内定辞退者を出さないために、人事担当者はどのように内定者フォローをすべきか
昨今、団塊世代の定年退職と少子化による企業の人手不足が顕在化しています。そんな中、せっかくコストをかけて新卒者に内定を出したにもかかわらず、辞退が続出してしまっては採用計画が大きく狂ってしまいます。
内定辞退者を出さないために、人事担当者はどのようにフォローすべきなのでしょうか。
大学生の就職率は過去最高、売り手市場続く
文部科学省、厚生労働省の調査によると、2017年3月に卒業した全国大学生の就職率(4月1日時点)は前年から0.3ポイント増の97.6%となり、1997年の調査開始以来最高となりました。就職率はここ6年連続で上昇しています。
若者の人口数が減少傾向にある中、「売り手市場」は当面継続するとみられます。採用環境の改善を受けて、学生側の就職活動にも楽観ムードが広がっています。リクルートの調査によると、2017年卒の大卒内定者の平均内定取得社数は、2016年12月時点で2.37社。同時点で、学生の60.8%が内定を辞退しているといいます。採用側とすれば恨み節を言いたくなるところですが、内定者フォローをきちんと行わなくては、たとえ内定を出したとしても最終的に選ばれない可能性も高くなってしまいます。
業界・企業研究の甘さが「内定ブルー」を呼ぶ
なぜ内定辞退が増えるのかというと、まず売り手市場で学生1人が内定をもらう社数が増えていること、企業側も辞退を見込んで多めに内定を出していることに加え、学生の企業研究・業界研究の甘さがあります。
売り手市場のため、企業研究・業界研究を深く行わなくても内定がとれてしまうことがあります。受諾したあとで「この会社でいいのだろうか」、「この業界は自分に向いているのだろうか」と学生が不安になるパターンですね。
マイナビの「就職モニター調査(2016年7月時点)」によると、内定者の55%が入社先に不安を抱いています。周囲が内定辞退をし出すと心理的なハードルが下がり、こうした「内定ブルー」の学生も後に続くというわけです。人生一度きりの「新卒チケット」を無駄にしたくないという思いも強いのでしょう。
ただ、一度でも内定を受諾したということは、少なくともその学生側には「入社したい」という思いがあったはずです。内定者の意向に沿った適切な内定者フォローができれば、内定辞退を防げる可能性は多いにあります。
「内定ブルー」学生の心理状況
入社前の学生は主に、以下のような不安を抱いているようです。
1.会社になじめるか、この会社(仕事)は自分に向いているかどうか 先のマイナビ調査では、37%の内定者が「この会社で務まるのか」と不安を抱いています。採用側とすれば、長い選考を経て内定を受諾したのになぜそんな不安を抱くのか? と思うかもしれませんが、最近はブラック企業問題が大きく取り上げられるようになったことで、学生側も過敏になっています。
22%の内定者が「悪い評判・口コミ」で不安を抱いたとも答えています。どんなに企業研究をしても、入社してみないと本当のところはわからないものですが、「新卒チケットで入社した会社がブラックだったらどうしよう……」と、「内定先の正体」を見極めたいという心理が働いています。
2.他の内定者はどんな人たちか 日本企業は新卒採用重視のため、同期のメンバーは会社人生でも長いつきあいになる可能性があります。同調査では、15.3%の内定者が「内々定者や社内の雰囲気・人間関係」に不安を抱いていると答えています。学生にとっては、年代の違う同僚や上司よりも、会社人生の苦楽をともにするであろう同期のメンバーの顔ぶれのほうが気になるようです。一緒に働くメンバー、特に同期のメンバーと波長が合わないと、入社モチベーションが下がってしまいます。
3.もっと他に良い会社があるのではないか 上記2つの要因が重なって「内定ブルー」になると、「もっと他に自分に向いている会社があるのではないか」という心理が働きます。こうなると、内定を受諾しているにもかかわらず、就職活動を継続するようになります。同調査では、13.4%の学生が「他にどうしても気になる企業・業界がある」と答えています。
また、「選考が早すぎたことによるミスマッチの不安(13.7%)」や「採用条件が良くない(給与・勤務地・福利厚生)(17.4%)」という回答もあります。約1年にも及ぶ内定期間の中で、雇用条件や業務内容に対する不安がわき、就職活動を再度継続した結果、内定辞退につながると考えられます。
内定者同士の交流希望が最多
では、「内定ブルー」を呼ばないために、企業側はどういった施策をすべきなのでしょうか。 マイナビの同調査では、内定先への不安が解消されたきっかけとして、「自分で調べたり考えたりして納得した(43.0%)」に次いで、「人事担当者と話し合った(28.0%)」となっており、内定者フォローで会社の顔として接触する人事の責任は重いといえます。
また、「内々定保有者懇親会に出席して(23.3%)」が「先輩社員と話し合って(19.4%)」「職場見学をして(5.5%)」を大きく上回っており、現場の先輩社員との接触や職場見学よりも、「同期と波長が合うかどうか」で内定先への不安が払しょくされていることがわかります。
同調査では、「内々定者フォローとして希望するもの」についても聞いていますが、もっとも多いのが「内々定者懇親会(70.4%)」でダントツです。また、「勉強会 ・グループワーク・研修(36.7%)」や「内々定者専用Webサイト(25.8%)」など、横のつながりを深めたいという希望がほかにも挙がっています。
このほか、「先輩社員との懇親会(35.7%)」、「研究室、工場など施設(社内)見学(26.0%)」への希望も高く、まずは内定者同士の交流を深めながら実際の勤務状況を知り、仕事へのモチベーションやスキルを高められる施策が人気のようです。
「オワハラ」にならないよう注意
2016年度の新卒採用では、内定者確保を急ぐあまり他社と接触できないようにする「オワハラ」が話題になりました。マイナビ調査では、「希望する内々定者フォロー・内々定者研修の頻度」として、「1ヶ月に1回程度(39.4%)」「2ヶ月に1回程度(44.8%)」が8割以上を占めています。
内定者フォローは大切とはいえ、あまり頻繁に接触をすると入社へのモチベーションが下がって逆効果になりかねないので、注意が必要です。