2019年02月07日(木)1ブックマーク

ひとり経理だからできたキャッシュレス施策。「小口現金の廃止」と「経費精算撲滅プロジェクト」

経営ハッカー編集部

freee株式会社で「freee ビジネスキャッシュレスアワード」が開催されました(募集期間:2018年11月5日~12月2日)。「freee ビジネスキャッシュレスアワード」とは、ビジネスの現場で実践されているキャッシュレス事例を募集して表彰するものです。

大賞に選ばれたのは、「スタディプラス株式会社」。社内で「小口現金の廃止」と「経費精算撲滅プロジェクト」を推進してきた、経理担当の藤本了甫(ふじもとりょうすけ)さんにお話をうかがってきました。

(聞き手:斎藤充博)

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スタディプラス株式会社
創業2010年。社員数約50名。ユーザー数400万人を突破した学習記録SNS「Studyplus」の開発と運用を行う。主な売上は同SNSに掲載される広告収入。
URL: https://info.studyplus.co.jp/

―ビジネスキャッシュレスアワード大賞の受賞おめでとうございます。

ありがとうございます。経理業界ってなかなか情報の発信がありませんよね。いい事例があっても一つの会社の中に留まってしまうことがほとんどだと思います。

僕はブログで自分の事例をできるだけ発信しています。今回の「小口現金の廃止」と「経費精算撲滅プロジェクト」についても文章をまとめていたところでした。

そんな中にたまたまFacebookの広告で「ビジネスキャッシュレスアワード」の告知を見まして。「今の自分のやっていることにドンピシャだ!」って思って応募しました(笑)。

 

営業1人で月30万円の経費を立て替えていた

―まずは「経費精算撲滅プロジェクト」について教えていただけますでしょうか。

弊社は学習内容の記録・可視化、また学習に特化したSNSとしての機能を持つアプリ「Studyplus」を提供しています。売上の多くは広告収入です。アプリの特性上、受験をひかえた高校生の使用が多く、多くの大学に広告を出稿していただいております。

大学って全国にありますよね。弊社には大学を専門に営業している担当者がいます。担当者は、地方出張がとても多くなります。会社に1週間に1度も出社しないこともあるくらいです。

そこで多くなるのが、経費の個人立て替え。毎月30万円を立て替えている営業部員もいました。

―かなりの金額ですよね。

金額も大きいですが、事務手続きも大変です。ヒアリングしたところ、経費申請の手続きに、営業部員は毎月3~4時間かけていました。

―経費の精算に時間がかかるのはどの会社でも「あるある」という気がします。

実は弊社は経理が僕ひとりでして。経費の承認件数が多すぎて、僕の仕事が全然回らなかったんですよ。夜ににひとりで「この経費はおかしいな。営業に差し戻ししなくちゃ……」ってやっているの、辛かったですよ(笑)。

さらに、上場に向けて内部統制強化や、ショートレビューなどの仕事などがありまして。いやいや、こんなことやっている場合ではないぞ、と(笑)。

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「AIトラベル」で経費申請の手間を4割削減

―具体的にはどのように進めたのでしょうか?

営業が立て替えている経費の原因を一つ一つ調べて、立て替えが発生しないようにキャッシュレスの代替手段を探しました。

まずは交通費です。「AIトラベル」という出張手配代行サービスを使用しました。出発地と目的地を入力すると、新幹線、飛行機、レンタカー、ホテルを予約してくれて、後払いが可能なんです。

―便利なサービスですね!

さらに、利用する会社の出張規程を読み込んでくれて、システムの使用者が規定に違反しているとアラートを出してくれます。出張申請のワークフローも付いているので「上長がシステム上で出張を承認した後に予約を実行する」ということもできます。

同様の出張手配代行サービスは他にもいくつかあるのですが、与信が通らなかったり、料金が高かったりで、弊社のようなベンチャーには導入が難しかったんです。AIトラベルには本当に感謝しています。これで経費の承認の4割ほどの手間が省けました。

―4割。それだけでも十分な改善ですね。

電車賃はモバイルSuicaとライフカードで解決

これだけでもいいかなとも思ったんです。ただ、どうしても新幹線以外の「電車賃」の経費精算が手間になっているのがストレスでした。

こちらも件数が多すぎる。正直なところ、まともにチェックはできていませんでした。不正利用されていても気づかなかったと思います。

―どのように解決されたのでしょう?

モバイルSuica」を導入しました。これを使うとエクセルで履歴が全て出るんです。

ただ、大変だったのはモバイルSuicaに紐付けるクレジットカードの選定です。大学の営業担当者全員にカードを発行したかったのですが、複数のカードを発行できるサービスってあまりないのですね。あったとしても年会費が高い。

根気よく探していて、「ライフカード」に行き着きました。従業員へのカードが実質無制限に可能で、年会費が安いんです。「これで交通費申請の撲滅がいける!」って思いましたね。

―営業担当の方にカードを発行しているのですね。

ライフカードとモバイルSuicaを紐付けて、カード自体は渡していません。また、モバイルSuicaはタクシーと電車のみに使用してもらうようにしています。

―運用も工夫されているのですね。かなりの効果があったのではと思いますが。

ここまでで、経費承認作業の9割程度を削減できました。営業部員の申請の手間も毎月3~4時間かかっていたのが、1時間程度まで減らすことができました。

 

定期券代の廃止で100万円の削減

モバイルSuicaを導入する中で思わぬ効果も出てきました。「定期代支給の廃止」です。

―従業員の家から会社までの定期代ですよね。廃止するのは、あまり聞いたことがありませんが……。

モバイルSuicaでは、JRの駅から始まる経路でないと、定期が買えないんです。このことに気づいたときには頭を抱えましたが……。

大学営業担当に限って、定期を廃止し、交通費の実費精算をすることにしました。そもそも彼らは、出張が多く出社が少ないため、家から会社までの電車利用がほとんどありません。

―逆転の発想ですね。

100万円程度の定期代を削減することができました。定期代を支払うのって「当たり前」だと思い込んでいました。常に様々な選択肢を考えていかなくてはいけないと、気づかされましたね。 

小口現金を全てATMに入れた日

―もう一つの施策「小口現金の廃止」についてもお聞きしたいです。何かきっかけがあったんでしょうか。

まず、現金出したり入れたりするのって、単純にめんどくさいじゃないですか。(笑)

実は以前勤めていた職場で横領があったんです。そのときの横領スキームに小口現金が使われていたという、苦い思い出があります。内部統制の観点からも、なくしたいと思っていました。

―こちらはどのように解決されたのでしょうか。

経費精算の撲滅のときと同じように、小口現金の使途に対して代替手段を提示しました。

たとえば、役員の会食に小口現金が必要になっていた。それを役員以上にはコーポレートカードを発行する。アプリのユーザーインタビューの謝礼を現金で払っていた。それをAmazonギフトカード(オンラインで発行可能)を渡すことにする。

―地道に行っていったんですね。

すると、だんだんと小口現金の申請が少なくなりました。そしてついに、去年の11月1日に小口現金を完全に廃止することができました。必要なくなったんです。

―日付を覚えているんですね。記念すべき日だったのではないでしょうか?

その通りです。これはすごくうれしかったですね。11月1日に、会社にある小口現金を、銀行のATMにジャラジャラと入れていって……。「無くなったぞ!」って(笑)。

 

代替案があれば社内は納得してくれる

―施策を進める上で、社内の反発はなかったのでしょうか?

代替案があったので、反発はありませんでした。社員も手間が少なくなったので、むしろ喜んでもらえていると思います。

実は昔の職場で、代替案もなしに強制的に廃止しようとしたことがあったんです。大きな反発を受けまして、その反省が元になっているというのもあります。

―先ほど、経理担当が藤本さんひとりだけというお話がありました。ひとりだけだからドラスティックな改善が可能だった、という部分はあるのでは?

それはあるかもしれません。自分で全てを決められるので。もっとも、もっと大きい規模の会社のように経理担当が5人いたら、こんなことはやらないかもしれませんね。そのうちの1人が経費精算の担当者になればいいので。

 

現金のコストの高さを知ってほしい

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―キャッシュレスに興味のない会社も多いと思います。藤本さんから一言あれば。

現金は目に見えるので、なんとなく安心できるように思えますよね。でも「現金はコストが高いですよ」と言いたいです。

―現金のコストとは。

現金が置いてあることで、管理する人間の手間は相当なものになります。

特に小口現金は大変ですよ。金庫の中にいくらあるかを把握して、申請されたら実際に持ってきて。しかも必要な額が金庫の中になかったら使えません。

また、現金にはどうしても横領のリスクがつきまといます。キャッシュレスに興味のない会社は、きっと業歴の長い大企業が多いのではないかと思います。でも、大企業なら横領が起こらないなんてことはありません。むしろ大きな会社の方が、横領は起こりやすいのではないでしょうか。

 

Saasは入れるだけで効果がある

―キャッシュレス施策ができていない会社が、最初の一歩を踏み出すとしたら何がいいでしょう?

Saas(クラウドサービス)を入れましょう! 今は便利なサービスがたくさん出てきています。それを知って、入れるだけで効果が出ます。このようなサービスがなかった5年前だったら、一連の施策はできなかったと思います。

その中でもお勧めは「AIトラベル」ですね。これだけで手間の4割を減らすことができたので……。バックオフィスにダイレクトに効果のある、本当にいいサービスです。

―クラウドサービスを入れるとオンプレ(職場に常駐)でなくても仕事ができるというメリットもありそうですね。

そうですね。オンプレだったら、ひとり経理なんてとてもできませんよ。僕には子どもがいるんですが、家で寝かしつけた後に作業を進めてたりしています。そんなワークライフバランスも叶えられるようになりました。

―最後に、ビジネスキャッシュレスアワードの受賞の喜びを誰に伝えたいですか?

うちのコーポレートチームですね。バックオフィスはコストセンターという意識が強すぎて、自分たちを卑下しがちじゃないですか。でも、ちゃんと業務改善すれば、付加価値が出てきて、外部の賞も獲れるんだよ、って言いたいですね。

経理って、つまらない定型作業の繰り返しっていうイメージがありますよね。僕はそのイメージも払拭したくて。「攻めのコーポレート」をこれからもやっていきたいと思っています。

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大賞を受賞したスタディプラス株式会社のキャッシュレス事例は、こちらからご覧いただけます。

 

斎藤充博
1982年生まれ。前職は総合リース会社の営業。最近の興味はファクタリングとRPA。
Twitter ID:@3216
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