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2019年03月08日(金)

労働保険料の年度更新手続きについて

経営ハッカー編集部
労働保険料の年度更新手続きについて

一定の条件を満たす従業員を雇っている事業所には、労働保険料を納付する義務があります。また、労働保険料の場合、健康保険や厚生年金保険とは支払い方法が異なるのです。

今回は、労働保険料の支払いに必要な年度更新手続きについて見ていきましょう。 

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労働保険料の納付方法

労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を基準にして支払います。これを「保険年度」といいます。保険料は、年度内に全ての従業員に対して支払う給与の総額に、事業所ごとに定められた割合を乗じて計算します。

ただし、年末までの給与支払いについて、年初に金額を確定させることはできません。従業員が退職して、後任を採用しなければ給与総額は減りますし、事業拡張で人員を増やせば、その分給与総額も増えるからです。

そのため、まずは保険年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したあとに精算するという仕組みになっているのです。

年度更新手続き期間は毎年6月1日から7月10日

したがって、事業主は年度が変わると、確定保険料の申告・納付手続きで前年度の保険料を精算し、新たな年度の概算保険料を納付するために申告・納付の手続きをしなければなりません。これを「労働保険料の年度更新手続き」といいます。

この年度更新手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行うと定められています。

年度更新の仕組み

例えば、2017年9月に会社を設立したとします。その場合の年度更新手続きは以下の通りです。

・2017年9月:会社設立

会社設立時点で雇用している従業員数をもとに、2018年3月末までの給与総額を計算し、概算の保険料を納付します。

・2018年6月:最初の年度更新

5月末から6月にかけて、所轄の労働局から労働保険料申告書が送付されます。会社設立時に概算で前払いした労働保険料に、過不足がなかったかチェックします。過不足があった場合は、不足・超過分の支払いが必要です。 この時点での従業員数をもとに、2018年4月から2019年3月までの給与予定総額を算出し、新年度の労働保険料を前払いします。

・2019年6月:2回目の年度更新

所轄の労働局から労働保険料申告書が送付されたら、2018年6月に概算で前払いした労働保険料に過不足がなかったかどうかチェックします。 今度は、2018年4月から2019年3月までの1年間の給与予定総額を算出し、新年度の労働保険料を前払いします。

このように、年度更新手続きには前年度の給与支給総額と新年度の給与支給予定額が必要となります。そのため、更新時期が迫ってからあわてて手続きをするのではなく、準備は4月から始めるとよいでしょう。

年度更新の申告・納付先

「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」を作成します。その申告書に保険料等を添えて、金融機関か、所轄都道府県労働局および労働基準監督署に申告・納付しましょう。また、申告書を労働局か労働基準監督署に提出し、口座振替で支払うこともできますし、電子申請・納付も可能です。

上述したように、申告期間前になると、労働保険番号、事業の所在地・名称、保険料率等があらかじめ印字された申告書が送付されるので、それを利用しましょう。

労働保険料の納付方法

労働保険料は、雇用保険料と労災保険料を合わせた金額をまとめて支払います。基本的には一括払いですが、3回に分割しての支払いが認められることもあります。分割払いが認められるのは、以下のケースです。

  • 労働保険料が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)以上の場合
  • 労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合

労働保険料は、事業のために雇用している従業員すべてに支払った賃金の総額に、事業にごとに定められた保険料率と一般拠出金率を乗じて算出します。

労災保険料・雇用保険料の算出方法

労災保険料・雇用保険料は、それぞれ以下のように算出します。

  • 労災保険料=労災保険対象従業員の年間賃金総額×労災保険料率
  • 雇用保険料=雇用保険対象従業員の年間賃金総額×雇用保険料率

労災保険は、従業員(パートやアルバイトも含む)を1人でも雇えば適用となります。一方、雇用保険の対象とする従業員は以下の条件を満たさなくてはなりません。

  • 31日以上の雇用見込みがあること
  • 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること

(出典:厚生労働省「雇用保険の適用範囲が拡大されました!」

ここでいう賃金とは、基本給だけでなく、ボーナスや通勤手当、扶養手当、時間外手当といった様々な手当も含みます。ただし、役員報酬や災害見舞金などの一時金、出張旅費、退職金、傷病手当金などは含まれません。

なお、労災保険料は全額が事業者負担となります。従業員の給与から天引きすることはできません。雇用保険については、事業者と従業員の双方が負担します。労災保険料の保険料率(平成27年以降)については、厚生労働省の「労災保険率表」を確認ください。

(出典:厚生労働省「労災保険率表」

雇用保険の保険率は以下の通りです。(平成29年4月1日改正)

一般事業: 9/1000(事業主負担率:6/1000・被保険者負担率:3/1000)

農林水産・清酒製造業: 11/1000(事業主負担率:7/1000・被保険者負担率:4/1000)

建設事業: 12/1000(事業主負担率:8/1000・被保険者負担率:4/1000)

労働保険料は、年度によって改定される可能性があるので、必ず最新のデータを確認してください。

(出典:厚生労働省「労働保険料の申告・納付」

労働保険料の一般拠出金って何?

労働保険料には、労災保険料、雇用保険料の他に、一般拠出金というものがあります。石綿健康被害救済法に基づき、被害者やその遺族の救済のために、すべての事業者が平等に拠出するものです。石綿(アスベスト)による健康被害が社会問題化したため、平成19年4月1日から制度が設けられました。この一般拠出金は、賃金総額に一般拠出金率(1000分の0.02)を乗じて算出します。

労働保険料を納めなかったらどうなる?

労働保険は、事業所に対して加入が義務づけられているものです。労災の発生や従業員の失業といった事態に備えて、企業は責任を果たさなくてはいけません。 保険の手続きを怠ったり、所定の保険料を納めなかったりした場合には、さかのぼって保険料を徴収されるだけでなく、追徴金も発生しますので注意しましょう。

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