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2015年08月11日(火)

配偶者控除廃止 知っておくべきメリット、デメリットまとめ

経営ハッカー編集部
配偶者控除廃止 知っておくべきメリット、デメリットまとめ

husbandandwife最近「配偶者控除がなくなる」という記事が新聞紙上をにぎわしているのを見たことがあるかもしれません。特に共働きのご夫婦にとっては大きな影響があるかもしれない税制改正です。しかし、配偶者控除がなくなることは決定事項ではありません。政府税制調査会が2014年11月に論点整理の中で大きく取り上げて話題になりましたが、2015年6月に閣議決定した「骨太の方針」の中では明記されませんでした。早ければ2017年度から導入という話もありますが、いまだ不透明な状況が続いています。ただ、大きな方向性としては制度改正に向かうと思われます。事前に学んでおけば「備えあれば憂いなし」でしょう。

今回は、配偶者控除が廃止された場合のメリットとデメリットについて川井 隆史税理士に解説していただきました。

 

1)配偶者控除制度と見直しの背景

そもそも配偶者控除制度とはどのような制度なのか、そしてどうして見直しが叫ばれているのか、その背景を見ていきましょう。

1. 配偶者控除制度とは

配偶者控除制度とは、配偶者の所得が38万円以下の場合、38万円(住民税は33万円)の所得控除を受けることができる制度です。配偶者がパートであれば、給与所得控除65万円が給与から差し引けるので「合計所得が38万円以下」とは配偶者の給与収入が103万以下であることを指します。これがいわゆる「103万円の壁」です。ちなみに、納税者には基礎控除が38万円あるので、課税される所得金額はゼロとなります。

また、配偶者の給与収入が103万円を超えると、いきなり配偶者控除が無くなってしまうのは問題であるため、「配偶者特別控除」というものがあります。これは配偶者の給与収入が141万円になるまで控除がされるものです。例えば給与収入が120万だと控除額は21万、140万だと3万となります。ただし本人と配偶者の合計所得が1000万を超えるとこの控除は受けられません。

<参考>配偶者控除|年末調整前に知れば得する控除の話

2. 配偶者控除制度見直しの背景

特に高度成長期の日本では、終身雇用の夫と専業主婦の妻から成る家族構成が典型的でした。しかし、終身雇用制度の形骸化や、徐々に世帯間での格差が生じてきたこと、女性のライフスタイルの多様化などにより共働きの世帯が増加したのです。

妻が専業主婦の世帯は夫の収入が多く、相対的に経済力のある世帯であり、配偶者控除で優遇する必要はないという意見が近年になり出てきました。

今の配偶者控除制度では、配偶者の給与収入が103万の場合、配偶者が38万の基礎控除を受けた上、本人も38万の配偶者控除を受け二重に控除をもらうことになります。 double-deduction また、女性のライフスタイルが多様化する中で、前述の「103万円の壁」が女性の労働意欲を阻害しているのではないかという意見も出てきました。

2)配偶者控除廃止で何がどう変わるの?

1. 配偶者控除の廃止

もし、配偶者控除が廃止された場合、現在控除を受けている世帯が受けるインパクトはどのようなものなのでしょうか?廃止された控除の金額に税率を乗じた負担が加算されると考えられます。現在、所得税は5%~45%で、住民税は10%ですので、単純計算で5.2万(38x5%+33x10%)から20.4万(38x45%+33x10%)も現状より負担が増えることになります。

ただし、配偶者控除の廃止は単なる増税となるので、子育て支援などに補助金制度を設けてその部分を補完しようという議論があります。

2. 移転的基礎控除

basic-deduction 加えて単なる配偶者控除の廃止だけでなく、移転的基礎控除やその他の控除を導入しようという検討案があります。 移転的基礎控除とは、配偶者控除の代わりに配偶者の所得のうち控除しきれなかった基礎控除を本人に移転するものです。現行の控除から緑色で囲った部分がこの新しい制度ではなくなるので、2重の控除が無くなります。

3. 新たな控除

また、配偶者控除が廃止される代わりに新たな控除が追加されるという動きもあります。具体的には配偶者控除を廃止した後、夫婦世帯を対象にした新たな控除制度を設けるものです。具体的な中身についてはまだ議論が進んでないようですが、子育て支援の拡充がセットになっている控除となるようです。

3)配偶者控除廃止のメリット・デメリットと対策

1. メリット

配偶者控除が廃止されても低所得者層の増税額は5万円程度に留まるので、子育て支援の拡充の方向性によっては低所得世帯にはメリットが出る可能性があります。しかし、それ以外の層については金銭的なメリットがもたらされる可能性は非常に低いと思われます。

2. デメリット

デメリットですが、高所得者については、新たな控除の対象になる可能性が低いため確実に増税になることが挙げられるでしょう。2016年10月からはパートタイムの労働者に対する社会保険加入もされ、大きなインパクトを与えるかもしれません。従業員500人超の企業に勤める年収106万円以上、週20時間以上の1年以上勤務のパート従業員は社会保険加入が義務化されるため、要は「106万円の壁」が新たに生じることになるでしょう。

3. 廃止への対策

配偶者控除の廃止は、働く女性にとっての施策だという見方が強いですが、それよりも専業主婦のいる世帯やパートで給与をもらう妻がいる世帯に有利な税制を廃止する側面が強いです。 控除や税金の支払いを気にして、働く時間を調整している世帯であれば、あまり税金のことは気にせずに、配偶者の人生観やキャリアプランにしたがって働いてみてはいかがでしょうか?「社会保険料の壁」を考慮すると、給与収入が160万を超えたあたりから確実に手取りが増えます。もし控除や手取りを気にするのであれば、160万を超えるように働きかたを調整すればよいのではないでしょうか。

まとめ

様々な議論がなされている配偶者控除の廃止ですが、どのような方向性であっても共働きでお子様がいる低所得の世帯以外は増税になる可能性が高いです。配偶者控除があるから、とパートで収入をあえて抑えていた世帯の有利性はなくなるでしょう。

したがって、純粋に夫婦の収入増を目指し、配偶者の方もキャリアアップや自己投資をしたり、より良い職場を探したりして収入を増やしていくことが必要になるのではないでしょうか。  

ベンチャー企業や多国籍外資系企業のCFO(最高財務責任者)を歴任後独立しました。非常に洗練された経営管理から泥臭い資金調達の奔走まで幅広く体験しています。企業の経営陣にいた期間が長いので、社長と苦楽を共にしてきたと自負しています。FREEのお客様ではお客様の作業をできるだけ簡便化して、実務にどんどん注力していただければと思います。一方、どんどん未来志向の事業計画やKPI(重要経営指標)管理、資金調達を含めた様々な経営相談などのお役にたてればと思われます。 監査法人にもいたので、ほぼどのような業界も経験していますが、どちらかというとサービス業系のお客様が多いです。

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