税理士と公認会計士はどちらの試験が難しいですか? (税理士と公認会計士の違い ~前編~)
税理士と公認会計士、どちらもニュースや新聞で見聞きする職業ですが、普通に生きているとなかなか接点のない方々です。なんとなく、税理士は税金関係のお仕事であり、公認会計士は企業会計のお仕事だとはイメージできるものの、具体的な職業内容な専門領域はわかりません。
freee株式会社の認定アドバイザーに登録している杉浦通之さんに、税理士と公認会計士の違いと役割をむちゃくちゃわかりやすく説明いただきました。
杉浦通之さんのプロフィール
公認会計士・税理士 大学卒業後、税理士事務所にて、個人事業主及び中小企業の記帳代行、決算作業、給与計算代行、確定申告代行などに従事。 2006年あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)に入社し、様々な業種の法定監査や内部統制関連業務に従事するとともに、J-SOX導入時のアドバイザリー業務、株式上場準備支援業務、デューデリジェンスなどの財務アドバイザリー業務を通じ企業の成長を支援。 2016年3月杉浦通之公認会計士・税理士事務所設立。
公認会計士と税理士、別々の資格なの?
——公認会計士と税理士、どちらも国家資格なんですよね?
そうです。ただ、税理士と公認会計士は別々の国家資格です
——公認会計士は、税理士会に登録すれば無試験で税理士になれると聞きましたが本当ですか?
はい、税理士会に税理士登録の申請することで税理士になれます。でも、その逆は認められておらず、税理士は一部の科目(租税法)は免除になるものの、公認会計士試験に合格しない限り公認会計士となることはできません
——税理士は自動的には公認会計士にはなれない……と。試験はどっちが難しいんでしょう?
専門領域が違うだけなので、両方とも難しいですよ。 税理士も公認会計士も国家資格ですが、公認会計士試験は、6科目を基本的には1発でパスせねばならないんです
——6科目を一発で?ミスが許されないですね
ちなみに科目は、財務会計論(簿記と財務諸表論)、管理会計論、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうちから一つ)があります。一次はそのうち4つの科目について行われる短答式試験。それをパスしたら、6科目の論文式試験が待っています
——なんですって!二次まであるんですか
一次はマークシート、二次は論文。論文は2又は3時間の時間でびっしり書かされます
——パソコンは使って書いてもよいのですか?
手書きの論文ですので、パソコンは使えません。企業法などの理論科目は2時間ずっと手書きで回答を書きますし、手がかなり疲れて腱鞘炎になる人もいます。よってなおさら難しいです
——ふと思ったんですが、会社員として働きながら公認会計士を目指すのって相当にきついのでは?
相当にきついですよ(笑)
よく合格までの平均勉強時間は3,000時間~5,000時間と言われます。もはや受験レベルで対策が必要で、学生時代に合格するか、大学卒業後に就職せずに勉強のみを行い合格を目指すのが主流
私は公認会計士試験のために、2年半勉強しかしていない時期があったほどです。その頃は、毎日6時半には専門学校へ向かい、7時からテストを受けていました。日中は、そのまま、専門学校の講義や、講義の合間は自習をしたりと夜まで勉強という日々でした
——えーっと、気が遠くなってきたんですが、公認会計士試験の合格率っていかほどでしょう?
私のときの合格率は8%台でしたが、年によって変動しますね
——世間では、「会計士=税理士」という認識が浸透している
世間の認識は、税理士=会計士が浸透しているんですよ
——そんなものですか?
社長さんらがよく「うちの会計士さんは・・・」と話すときは、税理士を指しているんです
——そうなんですか
公認会計士を指して「税理士さん」とか「うちの税理士さん」と呼ぶ人はまずいないでしょう。そもそも「公認会計士」ってなにやっているか知らない方が多いんだと思います。通常の生活で接する機会はあまりないからだと思うのですが。
ちなみに、税理士と公認会計士に分けられているのは日本独特なんです
——海外は違うんですか?
海外ではアカウンタントという立場に一本化されていて両方を務めることができます。でも、日本は独特で、それぞれが独立していて、独占領域の仕事があるんです
——複雑ですね……。ところで、税理士試験はいくつ科目があるんでしょう?
5科目あります。会計科目として、「簿記論」と「財務諸表論」の2つは必須ですが、残り三つは選択制ですね
——残り3つはどんな科目ですか?
組み合わせに一部ルールはありますが、ざっと並べると以下があります。 ↓↓↓ 「所得税法」 「法人税法」 「相続税法」 「消費税法」 「酒税法」 「国税徴収法」 「住民税」 「事業税」 「固定資産税」
——へぇぇぇぇ。つまり、各々が専門性を出したい領域を選んでOKだと?
ええ。たとえば相続税を専門領域にした税理士になりたければ、それを選べます
——税理士ごとに得意とする領域が違うのは、そういうことなんですね
公認会計士って何をする人?
——中小企業や個人事業主が仕事を依頼するのは税理士さんですよね?
ですね。公認会計士ではないです
——では公認会計士は何をされるんでしょう?
公認会計士の使命は公認会計士法第1において規定されています。
「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者および債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする」
簡単に言えば、監査業務を行い、企業の財務情報が正しいことを保証しています。
(参考)税理士の使命(税理士法第1条) 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
——監査って、耳にはする言葉だけど、よくわからない言葉ですよね
監査とは「ある事象・対象に関し、遵守すべき法令や社内規程などの規準に照らして、業務や成果物がそれらに則っているかどうかの証拠を収集し、その証拠に基づいて、監査対象の有効性を利害関係者に合理的に保証すること」・・・ですね
——ふむふむ
公認会計士の使命は、独立した立場において、財務書類の信頼性を確保することです。従って、必ずしも監査を受ける企業のニーズに応えることが仕事ではありません。 とはいいつつ、会社から報酬をもらう制度となっているため、本当の意味で独立した立場から監査できていなのではないかという話もありますが、別の話なので割愛しますね
——そうなんですか、つまり、別に企業の味方ではない・・・と
むしろ、公認会計士が真に責任を負うべき対象は別にいて、企業の財務情報が正確で適正なものであるかどうかを、監査及び会計の専門家として監査して、投資家の株式会社(ひいては証券市場)に対する信頼を確保すること、です
——それが公認会計士の役割なんですね
なお、監査法人の仕事相手は、基本的に上場企業か会社法上の大会社(資本金が5億円以上または、負債の総額が200億以上の会社)になります。その他、上場を目指すベンチャー会社など
——乱暴に言うと、大手企業のみを相手にしているってことですか?
そうです。このどれかを満たすと(上場企業は金融商品取引法監査が必須、会社法上の大会社は会社法監査が必須)、監査を受けなければならない義務が発生します。個人事業主とかふつうの中小企業であれば、公認会計士はまず接点がない存在です
企業監査を一人で行うことはできない(必ず複数名で行う)
——「日本には4大監査法人がある」って聞いたことがありますが、どこですか?
この4社です。 ↓↓↓ ・あずさ監査法人(KPMGと提携) 専門職、事務職除く人員4,224人 ・あらた監査法人(プライスウォーターハウスクーパースと提携) 2,105人 ・新日本有限責任監査法人(アーンスト・アンド・ヤングと提携) 4,533人 ・監査法人トーマツ(デロイト トウシュ トーマツと提携)5,908人
名前は聞いたことはありますね。当然ながら個人的に接点はないですが…(笑)
ざっと数千人単位の公認会計士が各社に所属しています。よって、単純計算で1万6千万人以上の公認会計士がこの4社だけでいるということになります
——へえええ
日本国内の主だった上場企業の監査はだいたい上記4社のどこかがやっていると考えていいでしょう。蛇足ですが、公認会計士よりも税理士のほうが人数は多いです
付け加えると、世界の4大監査法人は以下の4社です ↓↓↓ ・KPMG ・アーンスト&ヤング(Ernst & Young) - 略称:E&Y ・デロイト トウシュ トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu) - 略称:DTT,Deloitte. ・プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers) - 略称:PwC
——超絶勉強になるし、わかりやすいです!
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