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2020年03月24日(火)

消費税の端数処理はどうする?増税に備えて割戻方式と積上方式の復習を!

経営ハッカー編集部
消費税の端数処理はどうする?増税に備えて割戻方式と積上方式の復習を!

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令和元年(2019年)10月1日から消費税が10%になります。
 
消費税は何度か増税されてきましたが、今回はこれまでの消費税増税とは違って品目によって税率が別になります。
 
そこで気になるのが消費税の端数処理です。
 
消費税の仕組みについて理解すると、端数処理についてもクリアに理解できるようになるので、今回は消費税と端数処理について解説していきたいと思います。
 

 

消費税の仕組み

消費税は、仕入れと販売の両方で発生します。
 
消費税8%として、あるお店が700円で仕入れた商品を店頭では1,000円で販売するとします。
 
お店が商品を仕入れる際に支払う消費税は「56円」で、店頭で商品を販売した際に受け取る消費税は「80円」です。
 
この商品について支払った消費税と受け取った消費税の差額「26円」が、お店のオーナーが納税する消費税の金額となります。
 
本体価格が同じ条件で消費税10%の場合、仕入時に支払う消費税は「70円」、店頭販売時の受け取り消費税が「100円」となるので、オーナーの納税額は差額の「30円」になります。
 
ところで商品の金額によっては、消費税に端数が出てしまう場合があります。
例えば、5円のものを仕入れて10円で売る場合、仕入れで支払う消費税が8%の場合「0.4円」、10%なら「0.5円」。販売して受け取る消費税は8%なら「0.8円」、10%なら「1円」ということになりますが、1円以下の料金を受け取ることは不可能です。
 
では、消費税の端数はどう考えていけばいいのでしょうか。
 

 

総額表示と割戻方式

消費税の納税方法として多くの人がイメージするのは、税抜価格に消費税率をかけで算出した消費税額を足していく「積上方式」かもしれませんが、実際は「割戻方式」が採用されています。
 
割戻方式とは、消費税込みの合計額から割戻計算をした金額を消費税額とするものです。
 
つまり、売上のひとつひとつにかかる消費税ではなく、1年間の総売上に対する消費税を算出するということです。
 
そうすれば、消費税の端数をいちいち加算していく必要はなく、正しい税率で消費税を納税できるようになります。
 

 

消費税の表示方法がお店によってバラバラな理由

店頭の表示価格を「税込価格」にしているお店と「税抜価格」にしているお店の両方を見かけると思いますが、本来は税込価格で表示する「総額表示」と決められています。
 
それにもかかわらず税抜価格で表示しているお店が後を絶たないのは、少しでも価格を安く見せたいというお店側の事情が関係しています。
 
政府によって税込価格に統一されたものの、小売業界からの要求に政府が折れたような形で特例が認められるようになり、税込表示と税抜表示の両方が共存する事態となってしまいました。
 
そもそも消費税はお店にとって利益ではないため、税込価格を商品の価値として消費者にみなされたくないのです。
 

“「総額表示」とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含みます。)を含めた価格を表示することをいいます。”
 
<引用元>国税庁:6902.htm

 

消費税が8%と10%になるとどうなるのか

消費税が増税になっても、端数処理に対する考え方に変わりはありません。
 
ただし、増税前の8%と増税後の8%・10%では以下のように内訳が異なります。
 
増税前の消費税
税率8%:国税 6.30% + 地方税 1.70%
 
増税後の消費税
軽減税率8%:国税 6.24% + 地方税 1.76%
一般税率10%:国税 7.80% + 地方税 2.20%
 
請求書は、増税前の「請求書等保存方式」が終了し、令和元年(2019年)10月からは「区分記載請求書等保存方式」が始まります。
 
これによって請求書の記載方法は多少変わりますが、総額表示と割戻方式に関しては変わらないため、消費税の集計方法も変わりません。
 
しかし、令和4年(2023年)10月から始まる「適格請求書等保存方式」になると、消費税は「総額表示・割戻方式」から「外税表示・積上方式」へと大きく方向転換します。
 
そうなると、消費税を最後に精算するのではなく請求書の金額がそのまま納税する消費税額ということにななり、請求書ごとに消費税の端数処理を行わなければならなくなるのです。
 

“「総額表示義務の対象とならない取引(事業者間取引等)」については、「税抜価格」を前提とした端数処理の特例の適用が当分の間認められる次の経過措置1が適用されます。”
 
<引用元>国税庁:課税標準額に対する消費税額の計算の特例


 <参考>国税庁:総額表示義務の特例措置に関する事例集」

 

まとめ

消費税が増税になってからもしばらくの間は割戻方式で消費税の端数を処理できますが、ゆくゆくは積上方式になります。
 
消費税の仕組みや処理方法についての理解を深め、どちらの方式にも対応できるよう準備しておきましょう。
 

“事業者が軽減税率に目を奪われるのは仕方ありませんが、消費税増税によって平成33年度から取り入れられる「インボイス方式」のほうが事業者に直結します。そこで、どのように直結するのかを紹介します。”
 
<引用元>経営ハッカー:増税により、小規模事業者が消費税をプールできない時代がまもなく到来する

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