従業員の入社時の扶養家族の確認
中小企業では毎年の新卒の採用よりも、即戦力としての中途採用の方が多いと思われます。新入社員と言えど、一家の大黒柱として家族を扶養している人もいます。そんな人の入社時の手続きについて解説します。
所得税の扶養家族の範囲
少し多いですが大切なことですので、列記します。
①控除対象配偶者
給与所得者と生計を一にする配偶者で、その年中の所得の見積額が38万円(年収が103万円)以下の人。
②老人控除対象配偶者
①の控除対象配偶者のうち、70歳以上の人。
③扶養親族
給与所得者と生計を一にする親族で、その年中の所得の見積額が38万円(年収が103万円)以下の人。
④控除対象扶養親族
③の扶養親族のうち、満16歳以上の人(平成28年の場合、平成13年1月1日以前に生まれた人)。概ね高校生です。
⑤特定扶養親族
④の控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の人(平成28年の場合、平成6年1月2日から平成10年1月1日までの間に生まれた人)。概ね大学生です。
⑥老人扶養親族
④の扶養親族のうち、70歳以上の人。
⑦同居老親等
⑥の老人扶養親族のうち、給与所得者またはその配偶者の直系尊属で、所得者またはその配偶者と同居している人。
⑧障害者(特別障害者)
給与所得者本人が障害者である場合と、控除対象配偶者や扶養親族が障害者と認定されている場合。障害の程度により、障害者と特別障害者に分けられます。
⑨同居特別障害者
控除対象配偶者または扶養親族が⑧の特別障害者に該当する人で、給与所得者本人または配偶者、または所得者と生計を一にするその他の親族と同居している人。
⑩寡婦
いわゆるシングルの女性で、扶養親族または生計を一にする(年間の所得が38万円以下の)子のある人。年間の所得が500万円以下の女性で、夫と死別後再婚していない人。同じく、夫の生死が明らかでない人。
⑪特別の寡婦
⑩の寡婦のうち、扶養親族である子を有し、かつその年の所得が500万円以下の人。
⑫寡夫
所得者本人(男性)で、生計を一にする子が有り、かつその年の所得が500万円以下の人で、妻と死別・離婚後再婚していない人。妻の生死が明らかでない人。
⑬勤労学生
所得者本人が一定の要件を備えた学生や訓練生であり、その年の所得が65万円以下(給与所得以外の収入は10万円以下)の人。
扶養控除等(異動)申告書の書き方
扶養控除等(異動)申告書は、それぞれの欄を埋めていけば出来上がります。間違いやすい点、注意が必要な点について述べます。
・最初の所轄税務署長等の欄は、会社の所轄税務署と、社員の住んでいる市区町村名を記入します。空欄で提出してくる人が多いです。 ・給与の支払い者は会社です。社判を押すなどしてから、社員に配布して下さい。 ・マイナンバーの記入がなされているか確認してください。 ・控除対象配偶者の欄を飛ばして、控除対象扶養親族欄の1に奥様の名前を書く人が居ます。さりげなく教えてあげてください。 ・同居・老親等の欄も無記入の人が多いです。年齢などから判断して、確認してください。同居していない親を扶養家族にする時は、仕送り額など厳密な要件が有ります。 ・その年の所得の見積額を少なく書く人が居ます。特に今年からマイナンバーで配偶者の所得もきっちり把握されますから、正確に書いてもらってください。
健康保険の扶養家族の範囲
103万円の壁は所得税の扶養になるかならないかの壁です。所得税の扶養親族に該当する人と16歳未満の扶養親族は、概ね健康保険の扶養家族(被扶養者)になれます。
奥様がパートに出ている場合などに、「106万円の壁」と「130万円の壁」問題が出てきます。今の所106万円の壁は、従業員501人以上の企業に勤める人が対象ですが、大手のスーパーで働いている場合などは、この要件に該当してくることが有ります。奥様の収入(所得)を正確に把握するため、奥様の会社に収入証明を出してもらう会社も有ります。
健康保険被扶養者(異動)届の書き方
扶養家族の健康保険証を作るときは、「健康保険被扶養者(異動)届」を年金機構に提出します。3枚複写になっていますが、ダウンロードした書類でしたら、(昔懐かしい)カーボン紙を利用するか、3枚手描きしないといけません。(エクセルでダウンロードしたものに入力後、プリントアウトすると手描きの手間は省けます。)
各項目の要求に従って記入してゆきます。配偶者を健康保険の扶養家族にする時、国民年金の3号被保険者になります。これは次項で詳しく説明します。
配偶者と国民年金第3号被保険者について
国民年金の第3号被保険者とは、厚生年金保険の加入者の配偶者で、20歳以上60歳未満の人です。ただし、年間の収入が130万円以上で健康保険の扶養になれない人は、自動的に第1号被保険者になるか、自分の勤め先で厚生年金と健康保険に加入することになります。
第3号被保険者は保険料の負担はありませんが、第3号被保険者に該当しなくなったときには、自分で手続きをしないといけません。このことはあまり周知が徹底しておらず、将来国民年金の加入期間が足りなかったなどの不都合を招くことも有ります。個人の問題ではありますが、毎年の調整の時に扶養控除等(異動)申告書で扶養家族の異動を把握した場合は、一言添えてあげるのもいいでしょう。
まとめ
新しい勤め先に出社するのは、(ほとんどの人は)緊張するものです。書類等は煩わしさも手伝って、苦手意識を持っている人もいます。人事担当者の人当たりの良しあしも会社のイメージを決める一つです。正しい知識を持ってソフトに応対できれば、緊張している新入社員に、小さな安心感を届けられるのではないでしょうか。