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2019年05月29日(水)

内部統制報告書を作成する際に必要な書類や記載項目

経営ハッカー編集部

内部統制報告書の意義

経営者は、財務諸表を作成し経営成績と財政状態を投資家に開示しますが、経営者自身が自らの都合のいいように粉飾決算をする恐れがあるため、会計のプロフェッショナルである公認会計士・監査法人が財務諸表を監査して、財務諸表の信頼性を確保してきました。

しかし、経営者による粉飾決算は後を絶たず、適切な財務諸表が作成されるためには、そもそも企業内に適切に財務諸表を作成できる体制があるのか、経営者自らが「財務報告に係る内部統制」を評価して「内部統制報告書」として開示することとされました。
あわせて、企業が公表した内部統制報告書自体が適切なものであるか、公認会計士・監査法人の監査を受けることによって、財務諸表の信頼性を確保していきます。

日本においては、金融商品取引法に基づき、上場企業は「内部統制報告書」を内閣総理大臣へ提出するよう義務付けられています。

財務諸表監査と内部統制報告書監査

内部統制報告書を作成するための書類

経営者は、財務報告に係る内部統制を一年間かけて評価し、その結果を内部統制報告書として報告します。内部統制報告書自体は、記載項目が定められた、簡潔な内容となっています。
しかし、内部統制報告書にその評価結果を記載するためには、さまざまな検証・評価を経ることになります。

例えば、各プロセスについて、どのような業務が行われ、そこにはどのようなリスクが潜み、そのリスクを内部統制がどのように低減させているのか、いわゆる3点セットという「フローチャート」・「業務記述書」・「リスクコントロールマトリクス」を作成します。さらにこうした3点セットに基づいて運用テストを実施し、その結果をまとめていきます。

これら一連の評価・検証手続により作成された書類に基づき、最終的に内部統制報告書が作成されるのです。

必要な記載事項

内部統制報告書

内部統制報告書では、次の5つの項目について記載していきます。

  1. 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項
  2. 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項
  3. 評価結果に関する事項
  4. 付記事項
  5. 特記事項

具体的な記載内容について、見ていきます。

1.財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項

経営者が、内部統制を整備・運用する役割と責任を有し、財務報告に係る内部統制について、内部統制の評価の基準に準拠して、その有効性を自ら評価・報告することを明らかにします。

  • 代表者及び最高財務責任者が、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の責任を有している旨
  • 財務報告に係る内部統制を整備及び運用する際に準拠した基準について、具体的な名称
  • 内部統制の固有の限界として、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある旨

2.評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項

経営者が行った内部統制の評価について、その評価範囲や手続を記載します。

  • 財務報告に係る内部統制の評価が行われた基準日・ 評価基準日は、会計期末日となります。
  • 財務報告に係る内部統制の評価に当たり、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した旨
  • 財務報告に係る内部統制の評価手続の概要
    会社が行った手続きのうち、評価範囲内における統制上の要点(財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点をいう )の選定など、財務報告に係る内部統制の評価結果に重要な影響を及ぼす手続きの概要を記載します。
  • 財務報告に係る内部統制の評価の範囲
    「財務報告に係る内部統制の評価範囲」及び「当該評価範囲を決定した手順、
    方法等」を記載します。

「財務報告に係る内部統制の評価範囲」としては、会社並びに連結子会社及び持分法適用会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から、必要な範囲を財務報告に係る内部統制の評価範囲とした旨を記載します。

「当該評価範囲を決定した手順、方法等」としては、財務報告に対する金額的及び質的影響の重要性を考慮し、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定した旨などを記載します。

また、連結財務諸表における売上高その他の指標の一定割合を基準として、重要な事業拠点を選定する際の当該指標及び一定割合、当該重要な事業拠点における企業の事業目的に大きく関わる勘定科目などについてもあわせて記載します。

なお、やむを得ない事情により、財務報告に係る内部統制の一部の範囲について十分な評価手続が実施できなかった場合には、その範囲及びその理由を記載します。

3. 評価結果に関する事項

内部統制報告書には次の4つのうち、いずれかの結果を記載し表明することになります。

  1. 「財務報告に係る内部統制は有効」
    評価の結果、重要な不足や不備はなく内部統制は有効であるとの判断です。
  2. 「評価手続の一部が未実施だが財務報告に係る内部統制は有効」
    やむを得ない事情により十分な評価手続が行えなかったとの判断です。 評価手続が未実施である理由も明示する必要があります。
  3. 「重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない」
    重要な不備があり財務報告に係る内部統制は有効でないとの判断です。
    重要な不備の詳細及び事業年度の末日までに是正されていない理由も明示します。
  4. 「重要な評価手続が未実施かつ財務報告に内部統制の評価結果の表明不可」
    重要な評価手続が実施できず財務報告に係る内部統制が評価できなかったとの判断です。 未実施の評価手続の内容と未実施である理由も明示します。

※3.の「重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない」について次の該当事項があった場合は、あわせてその内容を記載することができます。

  • 当該開示すべき重要な不備の是正に向けての方針
  • 当該方針を実行するために検討している計画等

4.付記事項

付記事項として、次の2点が該当します。

  1. 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象がある
  2. 期末日後から報告書提出までに重要な不備に対する是正措置を行った

基本的に、期末日後の後発事象は評価対象外となります。

ただし、事業年度の末日において、開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制が有効でないと判断した場合において、事業年度の末日後内部統制報告書の提出日までに、記載した開示すべき重要な不備を是正するために実施された措置がある場合には、その内容を記載します。

5.特記事項

特記事項は具体的に例示されてはいませんが、空欄にせず「該当事項なし」と記載することが求められています。

まとめ

内部統制報告書自体は、記載項目が決まっており、大変簡潔な内容となっています。

しかし、報告書は、一年間かけて財務報告に係る内部統制を評価した結果であり、その過程では、さまざまなテストを行い文書化したものに基づいて作成されたものとなっています。

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