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2019年05月22日(水)

コンプライアンス研修とは?企業におけるコンプライアンスの重要性、効果的に社員教育をする方法を詳しく解説

経営ハッカー編集部
コンプライアンス研修とは?企業におけるコンプライアンスの重要性、効果的に社員教育をする方法を詳しく解説

昨今では、「コンプライアンス」という言葉があちらこちらで聞かれるようになりました。悪事千里を走るという諺がありますが、ネット社会の進展にともない不祥事が一気に広まって、企業経営に大きなダメージを与えるという事件が頻出するようになっています。こうしたコンプライアンスへの危機意識の高まりから、「自社でもコンプライアンス研修を導入しなければ」と考えている方も多いのではないでしょうか。そこで、コンプライアンス研修がこれほどまでに重要視されている理由や教育すべき内容について解説します。

 

コンプライアンス違反は経営にかかわる問題

コンプライアンス意識が高まっているのは、コンプライアンス違反のリスクが非常に甚大であることが理由です。最近では、1人のアルバイトがほんの軽はずみで行ったことが、インターネットを通じて拡散され会社経営を揺るがす事態となることも珍しくありません。

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、もともとは「法令遵守」のことを指すとされていました。しかし今日では、法令だけでなく、企業の就業規則から社会規範に至るまで、さまざまなルールを守ることがコンプライアンスの意味だと考えられています。企業にとって、社会的な倫理に則りルールを守ることがリスク回避になり、企業の信頼を積み上げ、ひいては企業価値を高めることにつながるのです。

コンプライアンスが叫ばれる背景

コンプライアンス意識が高まり始めたのは、高度経済成長期に公害問題が発生し、企業の社会的責任が問われるようになったことがきっかけです。その後2000年代に入り、有価証券虚偽記載や粉飾決算など上場企業による不祥事が相次ぎます。これを受けて、公益通報者保護法や改正独占禁止法、会社法、金融商品取引法などの法整備でコンプライアンスの取り込みが急速に進みました。近年では、個人情報の漏洩や、著作権違反、店舗の従業員
のSNS投稿が炎上して、閉店に追い込まれるケースなども続発していることから、あらためて「コンプライアンスとは何か」「企業の社会的責任とは何か」が問われるようになってきています。

コンプライアンス違反になるケース

コンプライアンス違反は以下のようなケースが該当します。社内での行動だけでなく、私生活上の行動も重要視されているところがポイントです。

不正会計 粉飾決算、脱税、補助金の不正受給など
知的財産権の侵害 特許侵害、違法コピーなど
独占禁止法・下請法違反 カルテル、談合、下請けいじめなど
反社会的行為 贈賄、総会屋・反社会的勢力への利益供与など
雇用・労働問題 サービス残業、過労死・過労自殺、不当解雇、偽装請負など
各種ハラスメント セクハラ、パワハラ、マタハラ、アルハラなど
情報漏洩 個人情報や機密情報の持ち出し・紛失、インサイダー取引など
環境汚染 産業廃棄物の違法投棄、土壌汚染、CO2排出量の不正申告など
私生活上の不正行為 飲酒運転、ストーカー行為、痴漢行為、大麻や覚せい剤の使用など

 

コンプライアンス違反で企業が受けるダメージは大きい~2017年の関連倒産は195件

上記のような問題が明るみに出ると、SNS等で拡散されるばかりか、マスコミにも取り上げられて大々的に報道されたりします。そうすれば、これまで築き上げてきた企業に対する信用の失墜や、ブランドイメージの低下は避けられないでしょう。また、経営陣の管理責任を問われ、引責辞任せざるを得なくなることも考えられます。

最終的には、経営状態が悪化し、倒産のリスクにもさらされることになりかねません。実際、2017年度には法令違反や脱税などのコンプライアンス違反が一因となった倒産が195件発生しています。(商工リサーチ「2017年度『コンプライアンス違反』倒産」

コンプライアンス研修は従業員全員必須~知らなかったでは済まされない

ルールから逸脱した行為を未然に防ぎ、コンプライアンス意識を高めるために必要なのが、コンプライアンス研修です。そのために、研修はアルバイト、一般社員から経営層まで、全従業員に受けさせることが求められますが、階層別に研修を行うことでコンプライアンスの重要性をより自分事として捉えやすくなります。

新入社員・一般社員、従業員クラス向けの研修のポイント

新卒や中途で入ってきた社員や一般社員は、コンプライアンスの基礎知識や違反リスクについて知ることが求められます。コンプライアンスの意味やコンプライアンス違反が及ぼす社内外への影響などについて研修を行います。同時に、個人情報保護や情報セキュリティ、SNSの取り扱いについてもプログラムに組み込むと良いでしょう。アルバイトの場合はマニュアルや導入研修にもれなく盛り込む必要があります。

ある都内の大学で学生に調査したところ、アルバイト経験も含めて社会との接点が少ない学生ほど、法令違反への罪悪感が低いという結果が出ました。若年層は自分の行動が社会的にどのような影響をもたらすかといった経験も少ないため、悪気なく行動してしまうという傾向があります。したがって、物事を知っている前提で接しないほうがリスクを防ぐことに繋がります。

主任・係長クラス向けの研修のポイント

主任や係長クラスとなった中堅社員は、コンプライアンスの基本とともにコンプライアンス違反の未然防止、リスクへの対処法について学ぶことが大切です。CSRへの取り組みやリスクマネジメント方法を学び、いざというときに上司と部下との調整役として立ち回れることが望まれます。

しかし、やらされ感で研修を受けても記憶に残らないため、法令や社会的倫理、規範を守ることが企業の価値向上につながるという関係性を十分理解させる必要があります。

部長クラス向けの研修のポイント

部長クラスでは、コンプライアンス研修内容を部門内に定着させる方法や、組織的な問題解決方法を知ることが大切です。自らが責任者を務める部門で、コンプライアンス研修の内容を部下に自分事として認識させ、コンプライアンス違反リスクをコントロールできるようになることを目指すように動機付けが必要です。

部長クラスになると、外部の意見を参考にするよりも、長年の経験から培ってきた判断を優先しがちです。経験が豊富なほど企業特有の価値観や、業界常識が身についており、それが守るべき規範だと思い込んでいることがあります。それが法令や世の中の常識と乖離している場合は修正する必要があります。

経営者・役員クラス向けの研修ポイント

経営者・役員クラスでは、企業の社会に対する責任や法令に関する知識を習得するとともに、社内コンプライアンスの構築方法について学び、社員のお手本として自ら実践できることが求められます。

パワハラ、セクハラに至っては本人にその自覚がなくとも、従業員の受け止め方によって成立してしまうため注意が必要であることや、コンプライアンスの元になる社会的倫理を重視する企業文化の醸成も重要であることを理解する必要があります。

コンプライアンス研修のプログラム例

では、コンプライアンス研修では、どのようなプログラムを実施すればよいのでしょうか。ここでは具体的なプログラム例を数例あげてみましょう。

コンプライアンスの基礎知識

  • コンプライアンスとは何か・意識が高まってきた背景
  • 身近に起こりうるコンプライアンス違反の例
  • 同業他社で過去に起きた違反事例
  • 違反の結果どのようなリスクや波及的な被害が発生する可能性があるか
  • コンプライアンス違反の予防策     など

法令知識

  • 個人情報保護法
  • 労働基準法など労働関連法
  • 独占禁止法・下請法
  • 金融商品取引法
  • 道路交通法
  • 上記以外の自社の業界における業法   など

違反事例のケーススタディー ~個別事例の研究

  • コンプライアンス違反が起きた背景
  • 違反により起こった損失
  • 社会へもたらした影響
  • 再発防止策  など

社員として求められている振る舞い、行動

  • 国民、市民としての倫理規範
  • 地球環境、地域社会、株主、取引先、顧客、従業員などステークホルダーに対する振る舞い
  • USBなどの記録媒体や社用PCの取り扱い方
  • SNSへの投稿がもたらす企業への影響
  • 社員間のコミュニケーション方法
  • ハラスメントや差別への対応方法  など

自社で行われているコンプライアンスの取り組み

  • 経営理念
  • ミッション
  • 行動規範
  • リスクマネジメント
  • コンプライアンス意識の向上  など

内部通報制度と通報の仕方

  • 内部通報制度とは何か
  • 社内でコンプライアンス違反行為を見たときの通報方法
  • 通報窓口
  • 通報者への保護   など

仕組みづくり

相談窓口

コンプライアンス研修の方法

コンプライアンス研修を行う方法はいろいろありますが、ここでは代表的なものを3つ取り上げ、ご紹介します。

集合研修(セミナー形式)

集合研修は、最も一般的な方法です。受講対象となる社員を集め、外部から招いた講師あるいは社内の研修担当者が講義を行うものです。経営者や役員クラスは外部講師、それ以外は社内の従業員が研修をするケースが多く見られます。講師の体験談を通じて、リアリティーのある話を直接聞くことができる点がメリットです。また、直接質問することができることによって、その場で理解を深めることができます。

ケーススタディーとケースメソッド(ワークショップ形式)

ケーススタディーとは、実際にあった過去のコンプライアンス違反事例について解説を聴くもので、集合研修の中でも用いられますが、事例について深く学ぶ方法としてはケースメソッドという方法もあります。ケースメソッドとは、過去の違反事例について自ら研究し、同僚や上司とディスカッションなどを行います。ケーススタディーが講師の話を受動的に聴くにとどまるのに対し、ケースメソッドでは自ら主体的に考え、参加者同士でコミュニケーションしながら学びを深めることに違いがあります。

イーラーニング

社内のイントラネットなどにアップされている動画やコンテンツを見て、自主的に学ぶものです。イーラーニングでは個々の社員が好きなタイミングで研修を進められます。また、わからないところを繰り返し学習できるので理解を深めることができる点もメリットです。

しかし、実際には観ていなかったり、頭に入っていなかったりすることもあるため、テストなどで理解度をチェックする仕組みを用意する必要があります。

まとめ

現代は誰もが手軽にインターネットで情報発信ができる時代です。その分、軽はずみな気持ちでしたことが拡散され企業に甚大な影響をもたらすだけでなく、悪意ある誰かが企業を陥れるための確信犯的行為に及ぶことも考えられます。そこで、企業の社員には、仕事上だけでなく私生活での振る舞いにも十分な注意を払うことを求める必要があります。
そのため、コンプライアンス研修の意義は、今後ますます高まってくるでしょう。また、こういった事態がおこらないよう法令を守るといった観点からだけでなく、その元になる倫理感や良識を育てるリベラルアーツ教育などを並行して行うとコンプライアンス研修の効果はいっそう高まります。

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