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【一挙解説】内部統制システムに関する基本方針と必須の5項目

経営ハッカー編集部
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内部統制を適切にかつ、法律に正しい形で進めるために内部統制システムを導入するのと併せ、内部統制システムの基本方針を各社作成しなくてはなりません。これは企業が内部統制を進めるにあたり、整備すべき内容です。

この記事では内部統制システムの概要や内部統制システムを記載するときに必須となる5項目を始め、会社の機関設計によって異なる項目をご説明します。IPOに向けて内部統制システムの導入準備を進める担当者には必読の内容です。

目次

    内部統制システムとは?

    内部統制システムというのは、「財務書類の適正性を確保し、法令などに沿った形で円滑に業務を進めるため」の仕組みです。

    内部統制を意識し始めた企業は、事業拡大・多店舗展開などから会社の器を強化する時期であったり、上場の準備を始めたことで会社自体が社会の公器になろうと変化していく段階だったりすると思います。

    こうした自社の成長と適切な経営を両立するためにも、内部統制の目的である「業務の有効性及び効率性」、「財務報告の信用性」、「事業活動等に関わる法令等の遵守」、「資産の保全」といった4つの達成が欠かせません。

    内部統制システムの構築は、これら4つの目的が法令等に沿った手順で適切に進められる上で必須となります。横領やリコールなど、社会的にあってはならない問題を予防する上でも重要です。

    内部統制システムの整備とコーポレートガバナンスの関係

    社会情勢の変化に併せ、内部統制システムの整備が進んだのはここ10年ほどの話になります。 そのきっかけとなったのが、2006年の会社法制定です。

    1995年に起きた大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件などを始め、企業のガバナンスが問われる不祥事が相次いで起こりました。こうした現状を改善し、会社経営の健全性を確保するための一環として、内部統制システムの整備が会社法に定められたのです。

    会社法の制定と同時期に、金融商品取引法でも内部統制報告制度(J-SOX)が定められました。この背景にあるのが、総合エネルギー会社のエンロンを始めとする米国で相次いだ大規模な粉飾決算事件です。これらの事件によって決算書に対する信頼性が失われ、それがきっかけとなり制定されました。

    会社法と金融商品取引法に内部統制が組み込まれた背景については、内部統制システム導入における注意点で詳しく紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。

    参考:内部統制システム導入における注意点
    https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501667

    「大企業」には内部統制システムの構築義務がある

    内部統制システムの構築は、全ての企業において必須ではありません。ただし、「資本金が5億円以上または負債の合計が200億円以上の大会社」に対しは内部統制システムの構築が会社法で義務化されています。

    (参考:e-Gov 会社法
    https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2548

    内部統制システムの基本方針とは?

    会社法では、「法令及び定款に適合」「業務の適正」を確保するために、取締役会で内部統制システムの基本方針を決議するよう定められています。具体的には、会社の経営方針とそれに基づく行動指針などの法令遵守基準の策定、コンプライアンス体制の充実に向けた基本方針などの検討です。

    なお内部統制システムの具体的な内容については、取締役や監査等委員会設置の有無に応じた機関設計毎に、会社法施行規則にて詳細が定められています。

     

    どの企業にも求められる5項目

    機関設計によって求められる整備内容が変わる一方、基本項目として必ず整備をしたい5項目があります。実際に会社法施行規則には、以下のように書かれています。

    1.当該株式会社の取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制

    2.当該株式会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制

    3.当該株式会社の取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

    4.当該株式会社の使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

    5.次に掲げる体制その他の当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

     イ:当該株式会社の子会社の取締役、執行役、業務を執行する社員、法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者(ハ及びニにおいて「取締役等」という。)の職務の執行に係る事項の当該株式会社への報告に関する体制

     ロ:当該株式会社の子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制

     ハ:当該株式会社の子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

     ニ:当該株式会社の子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

    (引用元:e-Gov 会社法施行規則 第100条
    https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2548

    つまり、取締役の業務に関する情報が適切に管理・保管され、かつ効率的に職務が全うできる体制を整えることが求められているのです。例えば、取締役会議事録やその他決裁文書が作成保存されたり、経営会議体の設置や業務分掌規程が整備されたりすることが該当します。

    またリスク管理についても、リスク管理規程の整備などを通し、万が一に備えリスクへの対処方法を明確化しておきましょう。

    同時に子会社も含めた従業員の業務が、法令に則って適切に行える体制であるかを確認する必要があります。ここには、コンプライアンス研修の実施や内部通報制度の整備を始め、グループ・ポリシーの設定、子会社監査の実施などが当てはまります。

    内部統制システム導入における注意点の「会社法で求められる項目」について詳しく紹介しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

    参考:内部統制システム導入における注意点
    https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501667

    会社の種類によって異なる内部統制システムの基本項目

    先ほどご説明した、内部統制システムの基本5項目以外に追加で決定しなければならない項目があるかどうかは、取締役会ならびに監査役の設置会社かどうかで決まります。ここでは、「取締役会設置会社」「監査等委員会設置会社」の2つの場合についてご紹介します。

     

    (1)取締役会設置会社の場合

    整備が求められるのは基本の5項目ですが、監査役設置会社かどうかで、追加項目があります。設置の有無に応じて、ご説明します。

    <監査役設置会社を設置していない場合>
    監査役設置会社を設置していない場合は、「取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制」が求められます。

    <監査役設置会社を設置している場合>
    監査役設置会社を設置している場合は、7つの追加項目が発生します。実際に会社法施行規則には、以下のように書かれています。

    1.当該監査役設置会社の監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項

    2.前号の使用人の当該監査役設置会社の取締役からの独立性に関する事項

    3.当該監査役設置会社の監査役の第一号の使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

    4.次に掲げる体制その他の当該監査役設置会社の監査役への報告に関する体制

     イ:当該監査役設置会社の取締役及び会計参与並びに使用人が当該監査役設置会社の監査役に報告をするための体制

     ロ:当該監査役設置会社の子会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、業務を執行する社員、法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が当該監査役設置会社の監査役に報告をするための体制

    5.前号の報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制

    6.当該監査役設置会社の監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項

    7.その他当該監査役設置会社の監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制(取締役会の議事録)

    (引用元:e-Gov 会社法施行規則 第100条
    https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2548

    具体的には、専任監査役スタッフの設定によって監査役スタッフを配置したり、専任監査役スタッフの人事評価・異動等についての監査役の事前承認体制を整えることで監査役スタッフの独立性を担保したりします。

    他にも、監査役への定期的な報告体制の整備や取締役会への出席、監査部門・会計監査人との連携制度の整備について検討する必要があります。

    具体的な整備内容については、内部統制システム導入における注意点の「会社法で求められる項目」でも詳しく紹介されています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

    参考:内部統制システム導入における注意点
    https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501667

    (2)監査等委員会設置会社の場合

    2019年に三井住友信託銀行が発表した調査によると、上場企業全体の約3割弱に当たる1,000社を超える企業が、「監査等委員会設置会社」の仕組みを取り入れていることが分かりました(※1)。そのためここではIPOに向けて監査等委員会設置を検討する企業にご説明していきます。

    結論から申し上げて、追加項目は「(1)取締役会設置会社の監査役設置会社がある場合」とほとんど同じです。会社法施行規則には、以下のように書かれています。

    1.当該株式会社の監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人に関する事項

    2.前号の取締役及び使用人の当該株式会社の他の取締役(監査等委員である取締役を除く。)からの独立性に関する事項

    3.当該株式会社の監査等委員会の第一号の取締役及び使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項

    4.次に掲げる体制その他の当該株式会社の監査等委員会への報告に関する体制

     イ:当該株式会社の取締役(監査等委員である取締役を除く。)及び会計参与並びに使用人が当該株式会社の監査等委員会に報告をするための体制

     ロ:当該株式会社の子会社の取締役、会計参与、監査役、執行役、業務を執行する社員、法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人又はこれらの者から報告を受けた者が当該株式会社の監査等委員会に報告をするための体制

    5.前号の報告をした者が当該報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制

    6.当該株式会社の監査等委員の職務の執行(監査等委員会の職務の執行に関するものに限る。)について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の当該職務の執行について生ずる費用又は債務の処理に係る方針に関する事項

    7.その他当該株式会社の監査等委員会の監査が実効的に行われることを確保するための体制

    (引用元:e-Gov 会社法施行規則 第110条の4
    https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=417AC0000000086#2548

    監査役設置会社が「監査等委員会設置会社」に置き換わっただけなので、基本的な検討内容とその範囲についても、監査役設置会社の場合とほぼ変わりません。

    ※1: 日本経済新聞 「監査等委」1000社超 上場企業の3割弱 社外取締役中心に経営監視(2019/7/13掲載)
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO47329420T10C19A7MM0000/

    内部統制システム導入の注意点とは?

    では、実際に導入するにあたり何を注意する必要があるのでしょうか。ここでは大きく3点をご説明します。

     

    会社法と照らし合わせ、整備度合いを確認する

    1つ目は、内部統制の内容が会社法上と照らし合わせたとき、項目が十分に満たされているかどうかです。内部統制システムは大企業において導入が義務化されていますが、整備のレベルについては法律に具体的な明記はされていません。業種や企業規模ごとに内部統制システムの内容やそのレベルが異なるからこそ、自分たちでひとつひとつ検討、判断しながら整備することが求められます。

     

    内部統制におけるPDCAサイクルを確認する仕組み作り

    2つ目は、整備した内部統制が、実際に継続的に運用していく仕組みを作ることです。会社を取り巻く環境や会社の組織・業務などが変化することで、それまでの内部統制システムでは適合しなくなる場合があります。整備して終わりにならないよう、社内の監査部門、あるいは監査役により内部統制システムが適切に整備・運用されているのかを、継続的にチェックする体制を整えましょう。

     

    問題が発見された場合の対処法を把握

    3つ目は、問題が発生した場合の対処方法を決めておくことです。大まかな流れは「リスクの重要性を判断」「リスクに対する対応を決定」です。問題が生じるとすぐに改善をしたくなりますが、リスクの可能性と影響度合いから重要性を判断します。

    その重要性に応じて、どのように判断するのかを決定します。あまり重要ではない問題の場合、コストと照らし合わせて放置するという選択肢もありえます。特に初めて内部統制システムを検討する場合には、重要な問題が発見する場合もあります。その場合には、部門規模ではなく、経営層も巻き込み、社として改善を図るようにしましょう。

    内部統制システム導入における注意点も、導入時の注意点を理解する上で大変参考となります。ぜひ併せてご覧ください。

    参考:内部統制システム導入における注意点
    https://keiei.freee.co.jp/articles/c0501667

    まとめ

    内部統制システムを検討、もしくは準備中の企業に向け、内部統制システムの基本方針と企業の種類によって記載事項が変わることをご紹介しました。自社に求められる要素を押さえ、効率的に準備を進めていきましょう。

     

    なお、下記では、内部統制の評価に利用される内部統制文書3点セットの中から、フローチャートの一部を特別公開しますのでご参考までにお使いください。

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