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2017年08月29日(火)

中途採用者が本当に望んでいる福利厚生とはどんなものなのか

経営ハッカー編集部
中途採用者が本当に望んでいる福利厚生とはどんなものなのか

従来、基本給のかさ上げ手段として導入・拡充されてきた福利厚生制度。健康保険や年金制度、雇用保険、労働基準法上の休業補償などの法定福利に加え、最近では、ユニークな制度を打ち出す企業が増えています。

ユニークな各制度には、従業員の育成やモチベーションの向上、人材採用から企業ブランディングの意味合いも込められているようです。しかし、それらのユニークな福利厚生制度は、本当に入社を検討する中途採用者にとって魅力的なものとして映っているのでしょうか。ユニークな制度を取り入れることだけに主眼を置き、「内輪ウケ」になっていませんか。

「かき氷食べ放題」や「バンジージャンプ支援」なども

福利厚生制度がユニークで充実している企業として、真っ先にイメージされるのは、Googleなどの外資系IT企業です。3食無料のカフェテリアや、ダーツやビリヤードを備えた休憩室などは、あこがれのオフィスとしてよくメディアにも取り上げられますね。最近では、日本企業もベンチャーやIT系を中心に、ユニークな制度が増えてきています。

例えば、システム開発を手掛けるサイブリッジの「かき氷食べ放題制度」。スーパークールビズを実施するにあたり、衣食住の「食」からもアプローチすべく、かき氷を食べて体を冷やそうという取り組みだそうです。

デジタルマーケティングコンサルティングのトライバルメディアハウスでは、「パラグライダー支援制度」や「バンジージャンプ支援制度」を設け、これらの「人生を変える」アクティビティにチャレンジする社員に、費用を支援しています。

また、最近では住宅補助制度の変形として、会社から近距離に住む社員に家賃補助を出す企業も増えています。家賃の高さからオフィスの近くに住むのを敬遠していた社員も、補助があれば引っ越しを検討できます。職住近接を実現することで、通勤ラッシュを軽減し、プライベート時間の確保につながるとされています。

長期雇用のために基本給は低くし、福利厚生でカバー

日本企業は従来、給与を低く抑えることで長期雇用を実現してきました。そこで、基本給を低く抑える代わりに、「法定外福利」と呼ばれる、住宅手当や通勤手当など各種手当てや企業独自の福利厚生制度でカバーするスタイルが定着しました。

社宅や住宅補助のような住まいに関わるもの、保養所などのレクリエーション関係、財形貯蓄や持株会などの資産形成の支援制度、人間ドックや予防接種費用の補助などの健康にかかわるものなどが代表的な制度です。バブル期には、前向きで明るい経済環境を反映して、いわゆる「ハコモノ」と呼ばれる豪華な保養所などが登場しました。

どんどん派手になっていた福利厚生制度が、大きく転換したのはバブル崩壊以降です。企業の業績が下降しコスト削減が合い言葉になると、豪華な保養所などは真っ先に浪費の象徴としてやり玉に挙げられ、多くの企業で縮小・閉鎖となりました。

生活スタイルの多様化も福利厚生の変化を後押し

また、生活スタイルの多様化も、福利厚生制度を変化させた要因のひとつです。結婚しない人、子どもを持たない人、親の介護をしている人などさまざまなバックグランドを抱えた人が働く中で、画一的な福利厚生制度では、従業員の満足感を得られないようになりました。

そこで登場したのが、従業員が自由に好きな特典を選ぶことができる「カフェテリアプラン」です。企業は福利厚生制度の提供を外注化することでコストを削減でき、従業員側はライフスタイルに合わせた制度が利用できるという、双方がメリットを享受できる制度として、多くの企業が取り入れています。

福利厚生導入のPDCAを回そう

ライフスタイルの多様化に合わせた福利厚生制度が求められる一方で、昨今、「ユニークな福利厚生制度」が乱立している印象もあります。

例えば「バースデイ休暇」や「リフレッシュ休暇」のほか、「失恋休暇」を設けている企業もあります。しかし、例えば労働基準法で認められているはずの「生理休暇」ですら、周りに気兼ねする、もしくは周囲のメンバーが苦情を言うなどして、取得されていない現状があります。

実際のところどれくらいの社員が会社に失恋を申告し、休暇を利用しているのでしょうか。また、「失恋休暇」があるからその企業を選ぶ、という中途採用応募者もかなり少数なのではないでしょうか。

ユニークな福利厚生の代表格とも言うべき、無料の食堂やカフェテリア。たしかに食費の補助になりますし、入社当初は目新しさから利用するものの、毎日毎日同じ場所で同じメンバーと食事をとることが苦痛になり、そのうち足が遠のいてしまうという声もあります。

アメリカンライフ生命の調査によると、米国では福利厚生を充実させることで、19%の従業員のモチベーションがアップし、14%は翌年新しい仕事を探す確率が減ったそうです。米国は日本よりも短期間で転職を繰り返すジョブホッピングが一般的なので、多少状況は異なるとはいえ、適切な福利厚生制度が従業員の満足度を高め、リテンション(引き留め)に有効であることは間違いないでしょう。

とくに昨今、働き方改革が意識される中で、バブル期から縮小傾向にあった福利厚生制度を再度ブラッシュアップさせることは、「社員を大切にしている会社」というイメージを与えることは間違いありません。

しかし、制度がユニークであること、目立つことばかりにとらわれていると、実効性がない制度になってしまいます。福利厚生の導入はそれなりにコストが発生するものなので、実効性を高めるには導入前だけでなく、運用を始めてからも社員の声を聞き、PDCAを回していくことが大切です。

「外部にとって魅力的か」を考える

中途採用者にとって、福利厚生制度の充実度も転職を決めるポイントのひとつになります。 ただし、「福利厚生充実」とうたっていても、ユニークさが度を越してしまい、内輪ウケを狙ったようにみえる制度が並んでいる場合、中途採用者は「社風になじめるだろうか」と不安を感じる可能性があります。

企業ブランディングや人財採用を目的としてユニークな福利厚生制度を導入する場合は、思いつきでユニークな制度を始めればよいというものではなく、それが外部から見ても魅力的に映るかどうかを検討しなくてはいけません。

人事労務freee

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