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2019年04月18日(木)

クラウド会計ソフトと監査の今後の在り方を考える「クラウド監査勉強会」初開催の模様をレポート

経営ハッカー編集部
クラウド会計ソフトと監査の今後の在り方を考える「クラウド監査勉強会」初開催の模様をレポート

「freeeエンタープライズ」のリリースにより、個人事業主や中小企業のみならず、上場企業や上場準備企業まで、急速にユーザー層を拡大している「クラウド会計ソフトfreee」。そのトレンドに伴い、AIを活用した監査の新しい手法は、会計・監査法人業界からも大きな注目を集めています。このような状況において2019年3月20日、監査法人を対象にした初の『クラウド監査勉強会』が開催されました。

本勉強会では、太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社 公認会計士・税理士 武藤敦彦様より、クラウド会計時代における監査の在り方についてお話しいただくと共に、スタディプラス株式会社 CFO 中島花絵様と株式会社キャスター CFO 平川秀年様による利用者対談を実施。監査業務を効率的・効果的に進めるための情報発信や意見交換が積極的に行われました。その流れを追いながら、当日の内容をご紹介します。

目次

開会のご挨拶 freee株式会社 金融事業部長/公認会計士 武地 健太

武地:本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。freeeエンタープライズプランがリリースされ、2年が経ちました。私が入社した当時はこのプランがなく、まだスモールビジネスの中でも小さいsoho向けのサービスでした。この2年間に、報告書や内部統制3点セットなどを着々と開発して、上場企業や上場準備企業さんにも使っていただけるサービスになってきた考えています。特にベンチャーキャピタルからの資金調達額トップ100の会社のうち、40社以上がfreeeを使っていただいています。

若手で経験した3つの「つらかったこと」

私が監査をしていたのは10年ほど前で、まだ若手でした。当時と今の監査手法は違うと思いますが、今思えば、つらかったことが3つあります。

1つ目は、資料をお願いするのがつらい。「またですか」とイヤな顔をされることが多く、そう言われると思って、ちょっと違うものをお願いをしたら、「去年そんなの出してません」と言われ…。じゃあどうすればいいの?という話なんですが、精神的にけっこうつらい。

2つ目は、資料を待っている時間が手持ち無沙汰。繁忙期に資料をお願いしたら、何も出てこないで1日座って待ってるという。繁忙期なのに座って待っている時間が長いだけとか、よく分かりませんが(笑)。いずれにせよ生産性が下がる。

3つ目は、私がいた大阪事務所はクライアントが小さいので、1日に複数の往査先に行くことがありました。午前中はA社に行って、午後にB社に行って。移動時間がものすごくもったいないなあ、と思っていたんです。

従来の問題点は、クラウドで自動的に解決できる

こういった問題点は、クラウドで自動的に解決します。freeeだと、取引の内容をクリックすると証憑までさかのぼれる。かつ、どこでも作業できるので、事務所の中である程度きちんと付け合わせてからアポイントを取ることも可能になります。当時若手の会計士補だった私から見てもすごく効率化できるなというのは、入社してすぐ思いました。そういった便利な機能は、今後もどんどん増えていきます。実際、freeeの監査法人の方から「わかりやすい」「使いやすい」「チェックしやすい」というレビューをいただいており、監査法人側からも相当メリットがあるなと感じています。

今日は、監査でどのようにクラウド会計を使うのか、どれくらい内部統制チェックができるのかといった点についての解説や、実際利用している会社様のディスカッションなどを予定しています。フィンテックベンチャーの未来像もイメージできると思いますので、最後まで楽しんでいただければと思います。ありがとうございます。(会場拍手)

クラウド会計時代における監査の在り方 太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社 公認会計士・税理士 武藤 敦彦さん

クラウド会計のゴールを握るのは監査法人

武藤さん:皆様よろしくお願いします。私はこういった会をいつか実現したいと、ずっと思ってきました。エンタープライズプランが2017年にリリースされ、いわゆるクラウド会計がどんどん発達していく中で、おそらくゴールを握っているのは、監査法人の皆様だと思っています。

私も会計士で、太陽有限責任監査法人で金商法会社法の監査やIT監査、IPO支援などをしていました。2017年に今の太陽グループのアドバイザーズに入り、今IPO支援をしています。特にIPOの環境でいくと、やっぱり太陽にいたっても、正直なところご依頼のある会社様すべてをIPOに向けて監査法人が引き受けるというのは、今難しい状況になってきています。それはやはり、働き方改革や人手不足の影響があるからだと思っていまして。IPO支援をやっていると、もう少し会計士の側で協力できる部分があるんじゃないのかなと思っています。

相変わらず「紙での処理」が多かった会計監査

2008年に会計士になるまでは、小さな会計事務所で記帳代行をしていました。弥生や勘定奉行などを使って、ひたすら起票をやっていたんですね。その時感じたのは、経理業務って同じ処理の繰り返しだな、ということです。よく経理の人が勘定科目コードや補助科目コードを全部頭に叩き込んで、数字だけ入力するというやり方をしますが、それができるということは、同じ処理の繰り返しなんですよね。その時代にパッケージシステムの導入支援もやっていましたが、取引から仕訳に行く時に人手が必要というところは変わらなかったな、と思っています。その後、監査をするようになっても相変わらず、紙での処理が多いなと感じていました。

ITの進化と会計システムの歩み

ITの進化と会計システムの歩みを見ていきましょう。いわゆる帳簿をまとめるという意味の会計は、江戸時代の大福帳からあったんですよ。複式簿記が明治時代に伝わったという話も聞いたことがあります。現代になって1972年、ここで電卓が出てくるんですね。これまではおそらく、監査でもそろばんを使っていたのでしょう。1980年くらいに、PCAや奉行、弥生などのパッケージシステムが導入されてきました。

私の感覚だと、このようにパッケージシステムになっても、やっぱり紙のやり方をひきずっているなと思っていて。紙で伝票をつけて、元帳にして、試算表にする一連の流れをシステムの中に落とし込んだだけのイメージです。そのため、この時期に会計システムパッケージが出てきても、手で仕訳を入力する時代がずっと続くんですよね。その後、1995年にWindows95が出て、1997年にグーグルや楽天がセッティングされ、2010年あたりからAWSが出てきます。

この辺の時代はずっと、もともとデータだったものをわざわざ紙にして、そして仕訳している時代が続いています。なぜかというと、請求書にせよ契約書にせよ、コミュニケーションの手段が紙だからなんです。これを解決するためには、システム同士をつなげる必要があります。ただ、大企業ならいざ知らず、これからIPOをする規模感の会社がシステム同士をつなげるのは、なかなか難しかったと思います。

では監査はどうだったのか。監査の現場でエクセルを使うようになったのは、だいたい2000年くらいでしょうか。5年くらいかけて現場に浸透していったんじゃないかと想像しますが、私たち監査の現場でエクセルを使いだしたのさえ、比較的最近のことだと考えられます。

会計士業界の取り組み

業界の動向はどうだったのでしょう。今年の1月31日に出たIT委員会研究報告第52号「次世代の監査への展望と課題」を読まれた方は?あ、いらっしゃいますね。こんなことが書いてあります。

「AIを含むITの進化は、公認会計士の仕事の喪失を招くというよりは、自動化の進展によって大量の証憑突合といった比較的単純な作業から公認会計士を解放し」

これ、実感として非常によくわかるんじゃないかと思いますが、その後なんですよね。

「判断の根拠となる情報について AIなどを活用して効率的に収集することを可能とすることによって、むしろこのような高度な判断といった公認会計士が注力すべき仕事を行うための時間を生み出し、 監査の価値の向上に寄与すると考えられる」

こういう言い方って、ウチの業界にけっこう多い気がするんです。上がすごく分かりやすいのに対して、下はなかなか腹落ちがないというか、パッと分かりにくい。次のページで、もうちょっと具体的に書かれているところを説明したいと思います。

システムの発展

「中小企業を中心に導入が進むクラウド環境を利用した会計システムを取り巻く最近の流れと、今後の方向性について概説するとともに、新しい会計システムが監査に与える影響についても検討していきたい」

これが公認会計士協会で議論されているわけです。クラウド会計ソフトに共通する特徴や、クラウド会計ソフトを導入するとこんなメリットがありますよ、ということが書いてあります。会計業務に係る時間及び費用の削減。ソフトウェア投資の削減。非常に安く済むというところがメリットになっています。最後に、課題が書いてあります。情報セキュリティに対するリスク。通信環境への依存。自動化によるリスクというのが書いてあったんですが、これを見て、監査人として一番ドキッとしたキーワードは、「自動」ではないでしょうか。

どこが「自動」か

freeeを開けると、「自動で経理」のところに今、未処理がこれだけありますと数字が出てきます。ここをクリックするとどうなるのか、何が起きるのかと。こういうところを正確に理解する必要があると私は思います。自動といっても様々あるんですよ。僕の後輩なんかも「手で押す自動ドアは自動じゃないんじゃないか」と言っているくらいで(笑)。私たちはもうちょっと、「自動」という言葉をちゃんと理解しなければならないと思うんです。

自動は4つに分けられます。まず「A」は、過去の仕訳などから内容を推定して出てくると。請求書の内容だったり、通帳のデータから「これじゃないですか」ってポンと出てきて、最後に経費記帳者が起票する。

「B」は、例えば銀行の通帳の中の内容や、請求書内のデータから「こんな仕訳じゃないですか」と推定してくれて、最後に経理担当者が起票すると。

「C」は、過去の仕訳や会社があらかじめ設定したルールに従って仕訳を推定して、人が介在しない。いつの間にか仕訳ができあがると。

「D」は、社内決算の内容や会計基準、他社の動向や過去の仕訳や過去の監査法人の指摘などを踏まえて、人の手を介さず自動で仕訳ができる。これが夢の世界。こんなことも自動の一部なんじゃないかと思うんですよね。

52号から話をすると、まだロジックベースのAIと書いてありますが、完全に自動化といっても、何か全知全能のAIが人間のような思考でやるというよりは、おそらく過去の見える情報に基づいて仕訳を切るところまでが、今のところ自動仕訳の限界じゃないかなと思っています。

クラウド会計ソフトの監査への効用

今の自動仕訳以外にも、クラウド会計ソフトの監査の効用というところで、まずクラウドだと、設定の自由度が非常に高い。例えば、監査の事務所にいながら監査をして、証憑突合などもできる可能性があります。あとは、ワークフローと仕訳が紐付いている。さっきわざわざ手で稟議番号を入れるという話がありましたが、こちらはもともと紐付いているような設定がされている。そして、会計システムの中で仕訳に対するコメントを記載して回答をやりとりしたり、銀行やクレジットカードの情報がダイレクトに会計ソフトに読み込まれたりする。これは今後、非常にメリットが出てくるんじゃないかと思います。もちろん、仕訳の変更履歴なども直接確認できます。

まだまだ紙、その紙の延長のエクセルをベースにした監査があるかと思いますが、残念ながらそういった監査より先に、どんどん会計システムの方が進歩しています。freeeの機能も日々進化していくんです。リアルタイムに変わっていくんですね。

その一方、監査はどうでしょうか。相変わらず紙でやっているし、わざわざ証憑を見るために出張することもあります。試算表などは会社の人にメールをして、電話をして、会社の人が出力して、パスをかけて送るということって、まだまだあると思うんですよね。そこで、クラウド会計ソフトに対する理解を私たちが深めていき、逆に私たちの側から「会計ソフトはこうあるべきだ」と提案できるくらいになっていくべきなんじゃないかと思っています。

今日ここにお集まりの皆さんがゴールを握っていると言いましたが、まだまだつかみ切れてない現状もあるのではと思っています。そういった意味で、私たちがfreeeに対して、またクラウドソフトを作っている会社に対して、監査側の視点で情報発信していくことが非常に大事だと思っています。ありがとうございました。(会場拍手)

freee エンタープライズ の概要と取り組み freee株式会社 公認会計士/税理士 プロダクトマネージャー 高木 悟

高木:私のパートではfreeeエンタープライズプランの概要と取り組みなどをご紹介したいと思います。実は私も会計士です。もともと3年ほど監査法人におり、会計監査、内部統制監査をしていました。今はサポートやマーケティングなどを経て、主に製品開発に携わっておりますので、「開発者の生の声」という形でお伝えできればなと思っております。

【Section 01 会計freeeの概要】

最初に、全体の概要をお話ししたいと思います。。freeeの最大の特徴は、クラウドのERPソフトという側面があり、会計と経理を一体化しているということです。

皆様、内部統制監査でご経験があると思いますが、例えば、「この仕訳がこの稟議から上がってきています」「この経費精算から仕訳が起こっています」など、いわゆる会計の仕訳の一歩前の一次情報として経理業務があると思います。そういった経理業務もfreeeの中にすべて入って、かつ、それがすべて仕訳と会計帳簿とつながるというコンセプトです。経理と会計を一気通貫することで、転記作業が不要になり、ワークフローもすべてコミコミで使っていただけるERPソフトというというのが特徴です。

ですので、例えば、ワークフローが別システムでその転記作業が発生したり、別システムがゆえに監査の時に会計じゃなくて他の帳票を依頼しなければいけなかったり、そういったところが非常に軽減されます。まさにこういった点が、監査と非常に相性がいいところだと感じています。

また、ひとつの端末にインストール・保存され、その端末でしか利用できないということはありません。クラウドなので、いつでもどこでも誰でも、スマートフォンでもログインできて、どの機種でも使えます。

わざわざ資料をもらうためだけに会社に行くといったことは不要になり、会社側が監査法人にアカウントを共有して監査法人が見る、という形でクラウド上でスムーズにやりとりができますので、非常にメリットを感じていただけるのではないかと思っています。消費税や低減税率の対応もすべて自動でバージョンアップされます。

会計freeeのプランの中で、おそらく皆様が直接かかわるのはエンタープライズプランかと思います。その特徴は、内部統制です。例えばSOCレポートやワークフローの機能、ログなど、そういった内部統制に必要な機能がすべて入っており、上場にも対応できます。

【Section 02 監査対応や内部統制におけるfreeeの取り組み】

SOC1報告書 type2を受領

ここからは、監査対応と内部統制の弊社の取り組みをご紹介したいと思います。弊社は先日、SOC報告書のtype2を取得いたしました。もしこのSOCレポートが無いと、委託会社の監査人の方は、freee社を直接監査しなければいけないという手間が出てしまいます。今回SOCレポートを取りましたので、委託会社監査人の方はSOCレポートを直接見ることで、freee社の監査を行うことなく効率的に行うことが可能になり、安心してご利用いただけます。

SOCレポートのスケジュール

今年取得した分は、去年の4月1日から12月末のものです。毎年更新していきますので、2019年の1月1日から2019年の12月末日のものについても来年取っていきます。それ以降は1年ごとという感じです。また例えば、「監査スケジュール上、1月1日から3月末が空白期間になってしまうんですが、どうしたらいいですか?」というご質問もあると思いますが、弊社の中でロールフォワード手続を行いまして、ブリッジレターを皆様にお出しすることが可能です。エンタープライズプランをご利用の方であれば、どなたでも無料で配布しております。

内部統制3点セットの開発

「内部統制のフローをどうやって構築したらいいんですか?」というご質問もあるかと思います。freeeを使ってどうやって内部統制を回していくかというテンプレートとして、freeeを使った時の内部統制3点セットのテンプレートなども開発しております。

すべての会社様に共通しているものではないとは思いますが、あくまで一般的な例として、「売上売掛金プロセスでfreeeを使うとこういうプロセスになりますよ」「ここでこういうfreeeの機能を使って統制が回せますよ」といったフローチャート、RCM、業務記述書などもご用意しています。freeeをご利用いただいて「統制をどうしたらいいかわからない」という方も、テンプレートとして自由にご利用いただけます。

【Section 03 freeeエンタープライズ 導入事例】

次はエンタープライズプランの導入事例を2社ご紹介したいと思います。ソウルドアウト株式会社様は、弊社のエンタープライズプランをご利用いただいて、初めて上場いただいた事例です。まさに上場半年前にfreeeに変更いただきまして、無事IPOの審査に通られて、上場されました。

2社目は、本日会場にいらっしゃっているGA technologies様です。内部統制対応の面で、経理担当側によって審査用の資料を作られていたところが、freeeの中で一気通貫になり、監査対応などの工数を削減されました。実際にfreeeをご利用いただきIPOされています。それ以外にもご紹介したい事例がいくつかございますので、ご質問いただければと思います。

【Section 04 事前に頂いた質問への回答】

type2の取得時期やブリッジレターの発行時期などは検討できますので、監査スケジュールに合わせて最大限協力させていただきます。お気軽にご相談いただければと思います。

仕訳テストについては、仕訳帳のエクスポートが可能になっております。仕訳テストに必要な作成日や更新日、承認日など、必要なカラムがすべて仕訳帳のエクスポートのCSVファイルに中に入っておりますので、皆様の法人内で仕訳テスト用のツールがあると思うんですけど、そちらに弊社freeeからエクスポートした仕訳帳をインポートしてご利用いただくことが可能です。

ファイル出力は、調書を作るときサンプリングなどに必要だと思うんですけども、試算表や月次推移、固定資産台帳、支払い依頼など、おそらく必要な機能に関してはすべてCSVでエクスポートが可能ですので、調書作成やサンプリングだと、CSVを使ってご利用いただくことも可能です。

「AI月次監査はどこまでの条件を抽出できるんですか?」というご質問も多数ありましたが、柔軟に設定できます。金額や勘定科目、消費税区分、備考抽出など、いろいろできますので、本当に簡単なチェックであれば、すべてAI月次監査内で行っていただくことが可能になっております。

クライアントの方からfreeeに関するご相談があった場合は、弊社のメンバーからクライアント様にご紹介することも可能です。もしご案内が必要な場合はお気軽にご相談いただければ、アポイントメントなど調整させていただきます。私のパートは以上です。ありがとうございました。(会場拍手)

freeeエンタープライズ 利用者対談 スタディプラス株式会社 CFO 中島 花絵さん 株式会社キャスター CFO 平川 秀年さん

高村(モデレーター):ここからは、freeeエンタープライズ利用者対談ということで、スタディプラス株式会社CFOの中島様と、株式会社キャスターのCFO平川様にご登壇いただきます。モデレーターはfreeeの高村です。ではお願いします。まず経歴と自己紹介をいただいてもよろしいでしょうか。

中島さん:スタディプラス株式会社の中島と申します。よろしくお願いいたします。私は2004年から8年まであずさ監査法人におりまして、その後2008年にカカクコムに転職し、去年までIRや経理部長などをしていました。当社は上場準備をしているところで、去年からfreeeを使わせていただいています。

高村:ありがとうございます。平川さんお願いします。

平川さん:よろしくお願いします。私は2006年12月に、あらた監査法人に入りました。約10年ほど会計監査や財務アドバイザーを努め、2015年5月にGA technologiesに転職しました。そこで上場準備を進め、去年の7月25日にマザーズに上場いたしました。これを1つの区切りとして、また新たに上場準備態勢にシフトをしていく会社にジョインしたいなというところで、2019年2月から現在、キャスターのCFOをやらせていただいております。

freeeと出会ったのは、GA technologiesの時でした。その時にエンタープライズプランを入れたという経緯もあり、今はキャスターでもfreeeへの移行手続きをして、徐々にfreeeでやらせていただくということになります。

高村:2人の共通点は、監査法人ご出身で、事業会社に移られてfreeeへの移行を経験されているというところです。なので監査法人側と、事業会社で監査を受ける側の2つの視点で、クラウド会計をどう見ているのか、ざっくばらんに語っていただきたいと思っています。それではトークテーマをいくつかピックアップしてお話をうかがいます。

【一般企業に移って視点や意識はどう変わった?】

高村:まずはそれぞれ監査法人にいらっしゃった時は、会計ソフトに対する認識はどうだったのか、移られてからその認識が変わったところはどこかをお聞きしたいと思います。

freeeは会計の「共通言語」

中島さん:監査法人の時は、会計ソフトをあまり気にしていませんでした。これまでも会計システムはいくつか経験しましたが、どんな会計システムを使っているのかというのは、事業会社側では経理の人しかあまり知らない。そもそも会計システムというものは、「経理だけが使う遠いもの」っていう感覚ですね。

スタディプラスでは今、全社員がfreeeを使っています。ワークフローシステムに紐付いていて、そこから仕訳までつながっているので。全社員がfreeeのアカウントを見て、レポートも全社員に公開して、月次の試算表も全部公開して、キャッシュの動きも全部社員に公開して。今は会計士ともfreeeが共通言語ですし、社員や他部署ともfreeeが共通言語になっている形ですね。なので一般企業での会計システムの見方は、それぞれ違うなという印象です。

高村:なるほど。平川さんはいかがですか?

「経理業務はルーティン」という意識が変わった

平川さん:経理業務自体は、四半期で締めて、短信作って、報告書を作って、年度は当然締めて、取締役会の月次資料を提出してと、いろいろやることがあるのですが、けっこうルーティン業務だなと思っていたんです。ところが、企業が成長していく中で、事業内容を把握していないと仕訳を間違えたり、よくあるのが消費税区分を間違えたり。いろいろなところでタイムリーな情報をキャッチしなければならず、かなりルーティンじゃない業務の部分があるなと、意識が変わったというのがありますね。

高村:ありがとうございます。監査法人側にいらっしゃった時はそういう事業会社の経理の大変なところや、つまずいているところというのは、実際に認識されていたんですか?

平川さん:認識がなくて。「請求書をちょうだい」って言えば、みんな耳をそろえてくれるだろうと思っていたんですけど、意外にそろえるのは大変だと、事業会社に行って分かりました。

なぜかというと、いろいろな部署で発注しているので、請求書がいろいろな部署に届いちゃうんです。経理側に一発で請求書が届いていれば、もれなく仕分けられるんですけど、別部署に届いていて…みたいな部分があるので、その請求書を集めるのでも一苦労だったな、というのがありますね。

経理オペレーションの問題点

中島さん:freeeを入れる前は、逆に請求書が来ても何の請求書かわからないですよね(笑)。仕訳が切れないのは、けっこう普通にある印象です。

高村:それで締めが遅れて「提出する資料を早く出して」っていう声があるのを、私も営業する中でよく伺います。事業会社の視点からすると、それでつまずいて遅れることが、やっぱりあるものなんですか?

中島さん:事業会社からしてみると、当然PLを締めるのは大事なんですけど、やっぱり支払いが大事なんですよね。でも、25日払いのものをなぜ7日に出して、10日締めにしないといけないのかっていうのを伝えるのが難しい(笑)。25日払いだと「25日のちょっと前に経理に渡せば支払ってくれるから」っていう考えが、事業会社にはすごくあるので。

高村:オペレーションやフローをしっかり作っていくというのは、事業会社の視点からすると思った以上に大変だし、必要だということを実感されていらっしゃると思います。

【会計ソフトにfreeeを選んだ理由・決め手】

高村:次のテーマに行きます。freeeを選んだ理由と、導入してみて実際どうなのかを教えてください。

「イケてるSaaS」同士がつながり、人を呼ぶ

中島さん:会計ソフトにfreeeを選んだのは前のCFOです。導入されたままになっていて、私の時にちゃんと使い始めたんですけど(笑)。ただ、私が思うfreeeを入れた理由は、実はイケてるサービスだからなんですね。

というのは、まずバックオフィスのメンバーを集めるにあたって、やっぱりイケてる人たちを集めたいわけですよ。「freeeが使えます」とか「freeeを習得したいです」という人を入れたいんですね。「今までの会計の知識でPCAを使えるから」っていう人を採用したくないので、あえてfreeeでいける人を探しますっていう。やっぱりそういう感覚を持っている人たちは、いろいろな業務改善もできるので、自分のキャリアアップで業務改善をやっていきたいという人を集めるためにも、大前提でイケてるクラウドサービスが必要。

さらに、イケてるSaaSがつながっていくんですよ。当社は、freee for SFAも入れたんですけども、営業の販管システムとfreeeを連携させて、そのAPIが用意されているんですね。それで、営業が受注したものをfreeeに流して請求書発行をして、そのまま計上までつなげているんです。やっぱりイケてるSaaS同士はつながっていくので、まず積極的に使う。それを理由に人を呼んでいくっていう循環をやりたくてfreeeを入れたのが1番大きいですね。

あとは、やっぱり柔軟な働き方ができるんですよね。育児中でもいろいろな場所で柔軟に仕事ができるクラウドサービスが、バックオフィスに限らずともすごく重要になってきます。

高村:ありがとうございます。平川さんはいかがですか?

クラウドが新しいワークスタイルを創り出す

平川さん:前職でも2名ほど「freeeやっているんだったら触ってみたい」と入社を決めてくれたメンバーがいました。また、自社内で作っているさまざまな管理ソフトとの連携は、freeeが良いんですね。社内ツールとkintoneを使って、freeeが連携して、というような形で。freeeを入れると今までバラバラだった作業が、一気通貫で会計まで結びつくところが決め手です。でも実際のところは、ただ単純に前職の社長が雑誌を見て「アプリで経費精算をするのがカッコいい」ということで入れたっていう部分もありますね(笑)。

CFOって結局は、会計数字に跳ね返る数字の入り口をどう見ていくかだと思うんです。当時課題であったのが、離職率と採用費の高騰でした。離職の原因としては、育児休暇に入ってそのままフェードアウトしてしまうこと。働き方の多様性がないと、採用コストもかさみます。そこでfreeeのクラウドサービスを使うと、育休中も仕事ができる。逆にいうと、育休を取らない働き方もできるんです。

一般事業会社って、育休取得を嫌がる方も多いんですね。なぜかというと、会社の成長が早すぎて、半年間休むと全然ついていけないので。だから、育休を取らなくてもいいような会社で働き続けたいと。freeeのおかげで離職率が減り、採用コストを抑えられて、結果としてそれが財務数字に跳ね返るという最終的なCFOの仕事ができたのが、freeeを選んだ大きな決め手です。

高村:人材確保の面でも大きかったわけですね。

【freeeで監査や監査対応はどう変わった?】

高村:では実際にfreeeに変えてみて、監査のやり方やコツがどう変わり、上手く活用できているのかを深掘りできればと思います。中島さんはいかがですか?

事務的な作業が減り、コミュニケーションが取りやすく

中島さん:単純に、依頼資料が半減しましたね。依頼資料リストのうち半分くらいが「勝手にfreeeで取るのでいらないです」みたいな。あとは、実際にfreeeのアカウントを渡して見てもらっているので、すごくコミュニケーションが取りやすいですね。

高村:アカウントをお渡しして、全部見てもらえるようになっているということですね。

中島さん:そうなんですよ。今後、会計士用のアカウントがID限定なしに無料公開されることを期待しています(笑)。

高村:積極的に検討していきたいと思っています。初めから監査担当の方が、アカウントに複数名いらっしゃるんですか?

中島さん:そうです。なので実際に必要な監査の往査の日数は減っていると思います。

高村:平川さんはいかがでしょうか?

平川さん:仕訳とエビデンスがセットになっているというところと、監査法人の方もそれをリアルタイムで見られるというところで、当然エビデンスの請求が大幅に減ったというのは、ありますね。

高村:まずクラウドでアカウント招待をして、監査法人用のゲスト権限を作ってお渡ししていらっしゃるという使い方ですよね。それで往査が減って、お互いのコストが減ったと。

武藤さん:おそらく会計士様の権限なので、編集ができなかったりとか?

中島さん:そうですね。仕訳はもちろん切れないでいるんですけど。当社は「レポートは全部見られるけど仕訳は切れない」という権限を全社員に発行していて、それを会計士さんにもお渡ししています。

高村:エビデンスというのは請求書などの証憑ですか? それとも稟議とかワークフロー、承認履歴といったところも、というイメージでしょうか?

稟議の情報をすぐに得られるのも大きなメリット

中島さん:両方ですが、会計士さんは何らかの形でエビデンスを入手されていると思うんですよね。それが楽になりました、という差が大きいという話です。加えて、freeeだと稟議の情報がちゃんと見られるというところ。ここは意外と皆さんやっていないんじゃないかなと思っていて。経理の人からヒアリングすると思うんですよね。でも実際に現場の人が書いている稟議書なんて見る機会がないと思うんです。そこの本当の情報をワンクリックで取りに行けるというのが、けっこう大きいんじゃないかなと思います。

武藤さん:経理の人だけが監査対応をするというだけではなくて、アカウントを持っている人はみんな監査法人に見られるんだよっていう目線になっていくということですよね。

中島さん:まだそこまでの緊張感はみんなにはないですけど、そういうことになりますね。

【freee導入企業を監査する上でのポイント・コツ】

高村:freeeを運用する上でのコツとやポイント、工夫点などがあれば教えてください。平川さんいかがですか?

平川さん:運用という意味では、権限付与でフルオープンにして、把握できない情報だけ我々にヒアリングしてきてくださいという形にしています。「取りたい情報を自由にとってください」というような形ですね。

武藤さん:それは不安がありませんでしたか? 全部見られてしまうというところに対して、何か把握されていないような情報があったりとか。

平川さん:やましいことは無いので大丈夫ですね(笑)。

コメント機能でコミュニケーションコストを削減

中島さん:freeeって、仕訳の時にコメントを付けられるじゃないですか。私と経理担当とのコミュニケーションでは、コメント機能は利用頻度が高いです。「月次締まりました」って言われて、この仕訳はちょっと違うなと思ったら、コメントに入れて渡しているので、同じことが会計士さんのところでもできるかなと思っています。コミュニケーションコストをすごく減らせる気はしますね。

武藤さん:そのコミュニケーション自体も、監査で見られるわけですもんね。

中島さん:そうですね。

高村:クラウドを使ったコミュニケーションルールを事業会社側と監査法人側で整備しておく、というのがポイントでしょうか?

中島さん:そうですね。コメントで最初に質問を投げておいていただければ、その分早く監査が終わるんじゃないかなと思います(笑)。

【クラウド会計ソフトで今後の監査はどう変わる?】

高村:クラウド会計ソフトが進化するとともに、今後の監査はどう変わっていくのでしょう?

経理にアクションする最初のきっかけが監査法人側に

中島さん:やはり期中監査、「interim」の意味がガラッと変わるということが圧倒的に大きいですよね。今はfreeeにログインすれば、いつでも見られるわけなので、月次締まりましたっていうのを毎回そのタイミングで全部見られる。そこでコミュニケーションが生まれますよね。特殊なものが入ったら、もうそのタイミングで経理担当とコミュニケーションを取っていくことができますし、取れる情報が効率的になるのもそうなんですけど、かつ往査しなくても情報が取れる。

つまり、経理へのアクションにおいて、監査法人が最初のきっかけを持てる。本当に会社と食い込んだコミュニケーションが取れる。そのように監査のやり方が変わってくると思っています。

高村:平川さんはいかがですか?

制限をかけられていた部分が常にオープンになっていく

平川さん:タイムリーな情報がいつでもどこでも取れるっていうのが大きいですね。経理側が情報をクローズしていて、時期が来ないとオープンにしてくれないなど、今まで制限をかけられていた部分が、常にオープンな状態になって解消される。監査を行う手段が幅広くなっていくのかな、という印象ですね。

武藤さん:繁忙期っていう見方があるじゃないですか、この業界って。それが少し緩和されていく可能性があるのかなという。今の人不足などの問題解消に、少しでも貢献できる部分があるんじゃないかなと思っています。

高村:いろいろなお話を聞かせていただきありがとうございました。

閉会のご挨拶 freee株式会社 CEO 佐々木 大輔

今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、いろいろなことをお伝えさせていただくとともに、皆さん同士でいろいろな気づきを持っていただく場にできればと思って開催いたしました。

今まさに、グローバルな監査法人レベルでAIに大きな投資がされ、いかに監査業務に活かしていくかという研究が行われています。その中で、クラウドの会計ソフトとして果たせることは非常に多いと思っていますし、その領域自体も切り開いていくと、そんな気概で私たちはやっております。

もともと私がfreeeを作りたいと思った原体験は、以前、ALBERTという会社のCFOだった時のことです。その当時はまだ未上場で、上場準備の初期段階を私が担当しておりました。私自身はそういった管理部門の経験がないままその役割をやったので、「仕訳帳にプリントアウトしたハンコを押すんですか?なにそのプロセス」のようなことがある度に、非常に憤りを覚えたんです。

そもそも経理自体のプロセスも、どこに発注して、いくら発注する予定だったのかが稟議書に書いてあって、同じ数字が書かれた請求書をまたExcelに打ち直して、さらに今度は、それをいつ支払って、資金繰りの管理のために別のExcelに同じことを入力して、会計ソフトにも同じように入力して、さらに振り込むときにはインターネットバンキングに同じことを入力して。こんなことをやっているから、経理の業務が複雑化し続けるんじゃないかと。

これらを1本で扱う仕組みが作れるだろうし、そうしたら内部統制上も、圧倒的に効率化されると同時に、経営もリアルタイムに見られるだろうと。「こんなに一石何鳥も得することってないんじゃないの?」というようなことを当時思い描いたのが原体験になっています。

ですので、会社の立ち上がりとしては小さなビジネスで、本当に簡単に使えるようにといったところをコンセプトとしています。今でもそれは主翼の部分ではあるんですけれども、エンタープライズプランといった形で稟議から移管させ、さらにそこで内部統制を担保し、リアルタイムで形を見られるようにする、というところも同時に実現します。エンタープライズプランをリリースしてちょうど2年になりますが、この領域への進出は、私自身もすごく思い入れを持ってやってきました。SOCレポートを本気で力を入れて取ってきているというのも、そういった私たちの思い入れの表れであると思っております。

そういった取り組みが実って、いろいろな上場企業のみなさん、あるいは上場準備企業のみなさんから、本当に喜びの声をいただいている状況です。私たちは日本において、クラウドの業務アプリケーション業界の中でも先駆けとなる存在で、徹底的に日々改善していくことを胸に刻んで取り組んでいます。このクラウド会計の分野は、本当に優秀なエンジニアが取り組むのに値する面白い領域を秘めています。今日ご紹介したAI月次監査といったものも含めて、新しいテクノロジーを本当に魅力的な形で作っていくことに成功している会社だと自負しています。

業界の中でも圧倒的に優秀なエンジニアが集まっている集団が、日々機能の改善に力を入れ、年間で300件近くの改善のリリースをしている。ほぼ毎日、freeeの機能が進化していることからも、今後のご期待をいただきたいなと思っています。監査法人さん向けの取り組みというのも、私たちは本気です。そこで今後のアナウンスを2つさせていただければと思います。

1つは、こういった勉強会を継続的にやらせていただきたいと思っています。東京だけではなく、関西エリアなどでも開催していきたいということを今検討しております。単純に私たちが伝えるということだけではなくて、有意義な情報交換の場にしていただくことを目標に進めていきます。

もう1つは、監査法人様向けのプラン体系をしっかり作っていきたいと思っています。監査法人さん側からもご利用いただけるアカウントを優待して提供させていただくですとか、本日ご案内させていただいたAI月次監査をもっと監査法人様側からもご利用いただけるように進めていきたいと思っております。

このような形で、私たちは日々進化しておりますし、今後も力を入れていくといったところを私自身もコミットしている領域ですので、今後の成長にぜひご期待いただければと思います。本日はご清聴いただいただけではなく、いろいろ発信もしていただいたと思います。お集まりいただき、本当にありがとうございました。(会場拍手)

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