことです。例えば、住所とは異なる海外の住所などを拠点にしている場合などが該当します。
■⑩摘要
控除対象扶養親族と16歳未満の扶養親族が5名以上いる場合、非居住者を記載する場合、年途中での就職で給与等を通算した場合、未払い給与等の弁済を受けた場合、災害で徴収の猶予を受けた場合、免除を受ける場合に記載する項目です。
■④~⑥住宅借入金等特別控除額の内訳
「住宅借入金等特別控除適用数」、「居住開始年月日」、「住宅借入金等特別控除区分」を新たに記載するようになりました。区分については、一般住宅なら「住」、認定住宅であれば「認」、特定増改築等住宅の場合は「増」、東北大震災によって新築や増改築を行った対象住宅は「震」と表記します。
■⑦控除対象配偶者
控除対象配偶者とは、納税者と生計が一であり、年間合計所得が38万円以下、および専従者給与をうけていない配偶者のことを指します。平成28年度版からは、氏名と対象者のマイナンバーを記載する箇所が増えました。
■⑧控除対象扶養親族
基本的には控除対象配偶者の要項と同様で、6親等内の血族あるいは3親等以内の姻族である場合です。こちらも、平成28年より氏名とマイナンバーの記載が必要となりました。
■⑨16歳未満の扶養親族
16未満の扶養親族を記載する欄になります。マイナンバーの記載は省略されていますが、平成28年より氏名を記載しなくてはならない仕様になりました。
■⑪備考
控除対象扶養親族が5人以上いる場合に記載する必要がある場所で、それぞれのマイナンバーを記載するようになっています。
■⑫個人番号または法人番号
支払いを行う、企業または個人の法人(個人)番号を記載する項目です。こちらも、マイナンバー制度に伴い追加されました。法人番号と個人番号とでは桁数が異なるため、個人番号の場合は右詰で記載していきます。
6.源泉徴収票の変更に伴い注意したいこと
■旧様式は使用できない
ご紹介したように、マイナンバー制度の導入に伴い、マイナンバーの項目が追加されるなど源泉徴収票には大きな変更が加わりました。処理上、旧様式である平成27年以前のものは今後使用できないので注意が必要です。国税庁の公式サイトにもあるように、必ず平成28年のものをダウンロード、もしくは会計ソフト内で更新されたものを利用して提出しましょう。
■事前にマイナンバーの確認を
平成28年以降の源泉徴収票から本人だけでなく、控除対象の親族のマイナンバーの記載が必要となります。扶養控除等申告書提出の段階でしっかり記載が行われているか確認するようにしましょう。また、退職者の場合は、他の従業員よりも早い段階で源泉徴収票を発行する必要があります。源泉徴収票作成の前に、事前にマイナンバーを確認しておくことが大切です。
■従業員向けの源泉徴収票は提出用と異なる
税務署提出用または市町村提出用の源泉徴収票は従業員向けの源泉徴収票とは様式が若干異なります。従業員向けの源泉徴収票は、マイナンバーの記載が省かれた様式です。個人情報に関わる事項ですので、提出する際、従業員に配布する際は様式が間違っていないか確認するようにしましょう。
7.まとめ
平成28年の源泉徴収票は、マイナンバー制度が確立されたことによって、以前と様式が変更されています。また、源泉徴収票の中でも、給与所得の源泉徴収は年末調整における書類をより反映したものに変更されていますので、変更点で漏れがないかしっかり確認したいものですね。
※参考・お役立ちリンク 給与所得の源泉徴収票‐国税庁 退職所得の源泉徴収票‐国税庁 公的年金等の源泉徴収票‐国税庁 給与所得の源泉徴収票フォーマット<平成28年度版> 退職所得の源泉徴収票フォーマット<平成28年度版> 公的年金等の源泉徴収票フォーマット<平成28年度版> 給与所得者の扶養控除等申告書<平成28年度版> 源泉徴収票の記載のしかた 配偶者控除‐国税庁 扶養控除‐国税庁 居住者と非居住者の区分