コインロッカー探しが不要に!? 27歳の起業家は人間関係と商売の失敗から生まれた
スタートアップイベントsproutの18回目特別版で見事トリプル受賞を果たしたecbo株式会社の工藤慎一さん。「賞をもらうのは小学生の時のベイブレード大会ぶり」という工藤さんに、サービスと、優勝に至るまでの経緯について聞きました。 (聞き手: freee株式会社 新設法人事業 木本俊光)
――工藤さん、おめでとうございます。
ありがとうございます。誰かに賞をもらうのは小学校の時のベイブレード大会ぶりなので、優勝したときは信じられませんでした。ちなみにその頃は全国の大会で20回ぐらい優勝してました。
――ベイブレードで全国優勝(笑)早速掘り下げたくなる歴史が出てきましたが、まずはサービスの説明をしていただけますか?
はい(笑)。ecbo cloakは「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つ店舗」をつなぐシェアリングサービスです。
荷物を預けたい人はコインロッカーが無くても店舗に荷物を預けられますし、店舗は有休スペースを活用して収益にできる上に、来店機会も増やせるという双方メリットが得られるシンプルな仕組みになっています。
――お互いのメリットが分かりやすいですね。コインロッカーの代わりに、カフェなどに預ける料金を支払うということですよね?
そうです。小さい荷物なら1日で300円、大きいものなら600円で預けられます。渋谷のカフェだと来店者の3割が飲食もしていて、荷物預かりだけではない新しい機会も生まれているようです。
――3割も!そういうサービスを作りたいと思って起業されたのですか?
それが、ecbo cloakは去年思いついたものなんです。起業したのは一昨年の2015年で、実はもともとはもう少し複雑なビジネスをしていました。
――今回のサービスはどういうきっかけで?
去年の8月に私が渋谷を歩いていた時に、訪日外国人に「このスーツケースの入るコインロッカーを一緒に探してほしい」という相談を受けて、40分以上一緒に探しても見つけられなかったんですよ。
その体験があったあと、渋谷駅周辺のコインロッカーを数えてみんです。実はあの広い渋谷でも、駅周辺に1,400個のコインロッカーしかなく、その中で大型のコインロッカーは90個しかないんですよ。そこで荷物預かりの現状に課題感を感じ、解決する方法としてecbo cloakを作ることになりました。
――印象的な体験ですが、サービス転換するとは思い切ってますね...。
当時から出資していただいていた投資家の佐俣アンリさんに話を聞いてもらったとき、「何言ってるんだこいつ」って思ったらしいです(笑)。ただ、楽しそうだったからまあいいかということで、それまで通り自由にサービスを作れています。
――VCの方とそんなにフランクな関係なのですか?
いま投資していただいている皆さんは非常に理解いただいていますね。「コナンくん」と呼ばれているぐらいです(笑)
――コナンくん(笑)
――今回はsproutがキッカケのインタビューですが、sproutでオーディエンス賞、協賛企業賞、渋谷区賞のトリプル受賞をされました。ご自身の中で何か変化はありますか?
ピッチイベントに出る経験が無かった上、受賞すること自体が小学生の時のベイブレード大会以来なので(笑)、賞の数以前に受賞したこと自体に驚きました。
まず、ecbo cloakは渋谷発のサービスですし、渋谷の副区長に評価していただいたのは今後のビジネスにも非常にプラスになると信じています。
それ以上に「オーディエンスに支持された」という経験は非常に貴重な体験でしたね。
ecbo cloakが全く新しいシェアリングプラットフォームなので、いままでメディアやIT・ベンチャー界隈で影響力のある方々などに取り上げていただくことはありましたが、利用者になる人と直接話をしてフィードバックを受ける機会はなかったんです。
今回の受賞で「あー、やっぱ良いんだ。このまま突き進んで良いんだ」という自信になりました。
facebookページのいいね!が1000を超えた時もそうですが、ユーザーからの支援が目に見えると大きな励みになりますね。協賛企業賞に関しては、受賞の理由をあとで詳しく聞きますので、よろしくお願いします(笑)
――がんばります(笑)freee自身もイノベーションの無かった会計ソフト業界にチャレンジすべく始まっている(参考:freee代表佐々木インタビュー)ので、身近で変化のない「コインロッカー」を変えようとする挑戦を応援していきたいと思って選ばせていただきました。
実は、コインロッカーって、1964年の東京オリンピックの時に作られて、40年間ほぼ変わっていないんですよ。
コインロッカーを変えようとしてサービスをはじめましたが、ecbo cloakから飲食の機会が生まれていたり、バッグ以外のものが預けられていたりなど、サービスの可能性を利用者の方に気付かされることが多いですね。
実際に利用者の声を元に、Webページをリニューアルもしています。
――昔は違うサービスをしていたと話していましたが、それまでのサービスとはどう変わったのですか?
それまではecbo cloakではなく、ecbo storageというサービスをやっていました。もう運営していないので詳しくは説明しませんが、デリバリー付きトランクルームを目指したビジネスを運営していました。
――そこからの転換にためらいはなかったのですか?
ecbo storageは、事業が複雑だったのでなかなか軌道に乗らなかったんですよね。目指すべき理想はあったけれど、そこになかなか向かうことができていませんでした。
倉庫を借りたり、物流、設備投資、倉庫内オペレーション、システムへの落とし込みに加えて、利用者の集客も必要で、管理が困難だった。更にそれらをメンバーに伝えて動いてもらうのも難しくて。何にもフォーカスできずに次から次へと問題処理に追われている毎日でした。
その経験もあって、ecbo cloakではまずサービスをシンプルにすることを心がけましたね。いまは、店舗を増やすことと、利用者を増やすこと、サービスを改善することの3つにフォーカスすれば良いんですよ。特に今は店舗とサービスの2つにフォーカスしているので、前と比べるとかなりスピード感を持ってサービスを展開することができています。
――ビジネスモデル以外で苦労したことはありますか?
人ですね。人が一番苦労しました。
――人ですか。この短期間でもメンバーが沢山いらっしゃるので、順調に仲間を集められているのかと...。
いや、本当に苦労しました。いまは社員が6人、パートタイムや業務委託も合わせると20人弱いますが、最初のメンバーは友達ばかりでやってたんですよ。
始めは自分はエンジニアリングのことは分からないから、全部任せてたんですが、いざ途中で状況を確認してみたらリリース予定間近に何も進んでないという事件があって…。
その事件があって、しっかり経験がある人に手伝ってもらうことになりました。東京にいなくてリモートで働いてもらっているのですが、優秀な人を紹介してもらえました。
――なぜその採用ができたのですか?
紹介してもらえたという運というのもあるのですが、採用はとにかく数を打って動いています。経験者に入ってほしくても、ベンチャーでお金はないので採用は簡単ではありません。また、10年後のecbo cloakの姿を話して、同じビジョンに向かって努力できる人たちに入社してもらうようになりました。お互いがポテンシャルを感じられる人と働くようになりましたね。 結果的にその行動が採用以外のところにも生きているんですよね。初期導入してくれたカフェの繋がりも生まれましたし、その後の色々な仕事につながっています。
――ちなみに、freeeを導入した理由も教えていただけますか?
会社が3期目に入り、新事業も本格的にドライブするために人も増えたタイミングで、本業以外の作業を効率化したかったからです。
いままでは、社員の経費管理も全て自分でエクセルで管理していたのですが、それが非常に面倒でした。税理士さんに創業時からサポートしていただいているのですが、エクセルや紙を共有するのも面倒だったので、それも効率化したかった。
「人にお願いすればいいじゃん」と言われても、お金が十分あるわけではないので、それだけのために人を雇うこともできません。
freeeを見つけたのも社員の紹介だったのですが、税理士さんとも相談して、経理に詳しくない自分にも使いやすそうだと思って導入しました。
――人に一番苦労した一方で、紹介など沢山の人に支えられているんですね。
そうですね。
人に一番苦労した工藤さんですが、実は多くの方に支えられている面も見られました。 後編では、人との関わりについて詳しく話を聞き、ecbo cloakの未来についてを伺います。
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後編はこちら:「コインロッカーを変革する27歳の起業家の人間関係と事業の未来」