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2020年02月10日(月)

ユニコーン企業とは?-イノベーションをけん引するユニコーン企業は日本で創出できるか

経営ハッカー編集部
ユニコーン企業とは?-イノベーションをけん引するユニコーン企業は日本で創出できるか

近年の世界情勢を見ると、FacebookをはじめとするGAFAなど米中のIT企業が世界経済を牽引しています。時価総額ランキングに関しても、上位陣はほとんど米中で埋まっており日本企業の入る隙など無い状況となっております。そういった現状を払拭しようと、昨年の2018年6月に閣議決定された政府の成長戦略として、日本から20社のユニコーン企業を新たに創出するJ-Startupというプロジェクトに注目が集まっています。本稿は、世界と対等に戦えるユニコーン企業創出を目指しています。

ユニコーン企業とは

ユニコーン企業の定義としては、未上場かつ企業としての評価額が10億ドルを超える急成長のスタートアップ企業になります。起業してから年数が浅いにも関わらず多額の評価額を得ている企業であり、潜在性や将来性の面も考慮して評価基準としています。ユニコーン企業と認められるもう一つの条件としては、起業してから10年が経過していないという点があります。かつて、Facebook社やTwitter社もユニコーン企業でしたが、既に上場し、起業から10年以上経過しているためにユニコーン企業から外れています。FacebookやTwitterのように時代に即した業種が高い評価を獲得しやすいので、ユニコーン企業は期待値を多く含めたベンチャー企業という見方も出来るのかもしれません。

ユニコーン企業が注目されるようになった背景

ユニコーンの命名はベンチャーキャピタリストのアイリーン・リーが2013年に発案したもので、成功したベンチャー企業における統計上の希少性を表すために、神話にも登場するユニコーンが選ばれました。ユニコーンの語源としては、ラテン語で「一つ」と「角」を合成した「一角の」という形容詞から来ており、世界各国の様々な文献にも登場し、唯一無二の存在として讃えられています。ユニコーン企業はベンチャーキャピタルを始めとする投資家から、ユニコーンのように希少で巨額の利益をもたらす可能性がある企業だとして注目されています。

ユニコーン企業とデカコーン企業

今や、300社を超えるまで数が増えているユニコーン企業の希少性は先述しましたが、ユニコーン企業よりも更に希少性の高いデカコーン企業というものが存在します。ユニコーン企業は10億ドル以上の企業でしたが、デカコーン企業は100億ドル以上の企業になります。デカコーンは10個単位という意味の「deca」と、ユニコーンを組み合わせた造語であり、ユニコーン企業より希少性は更に増します。更に、100倍という意味を持つ「hecto」を合わせたヘクトコーン企業という呼称も存在します。ヘクトコーン企業は評価額がユニコーン企業の100倍である1,000億ドル以上とされています。

ユニコーン企業の動向

世界のユニコーン企業の動向を見てみますと、調査会社CB Insightによれば、世界にあるユニコーン企業は237社あり国別のユニコーン企業は米国118社、中国62社とユニコーン企業の半数以上が米中に存在していることが分かります。米中ともに将来性があり期待値の高い企業から構成されていますが、米国のユニコーン企業の特徴としては、人工知能(AI)やビックデータ、医療、保険といった分野に特化していることが挙げられます。中国のユニコーン企業は消費や商業サービス業界に集中する傾向があり、中国の人口や現在の経済状況に起因していることが分かります。双方ともIoTの時代に沿った事業展開の内容であり、今後の経済発展の中核的存在になり得る可能性の高い企業が多いと言えます。

1.世界のユニコーン企業

ユニコーン企業というとスタートアップとしての印象が深いワードですが、既に我々の周りで知名度の高い企業が多数存在します。例えば、シェアリング事業を展開しており、配車サービスを運営するウーバーテクノロジーズ(Uber)は2009年3月に設立されており、ちょうど10年を迎えることになります。ユニコーン企業としての位置付けで存在していましたが、2019年5月に上場しましたのでユニコーン企業からは外れる結果となりました。ソフトバンクグループが傘下のビジョンファンドを通すことによって筆頭株主となっていることも、日本からの多くの注目を浴びる要因となります。Uberは日本では独自の規制によってあるべき姿への普及はまだ成し得ていませんが、米国にとってUberは無くてはならない存在となっています。
 
その他に米国のユニコーン企業として話題となっているのが、ロケットや宇宙船の開発・打ち上げ事業などを行なっているSpaceXです。SpaceXは新興企業にも関わらず低コストのロケットにて商業衛星市場で大きなシェアを獲得しています。
 
SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏は決済サービスを展開するPayPalの創業者であり、電気自動車やその関連商品、ソーラーパネルなどの開発・製造・販売を行なっているテスラ(Tesla)のCEOでもあります。近年でもかなり話題性を集める人物であり、最も影響力のある人物の一人となっております。
 
その他、今やスタートアップ企業には大変重宝されているコワーキングスペースを世界で運営しているWeWorkや、宿泊施設・民宿を貸し出す人向けウェブサイトを運営しているAirbnb、ウサマ・ビンラディン捜索に貢献したことで知られるパランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)など、様々な分野でユニコーン企業が進出しています。

2.日本のユニコーン企業

世界のユニコーン企業の動向を見ると、気になってくるのが日本のユニコーン企業の存在です。以前、日本のユニコーン企業としては、フリーマーケットアプリで一世を風靡したメルカリが代表として台頭していました。2019年4月時点のPCとスマートフォンの重複を除いた「トータルデジタル」でオンラインショッピングサービスの利用者数を見ると、メルカリは2,216万人と圧倒的な数字を出しており、日本では一人勝ちと言えます。ユニコーン企業としてはメルカリが代表格でしたが、東証マザーズへ上場したため条件から外れ、ユニコーン企業からは卒業しました。
 
現在のユニコーン企業ですが、実は現段階で2社存在します。一つ目はAIのディープラーニングによって制御技術の開発を行なっているプリファード・ネットワークス(Preferred Networks)になります。自動運転などに関連する交通システムや、物体認識や制御システムなどの開発なども行なっている次世代を支えるに相応しい企業となっております。企業の評価額は2,326億円と言われており、トヨタ自動車が出資したことでも話題となりました。もう一つの企業が仮想通貨を扱うプラットフォームである、仮想通貨取引所リキッド(Liquid)を運営しているリキッドグループ株式会社です。Liquidは日本でも数少ない金融庁の認可を受けており、適切な規制下のもとで運営が行われています。LiquidはこれまでにSBIグループやJAFCOなどの主要ベンチャーキャピタルから22億円以上の資金調達を行なっており、今後の日本における金融市場を大きく牽引していける存在になる可能性があります。

ユニコーン企業を作るために必要なこと

日本にユニコーン企業が少ない理由は、二つあります。一つはほどほどに大きな国内市場が存在するということです。年商数億クラスでも将来の成長が見込めれば上場することができます。これにより、国内で確実に通用するビジネスモデルを考える起業家が多いということになります。一方、米国においては英語圏の利点もありますが、最初からグローバル展開を目指したビジネスモデルを構想するためユニコーン企業が生まれやすいという背景があります。
 
もう一つの原因はスタートアップ企業を支えるリスクマネーの少なさにあります。近年のベンチャー投資意欲の高まりにより年間2,000億円まで拡大しましたが、米国は7兆円、中国は2兆円と莫大な資金を民間の投資資金が巨大ファンドに集まり、有望な企業に投資されるようになっているのです。近年の仮想通貨による資金調達で新たな事業展開への文化が花開く兆しもありましたが、詐欺行為が多発したなどの影響により、その道は閉ざされてしまいました。投資資金の流れを作るためには、大きなキャピタルゲインをもたらす成功例を数多く輩出していく必要があるのです。

ユニコーン企業の創出の可能性

ユニコーン企業を創出するに当たってまず挙げられるのが、類を見ない独特なサービス展開をしていくことです。まだ存在していない新しい価値を生み出すサービスであれば、多くの人の目に留まりやすいですし資金調達も難易度が低くなります。
 
仮想通貨取引所のように今後の可能性が目に見えて分かる事業内容であると、更なる資金調達や不必要な競争に巻き込まれることなく市場の独占が可能となるのです。そして、大きく展開していくに当たって不可欠なのが、グローバル展開を視野に入れておくことです。日本市場は大きなマーケットですので日本の展開のみで十分という声もありますが、ユニコーン企業の大半は米中にありますし、彼らの価値観や優秀な人材を徐々に取り込んでいかなければ日本企業の未来はないと言えます。
 
ここで注目されるのが、大学発の技術になります。生命情報科学の分野では、論文の海外からの参照も多く高い技術を有しています。しかしながら、大学と産業界の接続はうまくいっていません。そこで、世界市場がある分野であるなら、最初から世界展開のビジネスモデルを描き、大学と、大企業と、アントレプレナーの経営チームを組成し、役割分担をすることにより、ユニコーンを創出することは十分可能でしょう。

政府のJ-Startupの取り組み

日本から世界にも通用する企業を創出していくには、企業が進化していくための環境作りも必要不可欠となるため政府との連携も重要視されます。そこで、経済産業省は「世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目的としたプログラム」としてJ-Startupをスタートさせました。日本のみならず海外展開も視野に入れており、関係省庁とも連携して集中的なサポートをしていきます。また、現在のスタートアップ企業をサポートするだけではなく、新たなスタートアップ企業を生み出すことにも注力しています。J-Startup選定企業の第一弾として、日本のスタートアップのエコシステムで実際に活躍する中心人物を推薦委員とし、集中支援する企業92社を抜粋して選定しました。選定企業の事業領域としては、ロボット・制御系とIoTデバイス系でほぼ半数を占めており、資本金の中央値は約9億円と大型の企業が中心となります。支援内容としては、特設ホームページや国内外メディアによるPR活動、大臣等政府の海外ミッションへの参加、海外・国内大規模イベントへの出展支援や大企業幹部又は各省庁へのビジネスマッチング、など多岐に渡っての大型プロジェクトとなります。政府としても次の時代を作るべく、世界に負けない企業の底上げを図っているのです。

まとめ

ユニコーン企業を成立させる要件としては、巨大な市場、画期的なテクノロジーをもったビジネスプランを描く必要がありそうです。ベンチャー企業であれば、J-Startupのスキーム等を参考にしてみるのも一つの方法と言えます。

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