内部監査とは?目的や流れ、外部監査との違いを解説
日本における監査制度には、「内部監査」と「外部監査」の2種類があり、それぞれ監査方法や目的は異なります。
近年、規模の大きい企業では特に内部監査の必要性が高まっているとされています。本記事では、内部監査の目的や流れ、注意点や外部監査との相違点を解説します。
内部監査とは
内部監査はその名が示す通り、組織の内部の人によって行われる監査を指します。任意での監査となります。
一般社団法人日本内部監査協会の「内部監査基準」で定めるところによれば内部監査の広義は、「組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営諸活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度を持って評価し、これに基づいて客観的意見を述べ、助言・勧告を行うアシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務である」としています。
内部監査の最大の目的は、企業の発展に最も有効な改善策を助言、勧告し、さらにその実現を支援することです。具体的な支援内容には、事業活動の効率を高めるとともに従業員の規律保持や士気の高揚を促すことも含まれます。
企業、とりわけ大企業における不祥事は国内外で大きく取り沙汰される風潮があります。そのため企業内部の抱えるリスクや問題点を早期に発見・解決し、社会的な信頼を損なうことのないよう内情を整えておくためにも、内部監査の必要性が叫ばれています。
内部監査と違い、外部監査は一定の規模以上の会社に義務付けられた監査です。企業外部の第三者である専門家によって実施されます。法令によって様々な監査がありますが、会社法や金融商品取引法では一定の会社に対して公認会計士や監査法人が行う会計監査を受けることを義務付けています。それらは独立した公平な第三者として企業の財務情報について監査を行い、当該企業の財務情報の適正性を株主や投資家などの利害関係者に対して保証する役割を果たしています。
内部監査の流れ
内部監査の実施から完了までのおおまかな流れは次のようになります。
- 監査計画
- 予備調査
- 本調査
- 評価・報告
- フォローアップ
まずは、監査計画を立てます。自社の規模や複雑性などを考慮し、監査業務の範囲や監査チームが考慮すべき点などの方向性を定めます。対象範囲は、原則として自社のすべての業務活動が網羅されている必要があります。
また、リスクマネジメント・コントロール・ガバナンスプロセスの3点についての監査業務または診断業務が必ず含まれていなければならないとされています。監査チーム要員の選定もこの段階で行います。豊富な監査経験や公平性、洞察力や広く深い視野を持つ人員を配置することで、重大な虚偽報告や欠陥を見落とすという「監査リスク」を低く抑えなければなりません。
次に、予備調査を行います。これは本調査の1~2カ月前に行うのが理想とされます。監査対象の部門へ通知をし、必要な書類やデータの用意、部門責任者の同席を指示します。抜き打ちでも監査は可能ですが、効果的な監査には前述のような準備が必要になるため、効率面を考えても事前通知すべきです。抜き打ちでの監査は、不正会計などが強く疑われる部門などに関して行われることが多くなります。
そして、本調査が始まります。監査要点に関連する書類などをもとに監査が行われます。事前に計画した、企業・業種によって異なる要点を調査します。
接客販売業であれば、顧客対応や商品管理がマニュアル通り行われているかなど。倉庫業などであれば、在庫不足または過剰在庫の実態がないかなど。外勤営業を抱える部署では交通費・出張費などが正しく計上されているかなどを調べます。
この時点で、判明した問題点や改善の余地のある点などについて部門の責任者と話し合いを持ちます。
一通りの調査を終えたら、要点ごとに入手した証拠書類などに基づいて総合的な判断・評価を行います。結果は報告書として書面にされ、経営者および監査対象の各部門へ報告されます。
もし、改善すべき点が見つかったなら、その点をなぜ改善すべきなのか・どのように改善できるか・いつまでに改善したいと思うか回答を求めるなど具体的な指示をし、部門ごとに対応しやすいようにします。部門責任者は、指摘された点についての改善計画および結果報告を「改善計画回答書」などの形式で提出します。
こうしてすべての監査手続きが終了後、フォローアップとして改善されているかどうかを再調査します。タイミングとしては改善計画回答書の提出後すぐに行うこともできますし、次回の内部監査時の実施でも可能です。
内部監査を行う際に気を付けたいこと
内部監査において特に注意するべき点について、監査の流れに沿って説明します。
監査計画
この段階では、監査する要員の選定が行われます。この内部監査人の選定が、監査の成功を大きく左右すると言っても過言ではありません。通常は内部監査室や社長等が指名する内部監査人が内部監査を行います。監査結果の評価・報告また助言・勧告は、公正不偏かつ客観的な視点からのものでなければなりません。
そのため、対象となる部門についての権限や責任を負っておらず、組織的に独立しており精神的にも客観性を保つことのできる人材を内部監査人に選定することが重要なポイントとなります。
予備調査
予備調査の段階で、内部監査をする目的や手順、監査リスクなどの監査要点を正しく認識しておくよう注意します。たとえば「マニュアルに沿った業務が行われているか」が監査要点ならば、マニュアルにない事項についての監査は本来の目的から逸脱することとなり、時間と労力の無駄となってしまいます。
本調査
本調査では、監査要点の調査に必要な情報を質・量ともに十分用いて、識別・分析・評価を行います。
内部監査人はこの段階で、監査要点を調査するにあたって信頼性、関連性があり、かつ有用な情報を識別しなければなりません。内部監査人の識別力、公正不偏性、客観性が大いに試される段階となり、細心の注意が必要です。
評価・報告
評価および報告は、正確・客観的・明瞭・建設的・完全かつ適切なものでなければなりません。報告においては単なる結果報告にとどまらず、内部監査部門としての改善提案を明示することが重要となります。提案には、その必要性を裏付ける客観的証拠の提出が必要になります。
フォローアップ
フォローアップ時に改善が非常に困難と思える問題が見つかった場合には、内部監査人は原因を確認するとともに、解決について具体的な提案を行います。
しかし、企業として到底許容できないような問題を役員が許容している状況と判断した場合には、その問題に関してそれらの役員と討議することが必要になります。それでも問題を解決できないときには、それら役員および内部監査部門長は、最高経営者・取締役会および監査役会または監査委員会に問題を報告しなければなりません。
まとめ
内部監査は企業の内部で行われる任意の監査です。対して外部監査は、一定の規模以上の会社に対して義務付けられており、公認会計士や監査法人などの第三者によって行われる監査です。外部監査は、内部監査が適正に行われていることを大前提としています。
2つの監査の違いを理解し、目的にあった監査計画を立てましょう。