「マイナポータル」の本格運用開始予定が、2017年1月から7月に半年延期に
マイナンバーの良さがもっと実感できるはずの大計画、「マイナポータル」の本格運用開始が、当初予定の2017年1月から7月に延期されました。年金データの安全性確保に不安が残る、というのが最大の理由のようですが、さほど大きなニュースにもならなかったのは、なぜでしょうか? 基本の基本からもう一度「マイポータル」についてお伝えします。
<参考ニュース> マイナンバー、個人向けサイト「マイナポータル」の本格運用を半年延期
マイナポータルとは「情報提供等記録開示システム」のこと
「マイナポータル」は、マイナンバーとマイナンバーカードを使えば、あれもこれも日常の諸々がすごく便利になる、という壮大なプランです。「情報提供等記録開示システム」ともいいます。
自宅のパソコンなどから操作して、自分のマイナンバーに関する情報、マイナンバーカードに付与した様々な機能・サービスについて確認・手続き・情報収集などができます。税金の支払いや行政の手続きも簡単にでき、マイナンバーカードを活用したさまざまな民間サービスも併用すれば、より便利さが増すでしょう。
未来のマイナンバーカードは「全部のカードが一緒になった」イメージ?
2016年1月から交付が始まり、失業給付申請や所得申告、法定調書、災害被災者台帳等への使用が開始されたマイナンバーは、今後活用分野が広がる予定です。ざっくり言えば、公共サービスが簡単に利用でき、その上に、今現在カードになっている多くのサービスをこの一枚に加える、というのが目標のようです。
交通系カードや、キャッシュカード、クレジットカード、スーパーなどのプリペイドカード、社員証、健康保険証、そしてあらゆる飲食店やショップの会員証・ポイントカード、などなど候補は切りがありません。ただし、企業がどのくらい加わっていくのかもこれからのことですし、利用者の需要がどの程度あるかなども不明です。
総務省が公開しているロードマップによれば、
- 2017年以降 マイナンバーカードにキャッシュカード・クレジットカード機能付与
- 2017年5月以降? 日本年金機構での活用
- 2017年7月~ マイナポータル本格運用
- 2018年~ 預貯金口座にマイナンバー
- 2018年度~ 段階的にマイナンバーカードを健康保険証に
- 2019年の通常国会で、戸籍・旅券・在外邦人・証券を含むマイナンバー関連法の措置
などが進められていく予定です。また、国家公務員などの身分証機能はすでに始まり、民間の社員証活用を「促す」こともロードマップに記されています。さらには各種免許など公的資格の確認機能、旧姓と現姓の併記記載なども考えられています。
ただ、カード交付の大きなメリットとされたコンビニでの住民票交付サービスは、まだ、一部市町村に留まり、システム自体のトラブルも発生するなど、思惑通りには進んでいない面があります。
2017年7月からのマイナポータルの本格運用開始でこうなる
一斉にいろいろ始まるわけではなく「順次」サービスが広がっていく予定で、総務省が示している具体的内容は次のようなものです。
- 自分のマイナンバーについての情報確認
- 国民年金の免除申請
- 医療費通知と連携させた医療費控除手続き
- 税金や社会保険料をクレジットカードで納付
- 誰でもどこでもマイナポータルが使用可能な、テレビやスマホでのサービス提供
そして、実現すると便利で注目度も高いのが、マイナポータルのワンストップサービスです。
ワンストップサービス~引越・子育てなど
従来はあちこちに出向いて手続きする必要があったものを、マイナポータルの活用で一気に済ます、ワンストップサービス構想が実現に向けて動いています。ここでは引っ越しと子育てを取り上げます。
引っ越しワンストップサービス
引っ越しに必要なさまざまな手続きを、マイナポータル上で一気に簡単に済ませることができます。住民票の移動、公共料金の精算、固定電話の手続き、固定電話・インターネット・金融機関まで、すべてを一気に済ませるものです。
子育てワンストップサービス
子育てに関するあらゆる手続きや情報収集などをマイナポータルで行えるサービスです。具体的には、児童手当などの経済的支援、妊婦健診や予防接種などの医療‣健康サービス、保育園や幼稚園・一時保育・放課後児童クラブなどの申し込みや利用、出生届などの届け出などです。
マイナポータルの利用手順
実際に使えるようになるのは少し先ですが、マイナポータルの利用手順についてざっとご紹介します。
1. マイナンバーカードの交付を受ける
マイナンバーカードが無いとマイナポータルは利用できません。
2. ICカードリーダーでカードのデータを読み込む
ICカードリーダーは個人で購入する必要があるようです。
3. ログインして必要な操作をし、手続きや情報収集を行う
ログインには重要な個人情報が漏れないよういろいろな工夫がされます。
基本的には自宅のパソコンからマイナポータルに入って…、ということを想定しているようです。これ以外にも、市町村役場など公共施設に、誰でも使えるマイナポータルサービス端末を設置する、書面でのマイナンバー情報開示請求を可能にする、などが計画されています。
マイナポータルで繋ぐ明るい未来図、「ワンストップサービス」
「あれほど大騒ぎだったのに、結局は廃止?」の住基ネットと同じようなことにならないか、大変心配なマイナンバーカード・マイナポータルです。ただ、パソコンやスマホの普及が桁違いに進んでいますし、高齢化も進んで、さまざまな手続きのために役所などに出向くことの困難さも増している、という環境変化もあります。
また、ネットバンキングや税の電子申告なども、少なくも言葉としては一般化したように思います。家族や友人を介しての利用まで考えれば、情報収集や通販などネットの便利さも危険性も、程度の差はあるでしょうが、浸透しているでしょう。そこで登場した新しい制度の未来は果たしてどのようなものになるのでしょうか。
マイナポータルについては、「それは便利そう」と思えるのが、前述した「ワンストップサービス」です。引っ越しの手続きが一回で済めば確かに便利ですし、子育て支援に関する情報は多く、市町村独自の制度も含めてうまく活用するには、ワンストップは魅力的です。 そして将来、「介護」や「就業」、「コミュニティ活動」など、まとめて便利なことはまだまだありそうです。
安全性への不安は消えない?
繰り返しになりますが、どのくらいマイナンバーカードとマイナポータルが使われるようになるのかは、提供されるサービスの全体像がまだ見えないので、誰にもわかりません。すでにシステムのトラブルは複数回起こっていますので、安全性への不安をどう解決していくのかも課題だと思われます。
マイナポータルのログインにはマイナンバーそのものは使わないのも安全対策です。ちなみに、個人データは今まで通り、役所ごとに分散管理し、共通データベースを使った一元管理に移行するわけではないので、この点でも安心です。 それでもやはり、コンビニのポイントが国の発行したカードに溜まっていくイメージは、どうしても湧いてきません。まだまだ本格的には始まらないマイナポータルですから、自分はどう利用するのか、ゆっくり考えて決めるのが良いようです。