政府のマイナンバー活用ロードマップに見る近未来の電子政府の姿
10月中旬以降、マイナンバーの通知カードが国民に送付されることから、各種安全管理措置の実施や規程の整備など、その体制整備を進めている企業担当者も多いのではないでしょうか?正直なところ、マイナンバーが導入されても手間が増えるだけで、そんなに便利になる感じがしないという印象を持たれている方もいらっしゃるのではないかと思います。
確かに当面3年間、マイナンバーは社会保障・税・災害対策の3分野でしか使われないことから、我々国民の生活が大きく変わるということはあまりないかもしれません。しかし、その後のマイナンバーの利用によっては、劇的な変化が出てくる可能性もあるのです。
マイナンバーは税金徴収の効率化だとか、消えた年金問題の対策が目的だといわれることがありますが、その本質はそのような規模の小さな話ではなく、電子政府の構築という観点で完全に他の先進国に出遅れてしまった日本が、一気に世界最先端になるためのインフラ整備がマイナンバー制度の本当の狙いなのです。
1)マイナンバーは将来どのようなことに使われる?
それでは実際に政府がどのようなことを検討しているかを政府の実際の資料を引用しながら見ていくことにしましょう。内閣官房の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)では、2014年3月よりマイナンバー等分科会を開催しています。 2015年5月に行われた会議では、福田峰之内閣府大臣補佐官より「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)」という資料が提出されました。ここに書かれている将来の姿はかなり衝撃的な内容となっています。いくつかピックアップしてみましょう。
1.ICチップの民間開放が行われ、今後、民間企業の社員証やポイントカードとして利用される。
2.2018年4月を目処に、個人番号カードを健康保険証として利用する。
3.個人番号カードをデビッドカード、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、診察券などとして利用する。
※ワンカード化を促進し、スマホ等のデバイスにダウンロードして代用できるよう研究・関係者との協議のうえ実現する。
4. 2018年を目処に、個人番号カードと運転免許証との一体化が行われる。
5.確定申告に必要な書類の電子交付が行われ、マイナポータルでその申告ができるようになり、税金もクレジットカードで納付できるようになる。
6.2019年を目処に、医療機関、介護施設等の間での医療・介護・健康情報の管理・連携が行われる。また死亡ワンストップサービス(予め本人が登録した事業者等と死亡情報を共有し、相続手続等を円滑化)も実現する。
7.2020年を目処に、個人番号カードもスマホも持たずに、あらかじめ本人確認の上、登録した生体情報で代用を可能とする。
これらはあくまで今後の方向性を示したものに過ぎませんが、「世界最高の電子政府を構築する」という政府の強い意思が伝わってくる内容です。
まとめ
今回は、マイナンバー制度が今後どのような発展をしていくのか、政府の指針を参考に紹介しました。ビジネスパーソンとしては、いかにマイナンバー対策を行うのかというレベルではなく、今後急拡大するマイナンバーの民間利用を自らのビジネスに取り入れることはできないだろうかという視点でいろいろ検討してみることが面白いかも知れません。 ■マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)はこちら
マイナンバー制度への具体的な対応については「マイナンバー制度の実務と業務フローがわかる本」(日本実業出版社)も是非ご覧ください。