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2022年02月18日(金)

【チェックリスト付】決算早期化を効率的に実施するための10項目

経営ハッカー編集部
【チェックリスト付】決算早期化を効率的に実施するための10項目

決算早期化を進める中で欠かせないのが、いかに決算業務を効率的に行うかです。決算早期化の目的やメリットを振り返りつつ、後半では、月次決算に役立つ業務チェックリストをご紹介します。現在の業務状況と比較しながら、活用できるヒントがないかを探してみてください。

決算早期化とは?

決算早期化は、「決算処理を早期に実施すること」です。特に、月次決算は的確な経営判断を行うためにも非常に重要です。自社の状況をより短いスパンで迅速に把握するためにも、四半期決算や年次決算と比べ、より短期間での処理が求められます。

 一方で、企業によっては社内フローが属人化しているために工数が膨大化していたり、早期化への意識や意義が組織内に浸透してなかったりするケースが少なくありません。そのため、決算早期化にこれから取り組む企業は、効率化に向けた対策を実施しながら問題と向き合う必要があります。

 

月次決算の目的

決算早期化をシステム化する重要性を理解するためにも、「月次決算が果たす目的」を知る必要があります。月次決算は、年次決算とは異なり、必ず行わないといけないものではありません。しかし、各社がそれでも月次決算を実施するのは次の目的があるからです。

  • 現状把握と今後の経営判断
  • 年次決算の準備負担の軽減
  • 金融機関への資料提出がスムーズになる

月次決算を通し、自社の経営目標に対する予測とその乖離が速やかに把握でき、会社の経営状態を健全に保つことができます。四半期決算や年次決算といった、ロングスパンの決算を作成する負担が軽減されるのも月次決算を実施する利点です。節税対策の検討にも活用できます。

また、金融機関に融資などを申し込む場合、直近の経営状態を開示するよう求められる場合があります。月次決算をしっかり行っていれば、外部から求められた段階で書類が提出でき、会社としても焦りません。

 

決算早期化を実施するメリット

ここからは、月次決算を早期化する4つのメリットをお伝えします。
 

現状把握と対策の検討が速やかにできる

やはり一番は、経営状況の把握から改善策検討、実施までを経営陣が迅速に決定できることです。いくら月次決算を実施しても、検討したいタイミングで情報がなければ意味はありません。鮮度の良い情報を届けるためには、決算早期化が重要です。また月次決算が安定して実施されれば、キャッシュフローと損益の実態や各部門間の業績理解など、年間計画とズレを生じていないか含め、常に把握できます。

昨今は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、部署に関係なく業務のオンライン化が求められています。経営判断が滞らないよう、ツールを用いた時間の節約は一考の余地があります。
 

現状の決算業務を見直すきっかけになる

決算早期化は、決算業務を見直すきっかけにもなります。 迅速に進めるためには、ボトルネックとなる要素を把握し、業務の無駄を排除する必要があるからです。 これは結果として社員の負担軽減にもつながります。また、業務のフロー化は、人的ミスの早期発見にもつながります。特に手作業などマンパワーに頼るアナログな手法で業務を行っている場合、ツールを取り入れることで、担当者の労力とコストが大幅に削減できる可能性があります。
 

外部機関からの信用・評価につながる

金融機関など、外部に融資を申し込んだ時、速やかに月次決算を提出できれば、財務管理体制が健全であることをアピールができます。 行動から伝わる安心感は、印象向上にもつながります。投資家に向けた信頼性のある情報を発信する一つの方法としても有用です。
 

無駄な業務を失くし、必要以上のコストを削減

月次決算を早期化するためには、現状の無駄な業務を減らす必要があります。それは、業務だけでなく、実務者の作業軽減にもつながります。業務速度がアップすれば、残業代の削減や必要以上の人件費など、コスト削減が可能です。

しかし、ただ業務をツールに置き換えただけでは、得られる効果は限られます。どの業務をどれだけツールで置き換えたら社員の業務効率化につながるのかを必ず検討しましょう。ツールを提供する企業へ使い方をヒアリングするだけでも、より一層の効果が期待できます。

 

決算の早期化を効率的にするための「チェックリスト」

決算を早期化するには、日々の業務をチェックリスト形式で管理することが大事となります。次回の月次決算からチェックしてほしい10項目をfreeeが運営する「会計の基礎知識」の記事からご説明します。

【決算の早期化を効率的にするためのチェックリスト10項目】
  1. 現金預金残高の確認
  2. 棚卸資産の確認
  3. 仮払金と仮受金の振替
  4. 経過勘定の計上
  5. 引当金の計上
  6. 減価償却費の計上
  7. その他年間支払費用の月割計上
  8. 貸借対照表がマイナス残高になっていないか確認
  9. 貸借対照表の借方と貸方が一致しているか確認
  10. 前年同期の決算書と増減を比較

出典:「月次決算の方法と手順を知り、経営分析に役立てよう」| 会計の基礎知識 freee

 

1. 現金預金残高の確認

まず、手元にある資金の現状から把握しましょう。銀行口座や金庫などから、月末残高を確認します。残高が帳簿における現金預金の勘定残高と一致しているかを調べ、差異がある場合には原因を特定の上、帳簿を修正してください。
 

2. 棚卸資産の確認

棚卸資産とは、企業が販売目的で保有している商品や製品、材料などです。月次棚卸を実施している場合、社内にある棚卸資産が帳簿残高と一致しているかを確認します。棚卸の実施が半年や年1回など月次以外の場合、商品に関する記録を元に、正しい月末残高を記帳してください。
 

3.仮払金と仮受金の振替

仮払金とは、交通費や交際費などの経費を従業員に予め支払ったお金です。仮払金は、使用項目や金額が確定した段階で正しい勘定項目に振り返る必要があります。そのため、当月に精算した仮払金や確定した仮受金の振替を忘れずに行いましょう。また、入金や支払いミスがないも必ず確認してください。
 

4. 経過勘定の計上

経過勘定とは、当月の支払や受取と計上すべき収益や利益のタイミングにズレが生じた場合、調整を行うことです。代表的な勘定項目として、「未払費用」「未収収益」「前払費用」「前受収益」があります。当てはまる項目に経過勘定として計上してください。なお、月次決算中に届いた請求書の未払計上が漏れやすいため、忘れずに計上しましょう。
 

5. 引当金の計上

引当金とは、将来発生する可能性のある費用や損失に備えるための資金です。賞与や退職金、建物の修繕費などが当てはまります。年間の賞与や退職金に係る引当金を年次決算で計上する場合、年間計上額の12分の1を計上してください。
 

6.減価償却費の計上

減価償却とは、長く使う高額な資産を、徐々に費用にすることです。一般的に10万円以上の資産が該当します。一定期間にわたり費用を計上し、資産の価値を徐々に減額させます。なおこの期間を耐用年数といい、資産によって異なります。減価償却対象の固定資産があれば、年間の減価償却費を月割り計算し、計上してください。
 

7. その他年間支払費用の月割計上

各種保険料(生命、損害、労働など)や固定資産税など、年払や数カ月に1度の支払費用がある場合、月次決算にて月割計上してください。
 

8. 貸借対照表がマイナス残高になっていないか確認

ここまで手続きが完了したら、貸借対照表を見直します。貸借対照表はバランスシート(B/S)とも呼ばれ、決算日時点での財政状態を表す書類です。資産、負債、純資産から企業の純資本と総資本が可視化されます。もし、勘定項目の中にマイナスになっているものがあれば、記載ミスしている可能性があるため、1〜8の項目を見直しましょう。
 

9. 貸借対照表の借方と貸方が一致しているか確認

決算書における貸借対照表(B/S)の借方と貸方が同じ金額になっているかを確認します。借方は、B/Sの左側の項目で、会社が所有する資産を表します。一方、右側の項目は貸方は、事業に必要な資産をどのような方法で調達したかを示します。借方と貸方が一致しない場合にも、1〜8の項目を見直し、どこで差が生じているかを確認してください。
 

10. 前年同期の決算書と増減を比較

月次決算を一通り終えたら、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の単月と累計を、前年度と比較します。数値的な変化を観察するのはもちろん、その月ならではの変化がないかも観察してください。通常と異なる変化が生じている場合、「実は記載ミスだった……」という可能性もあるので、最後まで油断しないようにしましょう。

 

まとめ

決算早期化を効率的に進めるためのツールとして、チェックリストの活用をご紹介しました。定期的にリストの内容を見直すことで、より業務に則した内容に変化します。3カ月や半年に一度など、一定の周期でリストを改善しながら、月次決算を行いましょう。

 

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