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2016年06月01日(水)

公認会計士に、「ゴールデンウイーク」という言葉は(ほぼ)ない (税理士と公認会計士の違い ~後編~)

経営ハッカー編集部
公認会計士に、「ゴールデンウイーク」という言葉は(ほぼ)ない (税理士と公認会計士の違い ~後編~)

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税理士と公認会計士、どちらもニュースや新聞で見聞きする職業ですが、普通に生きているとなかなか接点のない方々です。なんとなく、税理士は税金関係のお仕事であり、公認会計士は企業会計のお仕事だとはイメージできるものの、具体的な職業内容や専門領域はわかりません。

freee株式会社の認定アドバイザーに登録している杉浦通之さんに、税理士と公認会計士の違いと役割をむちゃくちゃわかりやすく説明いただきました。

>>前編から読む

<杉浦通之さんのプロフィール>

公認会計士・税理士 大学卒業後、税理士事務所にて、個人事業主及び中小企業の記帳代行、決算作業、給与計算代行、確定申告代行などに従事。 2006年あずさ監査法人(現:有限責任あずさ監査法人)に入社し、様々な業種の法定監査や内部統制関連業務に従事するとともに、J-SOX導入時のアドバイザリー業務、株式上場準備支援業務、デューデリジェンスなどの財務アドバイザリー業務を通じ企業の成長を支援。 2016年3月杉浦通之公認会計士・税理士事務所設立。

公認会計士は「税務の知識」も兼ね備えている

——公認会計士は、税理士会に登録すれば無試験で税理士になれるって話でしたが、なぜですか?ずるくないですか?

そもそも、公認会計士は税務の知識も備えているので、税理士になれるんです。「会計士への税理士資格自動付与は廃止すべきか」という記事にもあるとおり、いろんな意見はありますが

——そういえば、公認会計士の試験科目の一つに「租税法」がありましたね

特に公認会計士の独占業務である監査は、決算書が正しいかどうかを判断しますので、その中で特に法人税については、実務上でも知識が求められます。なお、公認会計士は会社に所属する人もいるし、個人でやる人もいるんです

——個人の公認会計士さんもいらっしゃるんですね

個人でやる場合、経営のアドバイザーとして仕事するパターンが多いですが、そうなると顧問先からは「ついでに税務も面倒見てよ」と頼まれるのは自然な流れです

——一人二役してくれたほうが、経営者にはありがたい話ですからね

なので、公認会計士で独立されている多くの方は、税理士の資格も同時に取得するのだと思います

“税務に関する相談を受けること”を業とできるのは税理士だけ

——今度は税理士さんの仕事内容を伺いたいんですが

税理士は、その名が示すとおり税金に関する事柄を扱います。具体的には所得税や法人税などの各種税金の申告や、税務書類の作成、税金に関する不服審査手続などを行います

——ふむふむ

税理士の業務は、第一義的には税金に関する業務、すなわち税務です

——納税者側からの依頼を受けて税務を行うのが一般的ですよね

ええ、基本的には納税者側に申告義務がある税金についての仕事が多くなります。典型的なのは、所得税・法人税・消費税・贈与税・相続税の確定申告にかかわる業務

——一般的な経営者や個人事業主で、ここまで知っている人って少ないですよね

ですね。これらの確定申告は複雑な専門知識を必要とする難しいものであることが多いので、たいてい税理士の登場となります

——なるほど

なお、税理士は税務に関して納税者を代理する資格を持ちます

——つまり、税務に関する相談を受けることを業とできるのは税理士だけ、と

そういうことです

申告書のサインは、税理士にのみ許された独占業務

——税務に関する相談を受けることを業とできるのは税理士だけとのことですが、税理士にのみ許された業務って何でしょう?

「税務代理」、「税務書類の作成」、「税務相談」です

——申告書にサインしてよいのは税理士だけですか?

そうです。ただし、申告書の作成自体は、社内の経理担当でも公認会計士でもできますよ

——公認会計士ですら、税務申告書にサインはできないんでしょうか?

はい、できません。その反対に、監査業務ができるのは公認会計士のみで税理士にはできないんです

——ところで、公認会計士と税理士って、それぞれ誰の味方なんですか?

さきほども言いましたが、公認会計士は様々なステークホルダーの味方で、税理士は会社の味方です

——税理士は会社の味方……それは心強い

会社の味方といえど、当然ながら”税理士の使命”にのっとって、公正であることが前提条件ですよ

——ですよね。脱税をレクチャーするなんて許されませんしね。ところで、”税理士の使命”ってなんですか?

税理士法の第1条に定められた、税理士が遵守すべき使命です

<税理士の使命とは> 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

参考になるリンクは 東京税理士会の「税理士の使命」です

公認会計士に、「ゴールデンウィーク」という言葉は(ほぼ)ない

公認会計士の仕事に戻りますと、上場会社は、決算期末後の45日以内に公表を行うことが適当という決まりがありまして(決算期末後30日以内がより望ましい)

——ざっと1か月半で終わらせなければならないんですか

3月末決算の会社が多いので、〆切は5月中旬となってしまいます

——えっと、ゴールデンウィークの真っただ中ですけど…

公認会計士にとって5月上旬は超繁忙期で、ゴールデンウィークは休みなしがデフォルトです(笑)

——「ちょっと海外旅行に行ってたので遅れちゃった……ゴメン」は認められませんよね?

決算発表ができないよほどの事情がない限り、遅れることは許されません。時間がなくて・・・とよくわからない理由で決算発表が遅れるような会社の株を購入する気にはならないですよね?!「なんか問題が発生してるはず」と思われて、きっと株価が下がってしまうと思います

——おっしゃるとおりです

自分が監査法人で働いていたとき、もっとも忙しかった時期は、30日間連続で働いたことがあります。しかも、帰宅が連日深夜3時でした

——体調崩すというか、気がおかしくなりそう……。ところで、税務申告も同じタイムスパンでしょうか?

いえ、決算が3月末の企業の場合、税務申告は原則として5月末です(2か月以内に申告がルール)。よって税理士は公認会計士よりも時間にやや余裕があります。ただ、上場会社の数は限られているので、税理士の方が関与している数は多いと思います。

どちらも大変なお仕事であることに変わりはない…と。

——ところで、公認会計士は広いエリアをカバーし、税理士は専門分野に特化してて深く掘り下げるって印象を受けました。あながち間違ってはいないでしょうか?

ええ、大丈夫ですよ

——変な質問ですが、公認会計士と税理士、どちらが立場が上ってあったりするんですか?

ないですね。単純比較するものでもないですし、それぞれの仕事の専門領域も異なるので

——空手と柔道のようなものでしょうか?どっちも強いけど、戦う土俵が違うので一概に優劣がつけられないと言いますか

近いと言えば、近いたとえかもしれません(笑)

自分にマッチした税理士の探し方・見つけ方

——そういえばですが、税理士って全国に何名ほどいらっしゃるんでしょうか

7万人ほどいます。こちらの情報によると、そのうち約1割は公認会計士出身のようですね

——税務調査に関しても教えていただきたいのですが、中小とか零細企業の社長が税務調査を受けるときって独りぼっちだと不安じゃないですか

ですね

——経営者一人で税務署の相手をするのは不安だし、分が悪いというか、言いなりになってしまうような気もします

専門知識がないとそうでしょうね。ですので、税務調査に際し経営者は税理士に立ち会いを頼むこともできます

——それは心強い。 では最後に、「自社に合う税理士さん」の見つけ方のコツってありますか?

たしかに誰をどう判断すればいいかも不透明ですし、わかりにくいですよね

——そうなんです

税理士って紹介で仕事が広がることが多い世界なんですが、たとえ紹介で知りあえたとしても、一人だけで決めるのではなく、何人かに会いに行くことをお勧めします

——医者のセカンドオピニオン的な?

互いのフィーリングや性格が合う(合わない)もありますし、税理士さんそれぞれの専門性もありますから

——たとえば?

経営者が自分の相続などの相談にのってほしいなら、ある程度相続に強い人を選ぶべき。将来的に上場を目指している会社なら、公認会計士出身の税理士に依頼するほうが、ゆくゆく助かるかもしれません。海外展開したいのであれば、海外税務に強い事務所など、税理士事務所によっても専門性があると思うので、そんなことも考慮に入れつつ、税理士さんを探してください

——ありがとうございました!




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