「クレジットカード審査の仕組みとは?」多くの個人事業主・中小企業向けに無料でカード発行できる秘訣をライフカード社に聞いてみた
freeeカードの連携先であるライフカード。事業用クレジットカードには年会費がかかるカードが多いなか、同社は多くの個人事業主や小規模事業者に年会費無料のカード「ライフカードビジネス」を提供しています。
このインタビューでは、クレジットカードの審査の仕組み、創業者に無料でクレカを提供できる理由、freeeカード誕生の背景など、事業用クレジットカードについて質問しました。
前半では、小規模事業者にも無料のカードを発行できるのか、そのためにどのような審査をしているのか、を訊きました。
(聞き手︰freee 金融事業部 木本)
なぜ開業者や個人事業主に無料でカードを発行できるのか?
ー今回はまず、クレジットカードの審査についていろいろ聞きたいと思っています。
何でも聞いてください。
ー個人事業主や中小企業は、信用が評価されなくてカード発行されにくい印象があります。ライフカードさんはなぜ開業者や個人事業主の方に年会費無料でカードを提供できるのでしょうか?素人考えでは、非常にリスクが高い取り組みかと思うのですが。
結論としては、そもそも当社はリスクが高いとは思っておりません。「会社の業歴」は審査に使う項目の一つでしかないんです。
木本さんは、審査には申込時に送っていただく情報以外にも様々な情報を使っているのはご存知ですか?
申込情報以外にカードの審査で何を見ている?
ーカード会社が審査に使用している情報があるんですよね?
そうです。本人からの申込情報の他には、信用情報機関の情報等を参考にしています。
当社ではそれらの情報を用いた独自のスコアリングによって、カード会員の審査をしています。
ー「信用情報機関」がその情報を管理しているところなのでしょうか?
そうですね。信用情報機関は、加盟するカード会社からの信用情報を、管理・提供しています。
信用情報機関には個人の情報と、クレジットカードや携帯電話などの割賦販売(分割払い)、ローン、リースの利用残高と返済履歴などの情報が登録されています。
我々クレジットカード会社は信用情報機関の情報を見るだけじゃなく、我々が持っている情報も登録する義務があるんですよ。
ー申込情報だけで判断するわけではないんですね。
はい。取引履歴等の信用情報を見ることで、個々人の支払能力に応じたカードが発行できるわけです。
ー各社が同じ信用情報を見ているわけですね。では、申込する時に気をつけることはありますか?
現状を正しく記入していただければ特段気をつけることはありませんが、「利用限度額」は勘違いが多いかもしれません。
利用限度額は1ヶ月の利用額ではなく、2ヶ月分を目安として書いてください。クレジットカードは決済から支払いまでの期間がある分、支払いが精算されるまでは利用枠が空かないので、約2ヶ月分の利用を想定した金額を入れておくと安心です。
開業直後で予測がつかないこともあるので、一番出費が多い月を想定して計算するのが良いと思います。
審査のとき、どういう観点で評価をしているのか?
ー審査のために色々情報を集めるのはわかったのですが、どういう基準で審査しているんですか?
「信用力」という観点で審査をしています。
なぜなら弊社はクレジットカードの会員に「その場でお金を払わずに後払いができる額を利用限度額として提供しています。
もし、後で支払がなされない場合、弊社の損失になってしまうため、信用力という観点で評価をしています。
ー「信用力」って分かるようで掴みづらいのですが、どう評価しているのでしょうか?
有名な考え方に「信用の4C」というものがあります。
Character-人格
「借りたお金は後で必ず返済する」という約束を正しく理解し、約束どおり返済する意志があるかどうか。
Capacity-支払能力
借りたお金をスムースに返済していける支払能力があるかどうか。勤務先の安定度などで判断。
Capital-資産
病気や事故などにより返済が困難な状態におちいった場合でも、これをカバーする資産などがあるかどうか。担保があるかどうかを判断材料にすることもある。
Control-自己管理
自分の返済能力の範囲内で計画的に利用し、計画的に返済することができるかどうか。
このような要素に照らし合わせて、弊社が利用限度額を提供できるか判断することになります。
ー4Cの各項目を見ると、「資産」や「支払能力」は評価しやすいと思うのですが、「人格」「自己管理」などはどうやって評価するのでしょうか?
おっしゃる通り、人間性や人格などは、信用情報機関の情報ではわからないので、各社独自の方法で評価しています。
銀行さんはカード発行前の面談などを通じて評価しているかもしれませんし、会計freeeを契約して会計管理したり、税理士さんと顧問契約して経営しようという行為は、管理意識の現れではないでしょうか。
当社でも会計freeeをご利用されているかどうかを判断材料の一つにしています。
ーおお、それは非常に嬉しいですね。ちなみに、事業用と個人用で違いはありますか?
事業で使うためのカードですので、freeeカードは個人と比べて利用限度額が高いという違いがあります。
個人は収入がなければ不利ですが、事業では一時的な赤字はありえますし、それよりも収支のバランスが重要ですから、事業用の場合「赤字だから作れない」ということはありません。
中小企業は信用力が無いのではない、信用力が評価されにくいだけ
ーなるほど、審査の仕組みについては分かってきた気がします。ここでまた最初の質問に戻りますが、ライフカードさんは開業者や小規模事業者に、年会費無料でカードを発行できる理由を教えていただけますか?今の話を聞いていると、まだリスクが高いと感じてしまいます。
一言で言うと、圧倒的に多くのスモールビジネスの情報を持っているので、リスクを予測できるからです。
弊社は、従業員10人以下のお客様が90〜95%くらいを占めています。
だからこそ、スモールビジネスの方の信用を評価することも得意ですし、皆様のカードに関するニーズも早くキャッチすることができます。
最近は、カードじゃないと支払えないというサービスが増えています。そうするとカードがないと、ビジネスとして会社自体が成り立っていかない。
弊社としても強みを活かせて、お客様のニーズにも合うので、取り組むべき分野だと考えています。
ー今までの経験がむしろ強みになりそうですね
たとえば、1億2億の審査にスコアリングだけでは信用力を評価できないんです。一方で、50万、100万といった小口の審査では統計に基づいたスコアリングの精度が高くなります。
過去の情報に基づくスコアリングという強みを持っている、我々がリスクが高いと思っていないというのは、そういうことです。
「個人事業や開業したてだからカードが作れない」という方が、「だから自分は信用が無い」と思っているのであれば間違いです。信用力が無いわけではないんです。信用力はあるんです。今日開業した人だって信用力はあるんですよね。
その信用を評価できるかどうかが問題なだけです。我々は業歴だけではなく、あらゆる要素をもって判断しているんですよ。
ー設立年数だけで支払えるかどうかの判断はできないですね。
「今日開業した人の与信はどうやってするんですか」とよく聞かれるんですが、業歴というのもスコアリング上の要素の一つですが、それだけでは判断できません。
どこに勤めて、どこにお住まいで、何歳で…といったお申込情報や信用機関の情報があるわけですよね。一つのデータで評価するのではなく、データ同士を組み合わせることではじめて信用力の評価ができるのです。
実際に、業歴がゼロの新卒の方や、サラリーマンで転職した方でも個人のカードを発行できるケースもあります。
信用力が評価できればカードの発行は可能ですから、どうして開業者には応えられないんですか?って話です。
正しいデータに基づけば正しい判断ができます。弊社はその分野のデータが豊富だからこそ、様々なお客様のニーズに応えられているのです。
ーだから無料でもカードが発行できるということですかね。
年会費を取らないカードを提供しているのは、ほかにも理由があります。
事業用の決済をすることが目的のカードなので、ポイントは提供しない代わりに年会費を取らないカードを提供するのが一番よいと考えています。ただし、弊社でもポイントを希望する方もいらっしゃるのでポイントの付くゴールドカードもご用意しています。
また、弊社のカードは利用率が非常に高いので、無駄なコストも少ないんですよね。
ー利用率が関係あるんですか?
利用されないカードは、管理コストがかかるんです。
「使ったら年会費タダにします」っていうところがよくあると思うんですけど、あれは使わないカードにお金がかかるということですね。
使っていれば使った利益があるから、そこからの収入からポイントや特典も出せます。でも例えば、キャンペーンで配られているようなデパートのカードは「毎月使いますか?」と言ったら、たぶん毎月使ってないわけですよ。使っていても「たまに使う」というレベルが多いはずです。
弊社のビジネスカードは基本的には利用ニーズのある事業主がお申込みされるので利用されやすいのです。
ですから、利用率が低くなるとうちも年会費を取らないといけないですが(笑)、今のところそういうことはないですね。
ーなるほど。利用率が高いと無駄なコストが生まれないんですね。使いたい人が申し込んでいるからそれができていると。
あとはスピードでしょうね。
お客様のニーズに合うように審査を効率化して、できるだけ早く発行しています。使いたい方に必要なときにお届けする訳ですから、利用率は高くなりますね。
ーたしかに、いろいろな点が繋がりました。データ、利用率、スピードが揃うことで実現しているのですね。ありがとうございます。
審査に通らなかったときにできること
ーまた審査の話に戻るのですが、もし審査に通らなかった場合に理由は分かるのでしょうか?
残念ながら、審査結果は弊社の総合的な判断になりますので理由はお答えできないことになっています。
ーでは、通らなかった場合にはどうすることもできないのでしょうか?
正直なところ、審査に通らなかったカードに関して、できることはありません。先に申しました通り、審査の理由をお伝えできないため対処法というものは無いと思います。
ただし、信用情報機関のデータを自分で確認することはできます。
ー信用情報機関のデータは個人でも調べられるのですか?
はい。意外と知られていないのですが、ご本人でも確認は可能です。カードをお申込みいただく際に同意いただく約款に、信用情報機関が記載されていますので、各機関のホームページなどを確認されとよいと思います。
ただし、信用情報機関のデータを把握しても、審査に通らなかったカードが審査に通るようになるわけではありませんのであくまでも参考程度とお考えください。
ーありがとうございます。知らなかった情報が盛りだくさんでした!
後半では、そんなライフカードのfreeeカード開発秘話をお伝えします。freeeカードは今まで事業用カードではない機能をたくさん備えています。それを短時間で開発するには、様々なエピソードがあったそうです。