企業経営を支える「ERP」の定義と役割、商品タイプを知ろう
ERPの歴史と企業経営における役割
昨今、大きな注目を受けている経営支援システム「ERP」。 Enterprise Resource Planningの頭文字をとった略語で、企業(Enterprise)が保持している様々な資産(Resource)を全体的に管理し、経営に役立てる(Planning)ための支援ソフトのことをいいます。
30~40年ほど前までの企業経営は、会計から購買、在庫管理、人材管理に至るまで、多くは人力で行われてきました。その後、会計や給与管理のシステム化が徐々に進んでいきましたが、当時は重要業務から優先的にシステム化を行うのが一般的であり、在庫管理や人材管理などの情報と連動させていくにはまだ遠い状態だったのです。
企業の健康的な経営を実現するには、会計だけではなく販売や在庫などの周辺情報と常に突き合わる必要があり、企業経営に必要な情報を一元管理するという考えのもとに「ERP」というシステムが発展を遂げていきました。
ERPを導入した場合、予算や販売、購買などの財務だけではなく、販売のための企画やマーケティング、顧客管理に至るまでを一つのシステム内でトータルに管理することができます。ERPには「統合基幹業務システム」という和訳が付けられていますが、この訳語が表す通り、企業経営に欠かせない重要業務をオールインワンで運用することを可能にしたのです。
ERPの3つのタイプ
ERPには多種多様な業態に合わせた様々なソフトウェアが存在し、大きく3つのタイプが知られています。
全体最適型
企業経営において、例えば一連の生産ルートの効率を上げることを「部分最適」と呼びます。一方、生産ルートに至るまでの企画や受注体制、出荷後の管理や在庫管理などのプロセスの改善をトータルで目指すことを「全体最適」と呼びます。
全体最適型のERPは、営業・販売戦略・受注・生産・財務会計・人材管理・在庫管理・品質管理など経営に必要な業務をトータルカバーしたオールインワンタイプです。
コンポーネント型
一つの製品やサービスなどを成すための、最小単位の部品や成分などのことをコンポーネントと呼びます。
ERPにおけるコンポーネントは、営業・販売戦略・受注・生産・財務会計・人材管理・在庫管理・品質管理など、一つ一つの業務単位を指しており、この中の必要な要素だけをピックアップして組み合わせることができるのがコンポーネント型ERPの最大の特徴です。導入当初は財務会計・在庫管理部分だけを導入し、必要となった機能を後々追加してシステムの拡張を図ることも可能です。
クラウド型
特定のソフトウェアをコンピュータにインストールする必要が一切なく、IDとパスワードのみで即利用開始できるのが、ウェブサービスを基軸としたクラウド型ERPの最大のメリットです。
導入のための初期費用が極めてリーズナブルで利便性が高いため、高い注目を集めているタイプです。必要な機能だけの契約や追加拡張など、カスタマイズ可能な製品もあるため、柔軟性が非常に高いと言えます。
今後のERPに求められる役割
従来は別個の業務であった、営業・販売戦略・受注・生産・財務会計・人材管理・在庫管理・品質管理などの企業運営要素のデータを一元管理できるようにしたことは、ERPの大きな功績と言って間違いありません。一つの事象は全て周辺の事柄とつながって起こるものですから、単独業務だけに目を向け全体を見ることができなければ、企業の発展も足踏みしてしまいます。
営業戦略がなぜ受注につながったのか、素早く製品製造を進めて効果的に販売を行うには何をすべきか、自社の人材を適材適所で活用し、企業全体としての生産性をより高めるサイクルを作り上げる最短ルートは何かなど、各々のテーマ改善のためには「個々のデータと全体のデータを把握する」ことが重要です。また、常に利益を上げていくことが企業の責務であると考えれば、未来予測を欠かすこともできません。
企業が安定した経営を続けていくためには、各部署が作り上げる四半期ごとの正確な目標と具体的な行動予定を、未来の売り上げや仕入れ、経費などのより正確な予測データとして整理し把握することが大切です。今後ERPは、一元管理したデータを確実な未来予測に変換し、企業の経営管理を支えていく役割を一層大きく担っていくことになるでしょう。
まとめ
従来は人力で行われてきた企業の各業務をソフトウェアが代替して行うだけではなく、データを一元化することによって自社の強みと弱みを全体的に把握し、具体的な改善に臨めるようになったのは、ERPの功績によるところが大きいです。
物事を成功に導くためには、大きな流れを把握しながら細かい動きに修正を与えていくことが肝要ですから、ERPをうまく運用できた企業ほど堅実な成長を続けていくことができると言っても過言ではありません。
自社データをトータル管理できる「全体最適型」、必要な機能だけをピックアップして利用できる「コンポーネント型」、参入ハードルが低く機能充実度も高い「クラウド型」、いずれの入口からであったとしても、少しでも早くデータ一元管理のメリットを享受していくことが、企業の健全経営を維持していくための一つの道筋になります。