連結決算が義務となる上場企業とその条件
多くの上場企業が採用している決算方法の一つが、連結決算です。本記事では、親会社と子会社の関係を始め、連結決算書作成に向けた手順をご説明します。最後に連結決算の業務簡略化に向けた準備として、今日からできることをまとめております。現状の課題と照らし合わせながら、最後までご覧ください。
連結決算とは?
連結決算とは一言で言うと「親会社を含めたグループ全体の決算」です。このグループには国内外の子会社、関連会社が含まれます。
連結決算が実施される背景には、企業実態を適切に投資家へ示し、投資検討の判断材料にしてもらうと言う狙いがあります。それは単独決算だけでは、グループ企業全体の現状を適切に把握することが困難だからです。
日本で連結決算が義務付けられたのは1978年3月期決算からです。しかし当時は単独決算が重視されていたため、連結決算の内容はほとんど開示されませんでした。それから2000年3月期決算から証券取引法(現在:金融商品取引法)のディスクロージャー制度が見直され、現在は連結決算中心の開示となりました。連結決算では、グループ全体の貸借対照表や損益計算書が連結財務諸表として開示されているため、誰しもが企業状況を適切に把握できます。
上場企業は連結決算の提出義務がある
会社法第444条によると、連結決算の提出義務がある企業は「有価証券報告書を提出している大会社」です(※1)。大会社は、資本金が5億円以上もしくは負債の合計額が200億円以上の株式会社を指します。また有価証券報告書は、上場企業が企業概要や事業の現状、財務諸表などを公開している報告書のことです。ここから、上場企業は連結決算の提出義務があると言い換えることができます。
親会社の定義
企業会計基準委員会によると、親会社とは「他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう)」と定義されています(※2)。つまり、グループ企業の意思決定を行う企業が親会社というわけです。
連結の対象となる子会社の条件
対して子会社は、親会社との支配関係にある企業であると定義されています(※2)。なお子会社の子会社、つまり孫会社も意思決定を行っているのが親会社であれば、その親会社の子会社と見なされます。
しかし、親会社の意思決定による支配を受けていないことが明らかな場合、連結対象から除外することも可能です。その判断は事業上の連携や売上など、財務、営業、事業の観点から総合的に判断されます。
参考
※1:会社法 第三款 連結計算書類 第四百四十四条
※2:企業会計基準委員会 企業会計基準第 22 号 連結財務諸表に関する会計基準P.3-P.4
連結決算の作成に向けた手順
ここからは連結決算を作成するための手順を3つのポイントでご紹介します。
1. 各社に個別決算を実施してもらう
まず、各社に個別決算を実施してもらいます。個別決算時に作成されるのが財務諸表です。財務諸表では貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書などが作成されます。決算連結を見据え、棚卸資産の評価方法など企業が選択適用できる会計上の処理(会計方針)は予め、グループで統一しておきましょう。
2. 各社の個別決算情報を回収し、合算する(結調整前財務諸表の作成)
子会社から財務諸表を回収し、得られた情報を合算します。これは連結調整前財務諸表と呼ばれます。併せて、グループ内での取引情報や購入した固定資産などの情報を共有してもらいましょう。これは連結パッケージと呼ばれ、連結修正に必要なデータを指します。次の3.で使用します。
3. 合算した個別決算に連結修正を行い、連結財務諸表を作成する
2.で得た個別決算の合算に対し、連結パッケージに基づき、連結修正を実施します。連結決算の場合、各社の個別決算を単純に合算するのではなく、親会社との取引を決算に反映する必要があるからです。この作業を経て完成するのが、連結財務諸表です。
決算連携実施に向けて親会社が準備できること
では、連結決算を円滑に実施するために親会社となる上場企業の担当者はどのようなことが準備できるのでしょう。ここでは3つの観点からお話します。
余裕と無理のないスケジュール管理
子会社も含め、多くの関係者を巻き込む業務となるため、親会社担当者のスケジュール管理がカギとなります。関係者とコミュニケーションを取りながら、事前の告知まで含め、双方に無理がなく、かつ余裕を持って進められるスケジューリングを心がけましょう。
業務フローの整備と簡略化
業務フローの整備と簡略化も滞りなく進める上で重要です。大まかなマイルストーンを上場企業の方で提示することで、子会社含め、そのフローで作業することができます。また慣例となっている業務の見直しを実施することで、業務自体の簡略化も可能となります。
決算業務にツールを導入する
連結決算においてグループで共通のツールを導入することも、決算業務の業務簡略化には有用です。各社の導入要件を確認、仕様などを統一する必要がありますが、導入後の業務負担が軽減されることを考慮するなら一考の価値はあると思います。
まとめ
連結決算を実施する担当者に向けて、連結決算のあらましから親会社として準備できることまで広くご説明しました。連結決算にかかる労力を最小限にしたい上場企業に向けて、freeeでは「クラウドERP freee」を提供しています。ツール活用による業務効率化によって、円滑な決算業務を実現しましょう。