2019年05月29日(水)1ブックマーク

上場準備の際におさえておきたい作業とスケジュール

経営ハッカー編集部
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 株式市場へ上場するための上場準備作業には、膨大な時間がかかります。
本記事では、上場準備が完了するまでのスケジュールや、監査の際に指摘されがちなポイントについて解説します。

目次

    上場にあたってなぜ準備が必要か

     上場申請をするまでには、上場準備作業で通常は数年を費やさなければなりません。
    さらに、申請直前の2年間の分の財務諸表について公認会計士または監査法人の会計監査を受け、監査証明が必要です。
     この会計監査を問題なく通過するためには、事前に内部の体制を整えておく必要があります。しっかり準備をしていないと、いざ監査が入った際に問題が見つかり、土壇場で多大な時間と労力をかけて対応する必要が生じてしまいます。

    上場準備に向けて必要な作業

     まずは、上場するという意志を固めます。
    そして、従来よりも高い社内規律と社会的責任を問われることになる「上場企業」となることへの従業員の意識を整えます。
     次に、上場準備プロジェクトチームを立ち上げます。プロジェクトチームは証券会社や監査法人の対応窓口や社内管理体制の整備、必要書類の作成などの上場準備全般を手掛けます。
     その後、主幹事証券会社および監査法人の選定を行います。特に主幹事証券会社は、上場後も密接な関わり合いを持つ最重要パートナーとなりますので、実績などをよく考慮して注意深く選定します。

    上場準備までのスケジュール

     上場までの準備期間のスケジュールをご紹介します。ここでは、準備期間を3年間としています。

    1.直前々期(3年前)

     監査法人が行うショートレビュー(予備調査・短期調査)による課題の抽出を行います。ここで、上場にあたっての自社の課題をすべて把握します。
     内部管理体制や会計管理制度を整えるとか、申請に必要な書類を準備するのもこのタイミングから始めます。

    2.直前期(2年前)

     直前々期と直前期の2年間の財務諸表(東証マザーズの場合は直前期のみで足りるなど上場市場によって異なる)について、公認会計士または監査法人による財務諸表監査を受けます。

    3.申請・上場期(1年前~)

     主幹事証券会社の審査・推薦を経て、取引所への上場申請を行った後、申請書類の審査、ヒアリングや事業関連施設の調査に対応しながら3か月程度で審査されます。
     内部統制報告制度にも対応する必要があるため、内部統制の構築と、評価・監査可能となるように内部統制の状況を文書化していなければなりません。

    会計監査を受ける際によく指摘される企業の課題

     監査法人による監査は、財務諸表の会計監査が主目的ですが、会計監査を行うにあたっては業務全般の詳細な調査が必要となります。会計や内部統制に関する規定は複雑で多岐に亘るため、万全な準備をしたつもりでも不備を指摘されることがあります。
     では、実際に監査を受けた企業が指摘されがちな不備や課題にはどのようなものがあるのでしょうか?具体的な例を7つ紹介します。

    1.会計の根拠資料が網羅的に保管されていない

     業界での慣習として、口約束だけで売上を計上するとか、従業員が自分の担当した納品書・検収書・請求書などの証憑を自分で保管している場合があります。この場合、本来はやり取りすべき書類が存在しないとか、証憑を個人が保管することで紛失のリスクも高まります。売上計上の妥当性を証憑で確認できない場合は、監査を進められなくなってしまいます。

    2.内容不明の勘定残高がある

     勘定残高内訳には「その他」の科目がありますが、内容が不明の場合は、解消しなければなりません。

    3.実地棚卸が不正確

     実地棚卸に関する従業員の理解不足や意識の低さ、マニュアルの整備不足などによって、実際の在庫数と帳簿上の在庫数が合わなくなってしまう場合があります。この場合は棚卸資産の期首残高が検証できなくなり、会計監査上の問題となります。

    4.在庫の受払記録が未整備

     実地棚卸をきちんと行っているので在庫の受払記録は付けていない、という会社もあります。この場合、監査人が実地棚卸に立ち会うことができれば受払記録が無いとしても監査対応が可能となることもあります。しかし上場するためには受払記録は必要不可欠のため、上場を目指す段階で速やかに体制を整えるようにします。

    5.固定資産管理体制が未整備

     固定資産の管理体制が甘いと、帳簿上の固定資産の所在が確認できなかったり除却漏れが生じたりします。実物と帳簿を合わせる作業を終了させないと、監査が進まなくなってしまいます。

    6.関係会社の連結範囲を確定させていない

     上場要件の中には子会社や関係会社に関する要件が細かく定められているため、連結範囲を明確にさせておく必要があります。自社の役員が別の会社のオーナーになっているとか、名目上は第三者が代表者になっているが実際は自社の役員が支配していると思われる会社など、どこまでが子会社・関係会社なのかがはっきり分からない場合は要注意です。監査の前に支配関係を明確にし、連結範囲を確定させておきます。

    7.連結決算体制が未整備

     親会社が上場する際には、子会社も全く同様の決算体制を整えていなければなりません。監査前に、すべての子会社の決算体制を確認しておくことも必要になります。

    まとめ

     上場の準備には、従業員の意識改革やプロジェクトチームの立ち上げ、自社内部の体制整備や証券会社および監査法人の選定が含まれます。
    実際に上場できるのは早くても数年後ですが、その間にするべきことは山のようにあります。早め早めに計画・行動するようにしましょう。

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