マイナンバーカードのビジネスチャンスの現状と将来の可能性
大きな注目を浴びて始まったマイナンバー制度は、今後、年金との本格的な連動、マイナポータルの普及などが進み、民間利用を含めたビジネスチャンスに繋がるといわれています。
では、具体的にはどのような業態で経済効果が見込まれ、どういう形でマイナンバーとマイナンバーカードが活用されていくのでしょうか。現状も踏まえて考えてみましょう。
マイナンバービジネスは拡大していく?!
現状では、マイナンバービジネスは大きく三つにまとめられます。
- システムやソフト、機器、消耗品などの製造販売・メンテナンス
- 法律事務所や税理士など、法的な助言を含めたコンサルティング業務
- マイナンバーカード活用型ビジネス~個人認証サービスの利用
それぞれに現状と将来の見込みについて考えてみます。
システム・ソフト・機器関連事業には明るい未来?
マイナンバーという新しい制度ができたので、付随する新しい物品・サービスへの需要が生まれ、そこに商品を提供して利益を得るというモデルが考えられます。すでに各企業が事業化しているものも多いですが、今後新規プランが具体化していく過程で、新たなビジネスも誕生するかもしれません。
例えば、自分の社会保険や税金の履歴閲覧などができるマイナポータルは、当初はパソコンのみでの対応を想定していますが、将来的にはスマホでのアクセスも目指します。この時、パソコンで必須のカードリーダー以外の認証方法が採用され、新たなソフトや機器の需要が生まれる、というようなこともありうるでしょう。
<参考リンク> マイナポータルに関するよくある質問(内閣官房)
また、国からの法的規制を受ける企業では、例えば、社員の給料とマイナンバーと振込先口座を結びつけ管理するなど、新しいソフトの導入や一部修正などが必要です。そこで、大小さまざまな需要がIT関連業界に影響していくことが見込まれます。
コンサル業務の専門化・高度化が進む?
さらに、マイナンバー制度が国のプラン通りの広がりを見せれば、コンサルティング業務もビジネスとして拡大することになります。個人データに直結する公的なシステムですから、関連する法律も増えていくでしょうし、さまざまな義務・規制も予想されます。そうなれば、高い専門知識を持ち、法的対応も可能な専門家の出番は増えるかも知れません。
そして、期待は大きいものの、未だにはっきりしないことも多いのが、次に述べるマイナンバーカードの個人認証サービスの民間開放を利用したビジネスです。
マイナンバーカードを使った公的個人認証サービスとは
公的個人認証サービスは、マイナンバーカードを利用しオンラインで本人確認を行う仕組みで、データ改ざん防止などセキュリティの高さが特徴とされます。二つの証明書機能があり、ひとつは、ネットでの税金申告に使う「署名用電子証明書」、もうひとつは、特定のサイトにログインする時に必要な「利用者証明用電子証明書」です。
従来は公的なもののみに使用されていましたが、法改正により2016年1月から、民間企業も顧客の本人確認などのために、この公的個人認証サービスを使えるようになりました。では、企業が確実安全に顧客の本人確認ができると、どんなビジネスチャンスが生まれるのでしょうか。
個人認証サービスをビジネスに繋げる具体例と企業側のメリット
まず、ざっくり言えば、個人認証サービスを利用すると、各種サービス申込書や本人証明書類の確認などの事務手続きが削減でき、その分が利益拡大につながるとされます。具体例として参考になるのが、総務省が2015年9月の「公的個人認証サービスの民間開放について」の中で示した、マイナンバーカードの個人認証サービスを活用したビジネスモデルです。
銀行の口座開設をオンライン化する例では、口座開設申込書(紙)の作成と提出・個人証明書類の確認・キャッシュカードの発送が不要になります。代わりに、申し込みはパソコン上で行い、個人認証サービスで本人確認を済ませ、キャッシュカードの役目はマイナンバーカードが担います。
口座開設は金融機関の利益増加に直截繋がるわけではありませんが、事務量や紙資料の削減、郵送料不要化などで、経費が減れば相対的に収益は増えます。また、公的な個人認証によって、例えば特殊詐欺に悪用される口座開設の抑止なども期待できます。
他の業種でも、経費の削減と安全性の高い顧客管理が期待できるのが、個人認証サービスの利用です。また、新しく顧客ポイントサービスを始める場合などは、自社で新たにシステムを組んで会員情報を管理する経費、ポイントカードの作成・発行・管理の費用なども少なく済むことに成ります。
すでに大臣認定を受けて動き出している公的個人認証サービス導入事業とは?
2016年5月25日現在、実証実験を含め5つの事業が開始しています。
ある1社が進めるのは、ケーブルテレビ画面とマイナンバーカードを使い、生命保険会社からの通知や現況届を呈示などの事業です。また別の1社は、パソコンを使って医療機関の情報を閲覧する事業を行っています。
さらに、プラットフォーム事業を開始した企業が複数あります。これは、公的個人認証サービスを利用したい比較的小規模な事業者や業種組合などの、いわば束ね役となるビジネスモデルです。
これで、自らが大臣認定を受けなくても、プラットフォーム事業者と契約を結ぶことで、公的個人認証サービスが利用できます。プラットフォーム事業者が増えて、マイナンバーカードの利便性や機能への理解が広がり、利用者も増えることが期待されています。
大臣認定の基準と申請方法
公的個人認証サービスを民間事業者として利用するには、一定の基準をクリアして大臣認定を受けなければなりません。業務手続や管理体制の規定、セキュリティ対策、動作記録の管理などの基準があります。
まず、国のシステムの技術仕様書に基づいて、自らのシステムを設計し申請します。基準に照らし合わせて調査され、問題なければ総務大臣の認定が受けられます。そしてシステムを完成させ、業務を開始します。
マイナンバーカードの普及率に注目を
マイナンバーカードの普及率は交付開始半年後で5~10%程度のようです。今後どうなるかはわかりませんが、もし、普及率が上がらなければ、公的個人認証サービスを利用したビジネスは難しくなるかもしれません。
マイナンバーカードを、会員証として・キャッシュカードとして・プリペイドカードとして使うためには、ある程度多くの人がカードを保有している必要があります。少なければ、効率的な顧客管理には繋がらないからです。
ただし今後、健康保険証としてマイナンバーカードを利用していく計画などもあり、普及率が一気に上がることも考えられます。民間ビジネスでの公的個人認証サービス利用方法も新しい展開を見せるかもしれません。