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2016年11月22日(火)

来日外国人の給与計算の注意点とアドバイス

経営ハッカー編集部
来日外国人の給与計算の注意点とアドバイス

筆者は、外国人の給与計算に携わって約25年になります。給与計算を担当している全ての方に、いつの日か外国人の給与計算を行うことになった際のポイントとコツについて解説したいと思います。

外国人の給与計算って何か違うの?

外国人労働者の数は年々増加しています。給与計算の仕事をしているといつの日か、自分の会社に外国人が入社して、給与計算を行う日がすぐそこまで来ているのかもしれません。備えあれば憂いなし、外国人給与計算の特徴を理解して、将来に備えましょう。

 外国人だからといって所得税や住民税の規定が日本人と異なるということはありません。 日本人同様に毎月の給与から源泉徴収され、年末調整も同様に行われます。それでは何が違うのか?来日外国人特有の取扱いが出てくる場合というのは次の2つのケースです。

- 普通日本人社員にはない、特別の待遇がある
- 海外払い給与がある

来日外国人特有の取扱いが生じる外国人とは?

 日本に居住していて、日本で採用される外国人の場合は、雇用条件も日本人とほぼ同じというケースが多いと思います。しかし、海外募集により採用された場合や、海外の関係会社(親会社等)から出向してくる外国人については、雇用条件や出向条件が日本人社員とは全く違うケースが少なくありません。さらに母国で給与の全額又は一部の支給を行うケースもあります。

どのような待遇が考えられるのか?

   ○ 社宅の提供
   ○ 住居の水道光熱費負担
   ○ 自動車の提供(リース契約)
   ○ 子供の授業料負担
   ○ 日本語レッスン代の負担
   ○ 一時帰省(ホームリーブ)費用の負担
   ○ 母国における家具等の保管倉庫代
   ○ 母国で支払われる社会保険料負担
   ○ 日本で発生する所得税、住民税負担
   ○ 日本で発生する社会保険料
   ○ 家族全員の医療費負担
   ○ 個人の所得税確定申告書作成費用   

のようなものが挙げられます。

外国人社員について、所得税法上の3つの分類

給与計算を行う上で、外国人社員を「永住者」「非永住者」「非居住者」の3つに分類しておく必要があります。ここでは詳しい説明は割愛しますが、今回の解説の対象となる外国人とは、「非永住者」を前提とします。非永住居住者の要件は以下の通りです。

1.日本国籍を有していない
かつ
2.過去10年以内に日本に住所(居所を含む)を有していた期間が合計5年以下

この2つ目の要件について、過去10年の中で通算5年超日本に住んでいると「永住者」となります。永住者になると、その外国人の日本国内の所得だけではなく全世界の所得を日本で申告しなければならないこととなります。言い換えますと非永住者の場合、原則日本国内で生じた所得だけが所得税の対象となります。※一部例外あり

支払場所という概念

前述した3つの分類の他にもう一つ押さえておくべきポイントがあります。それは支払場所です。「非永住者」の場合、日本国内で生じた所得(給与など)が課税対象となり、海外で生じた所得(給与の内、海外出張した日数に応じた部分[役員を除きます]、海外不動産や海外で運用している有価証券など)は課税対象外となります。

しかし、この所得が生じた場所(国内源泉所得、国外源泉所得)以外に、海外で生じた所得でも、日本で支払われたり、海外で支払われた後に日本に送金してきたものについては、日本で課税対象になるというルールがあります。無闇に不要不急のお金は、日本に持ち込まない方が良いということですね。

また海外で支払われるという意味は、支払事務をどこで行うかということで判断しますので、あえて日本の法人口座から外国人社員の海外口座へ送金したとしても海外(国外)払い給与とは認められませんのでご注意下さい。

経済的利益の項目別課税の適否

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国外に居住している親族を扶養控除、配偶者控除対象とする場合

平成27年の税制改正により、平成28年以降国外に居住している親族を扶養控除に含める場合は、『親族関係書類』及び『送金関係書類』を、社員に提出してもらわなければならなくなりました。会社は源泉徴収義務者として、毎月の給与計算をする際及び年末調整を行う際、上記2つの書類を確認した上で、扶養対象者に加えることとなります。

 『親族関係書類』とは、その親族が親族関係とともに実在することを証明するための書類です。また『送金関係書類』とは、来日外国人社員の所得により養われていることを証明するための書類となります。詳しくは、下記国税庁ホームページを参考にして下さい。

見落としがちな節税ポイント

国外源泉所得の国外払い給与と海外出張

上記にて少し触れましたが、役員でない非永住者が海外出張した場合、その日数相当の給与所得は、国外源泉所得(海外で生じた所得)となります。すなわち所得税課税が生じないこととなります。しかし、もう一つポイントがあります。それは、支払場所が日本国内であれば、国外源泉所得でも国内払いであれば、所得税が課税されるという点です。

それではどうすれば良いのか?

その社員の母国(海外)に親会社等がある場合、給与の全部又は一部を母国側での支払いとすることで、国外源泉所得かつ国外払いとなり、所得税課税が生じないこととなります。海外出張の多い外国人社員(非永住者)の場合、活用したい節税ポイントと言えるでしょう。補足しますと、国外払いでも、日本に送金してしまうと国内で支払われたものと同様に課税(送金課税)が生じますのでご注意下さい。

帰国のタイミングと住民税

外国人社員が数年間の日本勤務を終えて、海外に出国する場合、その出国の時期で大きく税金が変わってくる場合があります。12月31日までに出国するのと、年末を超えて翌年1月に帰国するのでは、1年分の住民税が課税されるか否かの違いが生じます。

 住民税は1月1日に居住している場合に、前年の所得に対する住民税が課税されるルールですので、12月31日までに出国した場合、その年の所得に対して住民税の課税は生じないこととなります。1年分の住民税ですので、金額も少なくないですよね。是非覚えておいて下さい。

給与計算担当者の心構え

外国人社員を迎えることとなった場合は、上述しました3つのどの分類に該当するのかをまず確認することから始めます。そして、雇用契約書、扶養控除等申告書(扶養家族等の内容を把握)を提出してもらうことで、全体像を把握することが一番重要な作業となります。そして、 一般的な給与計算との違いを把握することで、十分対応することが出来ると思います。

もし、難しい判断が必要な場合は顧問税理士にご相談下さい。

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