人事管理システム導入の際に気を付けておきたい3つのポイント
新しい人員の募集から採用、教育、配置、昇進、賃金をはじめとした処遇を通じて、企業を発展させるために社員という人的資源を有効に活用するための施策を「人事管理」と言います。
従来の日本企業では終身雇用や年功序列など独特のスタイルを維持してきましたが、これまでに随分と様変わりしてきました。年齢や役職によってキャリアパスが変わるのではなく、あくまでも社員の能力重視で役割や配置を決め適正な給与を支払うようになってきているのです。
さらにクラウド化が進む現代では、人事管理は人事部だけのテリトリーではなく、必要な立場の社員が情報を共有し、全社一丸となって発展を目指すためのものに変わりつつあります。
人事管理システムの基本的な機能
人事管理システムの基本的な機能には、社員の給与や勤怠、人事評価などを管理するいわゆる「通常業務システム」と、タレントマネジメントなどと言われる教育や配属などを企業の戦略に合わせて管理する「戦略人事システム」の二つがあります。
給与や勤怠、人事評価などの通常業務システムはすでに長く根付いているものですが、比較的新しく注目されているのが戦略人事システムと呼ばれるものです。人事管理システムの中で、従来からの通常業務システムの場合、利用するのは基本的に人事部の担当者であり、定型業務を効率的に処理することが重視されますが、戦略人事システムは人事部以外にも現場のマネージャーから役員、経営者まで、多くの人からより幅広く多角的に利用されます。
利用目的は単に業務の効率化だけでなく、たとえば、人事データベースの情報を使って人材配置や個人のキャリアパス形成をサポートしたり、人件費や要員分析、各種シミュレーションをおこなったりするなど、経営者や現場マネージャーの戦略立案や意思決定に役立てることです。
人事管理システム導入のメリット・デメリット
人事管理システムは、うまく導入すれば多大な恩恵を企業に与えますが、デメリットも理解し正しく活用できるようにしておきましょう。
人事管理システム導入のメリット
社員が能動的にシステムを活用し始めると、個々の能力や意欲を適切に把握することができるようになり、人事管理の質が大いに高まります。
人材配置や組織化もより適正になり、企業が本来持つ潜在的な力を発揮させやすくなるでしょう。適切な教育プログラムの実施、定期的な目標設定と達成度の確認、現在の自己評価と不足点・改善点の申告など、社員個々の状況に配慮した仕組み作りと運用が可能になります。
人事管理システム導入のデメリット
人事管理は個人情報のセンシティブな取り扱いを求められます。企業全体として秘密保持と情報漏洩への意識を常に保たねばなりません。高い効果が期待できる人事管理システムではありますが、システム導入だけで満足するのではなく、活用する社員と管理者が意義をしっかりと認識していることが前提です。
主に環境面や利用者の意識面で考えられる注意点をクリアし、長期的視野でじっくりと「会社と人」を育てることできれば、人事管理システムは企業にとって意義がある投資となってきます。
人事管理システム導入における2つの注意点
人事管理システムの導入にあたり、気を付けたい2つのポイントについて整理しましょう。
導入目的の明確化
システム導入にあたっては、人事・給与業務を強化したいのか、受注から生産・販売・人事に至るまでの一貫した総合パッケージが必要なのか、という目的意識をハッキリさせるところからスタートしましょう。人事業務の中でデータベースを一元管理して、通常業務が効率化できれば良いのか、データベースをさらに戦略的に活用していきたいのかも明確にします。
特に現在注目されている人事管理システムは、社員の能力を適切にマネジメントするためのツールですから、ツールの効果を最大限に得るために利用者の理解を求める目的から導入前研修を実施するなど、システムを迎え入れる準備が求められます。
システム導入によって、給与計算や勤怠管理といった通常業務では人海戦術では起こりやすかったミスやエラーを圧倒的に減らすことができます。さらに適切な配置や育成、組織化などで、これまでは個人の勘や印象に頼りがちだった人材管理を合理的におこなうことが可能になり、会社と社員ともに満足度が高まっていくでしょう。
人事管理システムの選び方
圧倒的に種類が豊富な人事給与システムに比べると、人事管理システムは選択肢が限られているように見えますが、検討項目を押さえれば自社に必要なツールを正しく選ぶことができます。
<クラウド型であること>
人事管理システムの場合は、個人情報を大量に扱うことや、企業戦略上の重要情報も含まれてくることから、自社内管理にこだわる企業がありますが、管理コストの高さやメンテナンスの手間という問題があります。
これに対してデータセンターにソフトウェアやデータベースを預けて運用するのがクラウドコンピューティングですが、最近はデータセンターでの管理のほうが災害や事故、その他のトラブルに対して自社内サーバーよりも堅牢と考えられ、また管理コストについても低減することができます。
社員全員が能動的に人事管理システムを利用できる環境作りを考えると、これからはクラウド型のシステムであることが望ましいでしょう。
<サポート体制>
人を評価したり管理する業務では、情報の取り扱いには常に慎重であることが求められますし、便利なツールでも慣れるまでは扱いに苦労する可能性もあります。利用インストラクターやカスタマーサポートの充実度を目安に、自社に合わせた運用を提案・サポートしてくれるスタッフがいるサービス事業者を選びましょう。
利用開始はユーザビリティを確認してから
以上の2つのポイントについて安心できそうであれば、いよいよ導入に向けて具体的に動き出しましょう。まず初めにおこなうべきは、無料体験期間や体験会等を利用してのユーザビリティの確認です。どんなに有能なシステムであっても、少しでも使い勝手に違和感があれば導入後の運用が負担になり、期待した効果が得られません。双方向システムであればこそ、幅広い社員が利用することになるので、誰にとっても使いやすいことは重要です。
自社に合った人事管理システムが導入できれば、社員のスキルやモチベーションの向上に絶大な効果を発揮するでしょう。