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2017年09月19日(火)

36協定(サブロク協定)を企業側と結びたいのだが、社内に労働組合がない場合の対処法

経営ハッカー編集部
36協定(サブロク協定)を企業側と結びたいのだが、社内に労働組合がない場合の対処法

ビジネス環境が厳しさを増す中、残業や休日出勤がまったくないという企業は、あまり多くはないのではないでしょうか。

法律上、企業が労働者に残業をさせるときには、あらかじめ「36協定(サブロク協定)」を結ぶと定められています。

しかし、実際のところ中小企業などでは労働組合がないことも多く、36協定を結ばずに残業させているケースも多く見受けられます。組合がない会社ではどのように対応すべきなのでしょうか。

35%の企業が協定の存在を知らず

厚生労働省が2013年に実施した調査によると、時間外労働・休日労働に関する労使間での協定を結んでいる大企業は94.0%であるのに対し、中小企業では43.4%のみとなっています。 協定を結んでいない理由について、35.2%の企業が「時間外労働・休日労働に関する労使間での協定の存在を知らなかった」と回答しており、協定の存在が軽視されていることが浮き彫りとなっています。

36協定の内容、正しく言えますか?

しかし実際のところ、36協定という言葉を聞いたことはあるけれど、どういった内容かはっきり答えられる人は少ないのではないでしょうか。

36協定とは、労働者に残業や休日労働をさせる場合に必要な手続きで、労働基準法36条に定められていることからこう呼ばれます。

会社は、労働者に法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働を命じる場合、労組などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務づけられています。違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。

上記調査で言えば、「時間外労働・休日労働に関する労使間での協定の存在を知らなかった」と回答している企業が従業員に残業や休日出勤をさせていた場合、それは違法ということになります。

労働組合がない場合、どうやって協定を結ぶ?

36協定は、事業場(各工場や支店、店舗)ごとに締結します。労働者がたった1人の場合でも、法定の労働時間を超えて労働(法定時間外労働)させる、もしくは法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、36協定の届け出が必要とされています。

企業側であれば、代表者は事業場のトップ、もしくは社長となります。多くの場合は、社長が企業側の代表者となります。一方、従業員側については、従業員の過半数で組織されている労働組合があれば、その労働組合が代表者となります。

ただし、労働組合がないから36協定を結べない、というわけではありません。労働組合がない場合は、当該事業場の労働者の過半数を代表する人(過半数代表者)が代表として協定を結びます。過半数代表者については、次のいずれにも該当していなければなりません。

<ul>

  • 労働基準法41条2号で規定されている監督または管理の地位にある者ではないこと。
  • <li>法に規定する協定等(36協定等)を協定する者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者。</li></ul>
    

    中小企業では、労働組合が結成されていないケースが多いため、企業側はきちんと従業員の過半数の合意を得て選ばれた代表者であるかを確認する必要があります。一方で、企業の中にはこうした規定を悪用し、労使交渉とは名ばかりの協定を結ばせているケースもあるので、注意が必要です。

    一部報道によると、過労死問題でゆれる大手飲食チェーンでは、あらかじめ36協定における労働時間の実態を記入した届出書を作成し、アルバイトを含む従業員にサインのみさせていました。サインをした従業員は、誰が代表者なのか、どうしてこういった協定書にサインをするのかも知らされていないといいます。

    また、「名ばかり管理職」の問題も関わってきます。以前、大手飲食チェーンにおいて、各店舗の店長が管理監督者にあたるとして割増賃金の支払いをしていないという「名ばかり管理職」問題がクローズアップされたことがありました。

    会社側は、賃金の支払いに関しては、店長を管理監督者にあたるとみなしているにもかかわらず、36協定を締結するときにはその店長は管理監督者にあたらないとして、過半数代表者としているケースがあります。こうした「矛盾」は、労働基準監督署からの心証も悪くなるので、避けるべきでしょう。

    36協定があっても、残業の上限は1カ月45時間

    なお、36協定を結んだからといって、上限なく労働させてよいというわけではありません。また、残業や休日出勤をした場合には、割増手当を支払わなくてはいけません。

    36協定においては、「1日」、「1日を超えて3ヵ月以内の期間」、「1年」のそれぞれに対し、労働時間の延長を定められます。上限は1週間で15時間、1カ月45時間、1年360時間と定められています。

    しかし、1カ月45時間の残業ではとても業務がまわらないというケースもあるでしょう。そうした場合は、「特別条項付の36協定届」の届け出をすることで、上限時間を超えての残業時間を設定することができます。

    その場合、36協定の余白に「ただし、繁忙期で納品が間に合わない時期、不具合など特別な事情がある場合は、労使の協議を経て1ヶ月●●時間、1年●●時間まで延長する。延長の回数は年間●回まで」というように、具体的な事由と延長時間を記します。

    特定業務や子育て・介護中の社員は36協定の適用外に

    ①建設、②自動車運転、③新技術等の研究開発、④季節的要因により業務量が変動する6業務、の4つについては、36協定で例外的な取り扱いが認められています。

    また、18歳未満の年少者については、36協定を結んでいても時間外・休日労働をさせることはできません。妊娠中の女性についても、本人の申し出がある場合は、時間外・休日労働をさせられません。

    さらに、小学校就学前の子どもや介護を必要とする家族がいる従業員についても、制限時間(1月について 24時間、1年について150時間)を越えて労働時間を延長してはならないと、育介法第17、18条で定められています。

    ワークライフバランスの適正化に向けて協定締結を

    ワークライフバランスの適正化が意識される中、残業は必要最小限にとどめるべきだという世論が高まってきています。

    労働組合のない職場でも、適切な手続きを経ることで、協定を結ぶことができます。いま一度、36協定の内容とその意味合いを確認し、企業側と協定締結に向けて話し合ってみてはいかがでしょうか。

    人事労務freee

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