マイナンバーの記入が必要になる2016年分の年末調整とは従来と何が違うのか
マイナンバー制度ははじまったけれど、いったいどこで個人番号を使うのか未だによくわからないという話もちらほら聞かれますが、2016年分の年末調整では必要です。そこで、誰が、どこに、誰のマイナンバーを記入するのかを中心に、少し変化した2016年分の年末調整についてお伝えしたいと思います。
目次
- 変更点を含む年末調整の大まかな流れ
- 従業員は「扶養控除等申告書」だけにマイナンバーを記載
- マイナンバーの確認方法
- 新しい「給与所得の源泉徴収票」の変更点とは
- 「扶養控除等申告書」へのマイナンバー記載が不要になる場合とは
- こんな理由でマイナンバーが記載できないときには
- 「扶養控除等申告書」の保管と廃棄について
- 年末調整とマイナンバー~まだまだ変化し続ける?
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変更点を含む年末調整の大まかな流れ
まず、従業員は「扶養控除等申告書」に自分と扶養家族分のマイナンバーを書いて、「保険料控除申告書」、「配偶者特別控除申告書」、「住宅借入金等特別申告書(住宅ローンをお持ちの方のみ)」とともに会社などに年末調整の書類を渡します。
書類に基づいて事務担当者が年末調整を行います。まず、年間の所得税過不足を精算して12月給与などで調整する必要があります。そして、「給与所得の源泉徴収票(税務署などへの提出分)」にそれぞれのマイナンバーを記載して、合計表など他の必要書類とともに税務署などへ提出します。
すべての処理が終わったら、安全性が高い場所で、法定の保存期限に従って、提出された書類を管理・保存します。
従業員は「扶養控除等申告書」だけにマイナンバーを記載
従業員が会社などに提出する年末調整の申告書類のうち、マイナンバーを書くのは「扶養控除等申告書」だけです。制度開始当初は、「配偶者特別控除申告書」や「保険料控除申告書」などにもマイナンバーを書く予定でしたが、平成28年3月31日付で制度の見直しがあったため、2016年分については記載しなくて良いことになりました。ただし、マイナンバー制度の見直しは、今後もさまざまな形で行われる可能性があり、2017年分以降は、また違う形になることも考えられます。
さて、「扶養控除等申告書」に記入するのは従業員本人と控除対象配偶者、扶養家族のマイナンバーです。扶養家族等の番号について、間違いがないかどうかの確認は従業員本人が行います。会社では従業員分のみの、番号が正しいかどうかをチェックします。
マイナンバーの確認方法
事務担当者などが行うマイナンバーが間違っていないことの確認は、原則として、
- マイナンバーカード(写真とICチップ付きのプラスチックのカード)の提示
- マイナンバー通知カード(氏名とマイナンバーが記された紙のカード)と運転免許証やパスポートなどの本人確認書類の提示
のいずれかです。その際、双方合意の上で書類に写しを添付することもあるかと思いますが、重要な個人情報であるマイナンバーの取扱には、処理後の保管や廃棄を含めて十分な注意が必要です。
新しい「給与所得の源泉徴収票」の変更点とは
2016年分から源泉徴収票の様式は大きく変わります。主な特徴は次のような点です。
○用紙サイズが従来のA6からA5と2倍に
○税務署提出分にマイナンバーと法人番号の記載欄が追加
- 従業員本人の個人番号欄
- 扶養家族の氏名と区分、及び個人番号欄
- 給与を支払った個人事業主のマイナンバー、または企業などの法人番号欄
※従業員に渡す分の源泉徴収票にはマイナンバーは記載されません。
住宅借入金控除の記載欄が広くなるなど、この他にも細かい変更がいくつか加えられ、摘要欄は今までより大きくなっています。ちなみに、控除対象扶養家族欄には、4人分のスペースしかないので、5人目は摘要欄への記載となります。
「扶養控除等申告書」へのマイナンバー記載が不要になる場合とは
「扶養控除等申告書」はマイナンバー記載が原則ですが、給与支払者などがマイナンバーの帳簿を作成して備えていれば、記載不要となります。
帳簿は、「給与所得者の扶養控除等申告書」などの提出によって作られ、従業員本人と扶養家族の、氏名・住所・マイナンバーが書かれていることが必要です。また、作成の際に提出された申告書の種類と提出年月も記載していなくてはなりません。
逆に言えば、2016年分で従業員が提出した「扶養控除等申告書」に基づいてマイナンバーの帳簿を作成保管しておけば、制度が変わらない限りは、2017年分年末調整では従業員の書類提出時にマイナンバー記載が不要になります。ただし、途中で氏名の変更や扶養家族等の増減などがあった場合には、その旨を記載した届出書の提出が必要です。届出書の様式は特に定められていませんので、必要事項を記載した任意のもので大丈夫です。
また、電磁的記録でマイナンバーの帳簿を作成することも可能ですが、あらかじめ申請書を提出し、税務署からの承認を得なければなりません。
こんな理由でマイナンバーが記載できないときには
「扶養控除等申告書」にはマイナンバー記載が不可欠とは言っても、さまざまな事情で記載不能となることがあります。そんな時にはどうしたらいいでしょうか。
○従業員がマイナンバーの記載や確認書類提示を拒否した場合
まずは、「扶養控除等申告書」のマイナンバーの記載と確認が法的義務であることを伝え、処理が適正に進められるように説得します。それでも拒否されたら、最終的には年末調整処理をして、税務署には個人番号は空欄のまま「源泉徴収票」を提出します。この間のやり取りの記録を必ず残しておくことが大事で、税務署からの問い合わせがあっても、事務上のミスなどではなく、従業員の拒否であることを説明しやすくなります。年末調整が完了した後も、説得の継続が求められます。なお、記載拒否による罰則はありません。
○従業員や扶養家族にマイナンバーがない場合
マイナンバーは2015年に日本国内に住民票があった人に付与されました。したがって、海外勤務や留学などで国外に出ていて、その後国内に戻って手続きをしていない人については、マイナンバーが無いこともあります。この場合は該当欄を空欄にしたまま提出し、年末調整処理を行います。
「扶養控除等申告書」の保管と廃棄について
「扶養控除等申告書」と付随するマイナンバー帳簿の保存期間は、「提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間」と決められています。繰り返しになりますが、記載されたマイナンバーは個人情報ですので、保管や廃棄の方法には十分に注意しましょう。
年末調整とマイナンバー~まだまだ変化し続ける?
ここまで2016年の年末調整についてみてきました。将来的にはさまざまな個人データをマイナンバーに結び付けることを国は目指しているようです。そして、マイナンバー制度の目的の一つは「公平・公正な社会の実現」であることを考え合わせると、基盤となる税との関係が重要です。この点からも、年末調整とマイナンバー制度については、今後も注目する必要がありそうです。