地主さん注目! 高すぎる所得税、住民税を減らすためのコツ
税理士という職業柄、不動産所得を有する個人事業主、いわゆる資産家さんの悩みで一番多く相談を受けるのが「税金が高すぎる」というお悩みです。一口に税金と言っても不動産所得を有する方にはいろいろな税金がかかります。そこでまずは資産家さんにかかってくる税金についてご説明します。
不動産所得を有する個人事業主にかかる税金
・所得税
国に対して支払う税金で不動産やその他の所得の合計から所得控除を差し引いて算出された課税所得に対してかかる税金になります。税率は所得に応じ5%から最大45%かかります。
・住民税
住んでいる市町村に対して支払う税金で不動産やその他の所得から所得控除(所得税の所得控除とは一部異なる点があります)を差し引いて計算された課税所得に対してかかる税金になります。税率は所得に関わらず一律10%となります。
・事業税
住んでいる都道府県に対して支払う税金です。不動産所得(青色申告控除前)から事業主控除(290万円)を差し引いた金額に5%を乗じて計算します。
・固定資産税
固定資産税は、市町村などの地方自治体が賦課する税金で、土地や家屋を所有している人に納税の義務があります。基本的に固定資産税の計算方法は、固定資産税の評価額に標準税率の1.4%をかけた金額になります。
節税をできる税金は?
資産家さんにかかる税金は上記で説明した通りですが、すべての税金が簡単に節税できるわけではありません。特に固定資産税のように課税標準が固定資産税評価額である税金については、各自治体で評価額を決定するのでこちらの意思で変更することが難しくなります。
それに対して課税標準が課税所得である所得税、住民税や不動産所得である事業税については所得を下げれば税金も下がるのでどのように資産形成をするかの工夫により節税をすることが可能になります。
特に所得税については累進税率であるため、個人に所得が集中すればその分だけ高い税率がかかることになります。これを給与や管理料などの形で外部へ払い出すことで資産家さんへ所得が集中することを防ぎ節税することが可能になります。
以下に具体的な方法を紹介します。
実際の節税スキーム
①専従者給与方式
個人事業主が家族へ給与を支払って所得分散する方法です。なお、青色専従者給与を出すにはいくつか要件があります。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- 年齢が15歳以上であること(その年の12月31日現在)
- 原則、年間6ヵ月を超えて、青色申告者の事業に専念していること
- 専従者給与を出そうとする年の3月15日までに「青色専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
なお、給与として支払う金額については同業他社の水準に合わせる必要があるので業務内容やその拘束時間などに見合う設定にする必要があります。なお、私見ではありますが不動産賃貸業の専従者給与としては月5万円から20万円程度の幅で出されているものを見受けることが多いです。
(もちろんそれより低い場合や高い場合もあります。一番大切なのは業務内容や拘束時間にあった設定を行うということになります)
業務内容から考えてあまり高い給与を払い出すことは難しい面がありますが、法人を設立する等の手間はないので比較的容易に所得分散を可能にする方法です。
②管理会社方式
オーナーの賃貸物件を管理する目的で同族会社を設立する方法です。この方法では個人事業主が不動産を所有し、その物件を同族管理会社で一括管理(集金業務や清掃業務等)することになります。
既に外部の管理会社へ管理等を依頼している場合には、個人事業主と外部管理会社で直接管理契約をするのではなく、個人事業主と同族管理会社で管理契約を行い、その上でその業務を外部管理会社へ再委託するという方法をとることが一般的です。(同族管理会社と外部管理会社で管理内容の重複してしまうことを防ぐため)
この方法では家賃収入の5~10%ほどの管理料を支払うことが一般的です。なお、外部管理会社との既存の契約がある場合にはそちらとの契約変更なども必要になるため専従者給与と比較すると手間は増えることになりますが、家賃収入が大きい場合には所得の分散効果は高くなります。
③サブリース方式
オーナーの賃貸物件を一括借上げする目的で同族会社を設立する方法です。この方法では個人事業主が不動産を所有し、それを同族会社が一括借上げする契約になります。同族会社は一定額の保証家賃を個人事業主に支払う一方、入居者へ転貸する際には空室リスクを同族会社が負うことになるため、②の管理会社方式と比べると高い水準で同族会社が管理料を取ることができます。
一般的に同族会社は家賃収入から10~15%程度の管理料を差し引いた金額(85~90%程度)を保証家賃として個人事業主に支払うことになります。この方法は所得の分散効果は高い一方で、保証家賃を何年継続するかなどが問題になりがちな方法です。
④建物移転方式
不動産収入は原則として建物所有者の収入となるため、上記の①~③の方法ではいずれも収入は個人事業主のものとなり、それを家族や同族会社へ分散する方法をとっています。それに対して建物移転方式とは個人で所有している建物を同族法人へ売却することで家賃収入のすべてを法人の収入とする方法です。
この方法は最も効果的に所得分散を図ることが可能ですが、個人事業主から同族法人へ売却する際には不動産取得税、登録免許税などの諸費用が発生するので、節税効果とかかってくる諸費用などを比較して有利な方法を選択する必要があります。この方法は建物などを複数所有する個人事業主で所得が高い方の場合に効果が特に大きくなります。
まとめ
所得税や住民税が高いという悩みを抱えている資産家は大勢います。そのような方へ節税を考えるきっかけにしていただけば幸いです。ただし一口に節税と言ってもそれぞれのスキームでメリットやデメリットがありますので一概にどのスキームが一番良いとは言えません。個々のケースにあわせて判断することが必要になってきます。
また、同族会社に対する管理料の支払いや建物売却をするというのは金額が適正でない場合には税務署から指摘されるリスクもありますので、実際に節税スキームを実行する場合には税理士などの専門家にアドバイスを受けながら計画を進めることをお勧めします。